暗躍出来ていると思っている人たち
一度書いて、結末の為に全部書き直して三倍に増えた!(>_<)一割ぐらいで気づけよっ!(;´Д`)
あとクッション性ゼロ高さ調整出来ない骨組みで背中痛いオフィスチェアから、ゲーミングチェアに交換して書きやすくなるぞ!と思ってたら快適過ぎて眠くなる(-_-)zzz
ある屋敷の一室に複数の人が集まっていた。
彼らは【統合中枢詰め込み部屋】でバルトに難癖をつけようとして、逆に叩きのめされた貴族たちだ。
彼らは下品に酒を煽り、つまみになる料理をこぼしながら食べている。常に飽食たれ、それが貴族なりと教えられてきたからいまさら変えられない。
「あの若造がっ! 建国から連綿と続く名家の我らを虚仮にしよってっ!」
彼らの中で一番爵位が高いリブー伯爵がワインをがぶ飲みしたあとに吠える。どれだけ飲んでいたのか赤ら顔で、服には赤い染みが幾つもあった。
近くに座っていた者が同調するように勢い良く立ち上がる。
「そうですっ! 国の為を思って厭わられることも恐れずに忠言をしたというに、あの仕打ちっ!」
「我らが中立を保っていたおかげで国の舵取りが出来ているというのをわかっておらんっ!」
そうだそうだ! と周りの者も同意して騒ぎだす。
自分たちに都合のいいこと言っているが、彼らは何もしてこなかっただけだ。
セイレム公爵や宰相のように派閥を作るでもなく、大した旨味もない弱小貴族なので派閥に誘われることもなく、あぶれた者同士で集まり悪態と愚痴を言い合うだけの薬にならない連中であった。
そして相手がミスをしてまともな人格者の時にだけ、正当性が自分にあると不遜になって賠償を請求してくる質の悪い貴族だった。
「しかし、本当にハイブルク公爵は私たちと対立するつもりなのか?」
「「「……」」」
一人が冷水をかけて酒精と悪態で温まっていた場を一瞬で冷ます。
「そんなことをすればハイブルクも損害を被るだろう。するわけがない」
「しかし、以前に公爵領に隣接する子爵家が揉めて、最後には言いなりになる後継者に家を継がせたと噂がありましたな」
「公爵の寄子の貴族が大量に養子縁組されたというのは……」
不安になる言葉が次々と彼らの中から出てきた。
それらはまた聞きのまた聞き、知り合いの知り合いなどの信憑性の無いものばかり。それでも多く集まれば真実と思い込んでしまう。
「どど、どうするのだっ!」
リブー伯爵が顔を青白くさせて叫ぶ。
だがすぐに答えられる者はおらず。伯爵と同じように蒼白な顔でお互いの顔を見合うだけだった。
ちなみに彼らの噂の大半は事実で、ハイブルク兄弟がやった事である。
「皆さん、一度グラスの中身を全て飲んで落ち着きましょうか」
ただ一人、落ち着き慌てふためく貴族たちを眺める者がいた。
「……ケクラン子爵、ハイブルクの若造に我らは窮地に立たせられたのですぞっ!」
「窮地? どこが窮地なのですか」
名を呼ばれたケクラン子爵は余裕の笑みを浮かべながらワインをクイッと煽る。
「わかっているのか道理をわきまえずに我らの権利を脅かす成り上がりの公爵に目をつけられたのだのだぞ」
リブー伯爵が不快感を顔にあらわにしてケクラン子爵に吐き捨てるように言った。
「それがどうしました?」
だがケクラン子爵は伯爵の怒りを受け流した。
その態度にカッとなったリブー伯爵はグラスを投げつけようと腕を振り上げようとする。
「我らには魔法協会が後ろに付いているのですよ。公爵ごときの脅しに怯えてどうするのですか」
伯爵のグラスを投げようとしていた手が止まり、ゆっくりと元の位置に戻っていく。
「子爵、貴公が魔法協会の話を持ってきたな」
「ええ、魔法使いの撤退について国に責任を取らせようと、喜んで皆さん実行しましたね」
リブー伯爵はケクラン子爵に起きた問題を押し付け、責められる生贄に仕立て上げようとしたが、子爵は全員で行ったことだろうと修正した。
