甘やかされて育った魔法使い
本日投稿二回目!
「このことを魔法協会本部が知ればお前らは終わりだっ!」
デコルは高笑いしながら言い放った。
「え、それだけですか?」
「はははっ……は?」
「実は教会と手を組んで宗教で農民に一斉蜂起させたりとか、王派だったけど時が来るまで雌伏している貴族に魔法使いを融通して混乱に陥れるとかではないんですね」
「何を言っている」
「セルフィル様、そんなのは物語の中の話だぜ」
実はこんなこともあろうかとっ! というシチュエーションに期待していた俺が馬鹿でした。わかっているさロンブル翁、だから追撃しないで。
「あーではデコル会長の切り札は魔法協会本部に泣きつくというので間違いありませんね」
「なんだそのやる気がない言い方は。各国にある協会を纏める本部を敵に回すのだぞっ!」
「んーだってですね」
デコルが叫んでいる本部とは魔法協会の総元締めだ。貴重な魔法使いの保護をし、協会を維持するために各国に支部を置いて派遣している。
つまりデコルの正しい役職はエルセレウム王国支部魔法協会会長なのだ。
「比較的平和な国家から犯罪者と決められた支部の会長如きに動くほど、本部は安くはないと思いますよ」
「如きだとっ! 私は最高の魔法使いだったから会長になったのだぞ。そんな私の為に動かないはずはないではないかっ!」
ヤバい。前世のネットの動画で見た、不倫したのに自分は悪くない自分以外が悪いんだと言っている加害者と同じ思考だ。
ダッシュ君たちを見るとドン引きしている。でも、最近までエルセレウム王国はそんな連中がトップにいたのですよ。
「では最高の魔法使いのデコル会長にお聞きします。貴方は呪文の詠唱無しで出来るのですか?」
「……そんなものは必要ない」
「僕に要求したのに?」
「才能の無い連中に使わせればそれなりに使えるようになる思ったからだ」
あ~言えばこう言う、デコルは自分を守る為なら矛盾してても平気なようだ。でもさ、手も足も出なくて逃げられない状況でその図太さは何時まで持ってくれるかな。
「さすがは最高の魔法使い様はお優しい。でも魔法の威力を増大させるチェルシーさんを欲して、先ほど試そうとしてましたよね」
「奴隷は道具だ使って何が悪い」
「いえいえ悪くないですよ。でもあれ? おかしいですね」
俺はわざとらしく顎に指を付け首を傾げた。
「貴方の言う最高の魔法使いは、わざわざ呪文を唱えないと魔法を使えず。人に手伝ってもらわないと強くならない魔法しか使えないのが最高の魔法使いなのですか」
「っ!」
デコルの言うことは認めた。でもそれは弱い魔法使いだというのを本人が認めたということだ。
「呪文の詠唱は魔法協会の創始者様が作られた至高のものだ。それ以外はゴミだっ!」
あ、それを言ったか。
情けで言わないでおこうと思っていたのに、デコルはその無知な傲慢な鼻を根元からへし折られたいようだ。
「僕も知ってますよ魔法協会の創始者のことは。虐げられていた不思議な力を持つ者たちを集め率いて各国と戦い。魔法使いという存在を認めさせて、仲間を守るために協会を創られた凄い人ですよね」
「そうだ。その創始者が作られた呪文を使いこなすことが最高の魔法使いなのだ!」
「でも創始者が呪文を作る前はどうやって魔法を使っていたのでしょうか」
元気を取り戻し始めたデコルに冷や水をかけてやる。
デコルは答えられない。おそらく考えたりもしなかったのだろう。
「答えは詠唱無しで魔法を使っていたのですよ。幾つもの滅ぼしに来た軍を一瞬で魔法を発動し倒していったのです」
「嘘だっ!」
「相手に呪文なんて唱えてたら、矢で射られ、騎兵に突入され槍で刺殺されますよ。貴方たちが、こちらの二人に蹂躙されたみたいに」
否定はさせない。なにせ先ほど身をもって体験してもらったからな。
「呪文は魔法を発動させるのが苦手な仲間の為に作られたそうです。威力はかなり抑えられるけど魔法を使えるだけの者にも使えるようになったそうですよ」
これがデコルが縋ったものの真実だ。
