小悪魔が来る意味
自分がどう間違えているのか、敵役ですぐ理解出来る頭があったら滅びる道を歩みませんよね(^^;)
セルフィルが到着する少し前。
チェルシーは手のひらを見る。
そこに何かあるわけではないが、増幅魔法を使わされた時はいつも発動した火の魔法に向けていたので、彼女には魔法の源があるように感じていた。
そしてその手首には懐かしさも感じる鉄枷が嵌められている。
その鉄枷には鎖が繋がれていた。
「わっはっはっはっ! これで私が最高の大魔法使いだっ!」
鎖の先を持つのは明かりを頭頂部で反射させ高笑いするデコルだ。
王城から連れ出されるとき、多少の揉め事が起きてチェルシーは犯罪者用の鉄枷を嵌められ、そのまま連行される。
そんな姿のチェルシーをデコルは気に入りそのままにしていた。
「うっ」
チェルシーはグイッと鎖を引っ張られてよろめきながら引き寄せられた。
「あの底辺は会長の私に使ってくださいとコレを献上すべきだったのだ。そうすれば協会でそれなりの地位に据えてやったものを」
デコルは己の欲に溺れた下卑な笑みを浮かべてチェルシーを見る。
チェルシーには物としてか見ていない見慣れた目だった。
「コレがあれば全てが手に入るっ! お前らも私についてきたのだからいい思いをさせてやるぞ」
デコルの言葉に周囲の魔法使いたちは色めき立ち彼を褒め称えた。
彼らはチェルシーがどんな存在なのかも知らない。ただ、以前からデコルにへつらって良い思いをしていた連中なので、とにかく媚びておけばいいと考えていた。
「それでは偉大な一歩の試みをお前たちに見せてやろう。おい」
デコルは手に入ったオモチャを早く見せびらかしたくてたまらない子供のように、鎖を揺らす。
それが合図だと感じたチェルシーはのろのろと腕を上げた。
「っ!」
そこでガツンっと彼女は頬に衝撃を受け倒れた。
デコルが裏拳で張り倒したのだ。
「何をしようとしたっ!」
「う、けほっ……。ま、魔法を使おうと……」
「私を害するつもりだったのだろうっ! このっ! このっ!」
「ぁっ!? ぁ、止め」
デコルは倒れたチェルシーを何度も蹴る。
彼女は丸まって耐えるしか出来なかった。
「ふぅふぅ、何故怪しい動きをした」
「……、私の魔法は誰かの魔法に手を向けて使っていましたから、発動の準備をしようと」
「ならばそれを伝えないかっ!」
チェルシーがか細い声で答えると、もう一度強く蹴りを入れられ立てと命令される。
「私が魔法を使ったら増幅させるのだ。いいな」
「はい……」
デコルが事前に用意していた的に向けて呪文を唱え始めた。
唱えているのは人を数人燃やす炎の壁を作り出す中級魔法ファイアウォールと呼ばれるものだ。会長まで上り詰めただけであって、その詠唱は淀みなく。
その呪文を聞いたチェルシーは俯きながらもファイアウォールの発現する的に手を向ける。
その表情は魔法に集中しているデコルも、デコルの魔法を見ようと的に視線がいっている取り巻きには見えなかった。
あと数節唱えれば発動するところまでくる。
そこで部屋のドアがバンッと開け広げられた。
「やあ! 何か面白いことをしているようですが、いったん中止にしましょうかっ!」
ロンブル翁とエイプ子爵にバーンッと勢いよくドアを開けてもらうように指示したセルフィルが満面の笑みで立っていた。
「んん~? 歓迎してくれないんですか」
セルフィルは上半身を前に倒し、小馬鹿にした笑みをデコルに向ける。
「は、ははっ、ここは魔法協会だぞ。たかだか貴族の末っ子如きが何の用だと?」
その笑みにカッとなったデコルは呆然した状態から回復した。
「そうですね。何の用だと思います?」
言いながらセルフィルはロンブル翁とエイプ子爵を両脇に、その背後にダッシュにスナオがついて室内に入っていく。
そして最後の一人が入室したときデコルだけでなく取り巻きたちも驚いた。
「マルティナ……」
「あら会長、私が戻るまで我慢できずに行おうとしたのですか」
前に立つ三人から困った顔で出て来たのは副会長のマルティナだ。
「なぜお前がそいつの傍にいる」
「お忘れになりました? 私は今回の件の締めくくりまで責任を持ちたいと言ったのを」
「それでお前はこの奴隷を迎えに行ったではないか」
「それはただのついでです」
デコルはマルティナがチェルシーを迎えに行ったと思った。しかし、マルティナが本当に迎えに行ったのは魔法の神と崇める小悪魔だった。
「まあいいじゃないですか。不審な目で見られてますが副会長は裏切っていませんよ。」
「? 何を言っている。お前を連れて来ておいて裏切ってはいないというのはおかしいだろうが」
セルフィルがマルティナを庇う発言をしたせいで、デコルの機嫌が悪くなっていく。
「いや本当に魔法協会を裏切ってはないですよ。裏切ったのは貴方ですデコル会長」
「……は?」
デコルにはセルフィルが何を言っているのかわからなかった。
「理由はいくつかありますけどわかりませんよね。だってわからなかったからここまでやり切ったのですから」
本当にわからない。
「それは後でじっくり教えてあげますから、その前にちょっとそこのチェルシーさんとお話がしたいので貸してもらえますか、返しませんけど」
「っ! やはりこの奴隷が目的なのかっ! やらんぞこれは私のものだっ! たかだか貴族の末っ子が魔法協会にたてつきよって、やれっ!」
わからないが、デコルはセルフィルがチェルシーの増幅魔法に気づいて取り返しにやって来たと判断して、取り巻きの魔法使いを動かす。
今までは、それだけで平民も商人も貴族も強大な力を持つ自分たちに平伏してきた。それが当然、癇癪を起こせば我が儘が通る赤ん坊と同じ、無知の傲慢を振りかざす。
「いいですね! 暴力で言うことを聞かせるのが一番ですよね!」
ただし、相手を間違えた。
セルフィルは迎え撃つ気満々で笑顔で応えたのだ。
ウッキウキショタ「さあ全力でや(殺)っちゃうぞ!」
ママの味「あの私は?」
女の子を助けに行くのが普通の物語ですが、どうでもいいのがこの物語です(´▽`)ノ
そして、ショタは話し合いより暴力で解決が好みです。相手が話の通じないと判断された時だけですが(^^;)
つまりショタと覇王様は似た者婚約者なのです(^_^;)