「ハイブルク公爵が正面切って対抗してくるとは予想外でしたが、皆様はこのまま大人しくするのですか?」
「しかし、相手は王を幽閉して、その派閥を率いていた第二王子を壊滅させたのだぞ。沈黙するしかないだろう」
「そうして一強となった今の政権に少しずつ力を削り取られていくのですね」
中立を気取った果ての言い訳がましい言葉をケクラン子爵は鼻で笑った。
「いったい我らに何が出来るというのだ」
「先ほど言ったではないですか、魔法協会が後ろに付いていると。国もハイブルク公爵も配慮する力を持った協会がですっ!」
ケクラン子爵は立ち上がって勢いよく腕を振るう。
「今こそ我らが上に立つ時です」
「な、何を言っている!?」
「何を言っている、ですか? そうですね私が言うのは、これから皆様が歩む最善と最悪です」
蛇のようにニタリと笑みを顔に張り付けるケクラン子爵。
中立派を気取っていた彼らは臆病で、危険にいち早く気づいて最善の選択をしてここまで生き残ってきた。
ただしそれは安全圏を確保していた時の話である。
「私が提案するのは現在の政権と対等にやりあえる道です。相手が上にいるから立場が脅かされるのですから同じぐらいにまで上に上がればいいのですよ」
はぁ? とケクラン子爵以外の室内にいる全員がポカンとした顔になった。
「我らに第二王子と同じことをしろというのか」
「いえいえ、国家への反乱なんて大それたことではありません。それでは完全に敵対するではないですか」
いち早く正気に戻ったリブー伯爵の言葉を訂正する子爵。
「実は独自に調べたのですが、王妃が国の実権を握っている現状に不満を抱く貴族はかなり多いのです。今回王妃についた宰相の率いる貴族派にセイレム公爵派閥、その他の派閥の中にもです」
「……なるほど、そいつらを我らにまとめろというのだな。だが、数を揃えたところで圧倒的に戦力は相手が上だ」
長年中立をうたっていた纏め役のリブー伯爵は現実を見る。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。大きな成功には危険が必ず付いてくる。室内にいる者たちは上の地位を望まない代わりに、貴族という安定した地位で自由に楽しく暮らしていた。
「だからこその魔法協会なのです。国も譲歩させる強さを持つ彼らがいればどうとでもなるでしょう」
「無理だ。いくら魔法使いでも最後には国家の兵力の数の差で負けるぞ」
「ははは、そんな直接戦うなんてしませんよ。我らと王妃をよく思っていない者たちの背後には魔法協会がいると見せつけて譲歩させるのです。ね、今までと同じようなことをしていけばいいのですよ」
ゴクリと誰かの喉が鳴った。
ギラギラと目を光らせる者もいる。
彼らは足るを知る者ではない。ただ現状に不満を持ちながら分をわきまえざるをえなかっただけで、心の奥底にあった野心の熾火が薪をくべられて火を起こし始めた。
「無理だ。いくら後ろ盾があっても正当性が無い。それではすぐに劣勢に追いやられるだけだ」
「正当性、あるではないですか。羽をもがれてお飾りになってくれる王が」
「!?」
自分たちを優遇しなかった王に忠誠を誓っているわけではないが、ケクラン子爵の言葉に引いてしまう貴族たち。
それでもすぐに持ち直した。
「王を確保する算段はお任せください。しかし、王を相手にするので貴族である我々自身が動かなければなりませんが、城の中には王妃をよく思わない者は多くおります。使用人にも兵にもいるので安全に連れ出すことは可能です」
子爵の矢継ぎ早に話すことが酒精の入った菓子のように甘く、思考を麻痺させてくるのだ。
「あまりお勧め出来ませんが無論動かないという選択肢もあります。しかし楯突いた者を王妃はどうするのか……」