これは三人メイドや、ハイブルク公爵領に派遣され実験に使われ最後には硝石生成に使われ失敗した彼らから聞き取りしたのだが、魔法を生まれて初めて使ったのは感情が高ぶった時だったらしいことから、魔法が使えるのは生まれ持った才能であり。
「ねえねえ、うまく扱えない人の為に作られたものを使って最高の魔法使いとか言って恥ずかしくないの」
嫌味たっぷりでデコルに聞いてみた。
「……そだぅそだ嘘だ嘘だっ! 私も知らない創始者様のことをお前が知っているはずがないっ!」
呆然となったデコルはぼそぼそ言い始めると、次第に顔も頭頂部も真っ赤になっていくのと同時に声を張り上げた。
「魔法協会本部の上層部しか知らない機密事項ですから、ただの支部の会長が知るはずないでしょう」
「っ!? ならなぜお前が知っているっ!」
確かにデコルの言うことは正しい。
そして説明しようしたら、ある事実を思い出した。
「まず落ち着いて聞いてください。第二王子の反乱の際に土魔法使いモージソス様に頼んだのは嘘です」
「?」
何言ってんだという目で見られる。
「そしてウチのメイドが無詠唱で魔法を使っていたのは本当です。そして無詠唱を作ったのは僕です」
「!」
驚きの顔をされた。
うん、デコル無詠唱のこと知らなかったみたい。今回の中心にいたのに放置してたのごめんなさい。
「そして無詠唱と他にもいろんな論文を関係各所に送付したら、魔法協会本部の会長と文通仲間になってまして、機密情報を見て気づいたことがあったら是非とも教えて欲しいと送られてきました」
「……」
めっちゃ見られてる。
いやこれ本当なの。魔法技術を何段階も進めたと感謝状も貰いました。魔法の神と付けられ否定したら、魔法協会本部顧問に就任しないかと誘われ、多忙ゆえにお断りをした。
やらかしが多いから二つ名が多くてマジ悩みの種な心のオッサンだ。
「嘘だとお思いでしょうが、支部会長なら本部の上層部とあったことがありませんか。その中にここ何年間の間に強くなったという方を聞きませんでしたか。例えば無詠唱に成功したとか」
デコルの目が大きく開く。
うんうん、どうやら知っているようだ。
「それで、魔法協会本部に泣きつくんでしたっけ? いいですよいくらでもしてください。鼻で笑われると思いますけど」
魔法の神とまで呼ばれたショタに、支部の会長が勝てると思うなよ!
魔法協会という権力が剥がれ、頭頂部の髪も数本抜け落ちたデコル。
しかし、俺は追撃を止めない。
魔法協会の創始者は呪文を広めて、無詠唱を歴史から消した。
それは才能もあるけれど、魔法使いは少数で子供にその才能が遺伝することは殆ど無い。魔力で身体能力を上げる魔力使いはかなりの確率で受け継ぐのにだ。
だから創始者は魔法使い全体の力を弱めた。普通の人でも考えれば殺せるくらいまで弱れば、迫害されずに有能な兵器としての道で生き残れる道を創ったのである。
でもデコルのような驕り高ぶる馬鹿の行動が、魔法使いを人類の敵と認識させてしまえば泥沼の争いが世界中で起こるところだった。
「知ってます? 生まれ持った才能を磨きもしないで、たまたま運よく事が運んで良い地位まで上ったけど、驕り高ぶるだけで実はたいしたことがなかった人のこと」
これはデコルへの罰だ。
「無能って言うんですよ。今の貴方のことですね」
嫉妬ショタ「ええ、僕が魔法を使えなかったのに!と思ってざまあしたわけではありません。僕心は大人なので」
章の最初に
私は魔法の未来を消した。
私を家族を仲間を助けてくれた魔法のだ。
未来の子供たちのために大切な魔法を裏切ってしまった。
どうか、どうかいつかの未来に魔法の未来を……。
貶めてくれる者が現れてくれることを、切に願う。
と書きました。
これは魔法協会の創始者の言葉です。強すぎても少数では勝てず、子孫は普通の人。それでも血の繋がりが無い未来の魔法使いの為に弱体化の道を歩んだ人です。
強さは覇王様でも勝てません。マジの化け物で心優しかった人。たぶん転生者。
さあ次だ次っ!(´▽`)ノ