「わ、私はやるぞっ!」
「私もだっ!」
そしていつもの逃げ道を塞がれるともう止まることは出来ない。一人が声を上げれば、一人また一人と雪崩のように繋がっていく。
纏め役だったリブー伯爵も心中と上手くやってきた経験は危険信号を送っていても、群れの熱狂、そして本心では人の顔色を伺わずに、国を左右するような野望が判断を狂わせた。
私がっ! 私がっ! と率先している。
「皆様の英断にこのケクラン、誠に嬉しく思います。その御覚悟に私もこれを皆様に見せましょう」
全員がケクラン子爵に賛同したのを確認して、彼はあるものを取り出した。
「これはっ!?」
「皆様ならきっと賛同してくれると考え、先に交渉しておりました」
ケクラン子爵が取り出したものは一枚の文書であった。
彼らが集まる数時間前。
魔法協会会長室に二人の人物が話し合っていた。
「引き渡す気はないだと!?」
「はい」
顔と頭皮まで真っ赤にして怒る魔法協会会長デコル。
「まだ決定とはなっていませんが、ハイブルク公爵の主導で強引に進められているようです」
そのデコルに報告するのは小悪魔が思いつく限りの知識と最高峰の職人の縫製技術に、湯水のように金をかけた蜘蛛柄白タイツをスリットから見せつける副会長マルティナ。
「ならばまずハイブルク公爵にいる魔法使いを呼び戻せ! 二度と送り込むことは許さん!」
超常の現象を起こす魔法使いを雇うのは一種のステータスの証である。戦闘能力が高く高級取りの魔法使いを何人手元に置いておくかで畏敬の念を持たれるのである。逆に言えば魔法使いが少ない国家やいない貴族は、それだけで下に見られるのだ。
「まあお待ちください。今から手続きをとっても、ハイブルク公爵領にある支部に連絡が行くのはかなり時間がかかりますわ」
「構わん。あの小僧も私を虚仮にしていたのだぞ。魔法使いがいない恥を存分に味わわせてやる」
デコルは己の才能で会長まで上り詰めたと思っているので、生まれただけで権力者となった者に馬鹿にされると激怒する。
「そんな時間がかかるものより、こちらの方がデコル様のご期待に添えますわよ」
切れ長の目を細めて笑みを浮かべながらマルティナは紙を一枚デコルの前に差し出した。
その紙には上下に大きく余白を残して、書面に書かれた者を魔法協会が支持すると書かれていた。
「なんだこれは?」
「今の政権がデコル様のご意向に添えないのなら、その政権に反発する者に協会が寄り添えば面白いことになりませんか?」
「……ふん。面白いな」
デコルは少しだけ機嫌が良くなる。
「これに名を書く者たちはハイブルクの小僧を追い詰めることが出来るのだろうな」
「今回の中心にいる人物ですから、さぞかし責めるのではないでしょうか」
「ならば後ろ盾になってやるか」
デコルは機嫌良くサインをしようとして手を止めマルティナを見た。
「ただし条件を付ける。ハイブルクの小僧が反故にしようしているチェルシーを私の下に寄こす事だ」
「それはもちろんですわ」
デコルは一文を書き加えた。
「もちろんわかっているな?」
「ええ、これに書かれた者たちの旗色が悪くなれば無視するのですね」
「うむ」
二人揃って口元だけ歪めて笑った。
後ろ盾といってもどのくらいするのかは強者側が決めると言っている。
「我ら魔法使いは優れた存在なのだ。使われるだけでも名誉なことだと感謝してもらわねばな」
「せめてチェルシーを引き渡すぐらいの仕事はこなしてもらわないと、後ろ盾しがいがないですものね」
二人は声を上げて嗤った。
場面はケクラン子爵たちに戻る。
「これは……」
「魔法協会副会長である私の妹が直接デコル会長に書いてもらったものです」
誓約書を一同で凝視する。
書面に書かれた者を魔法協会が支持すると書かれ、デコルの署名がなされていた。
「一つ奴隷の娘を確保するのが条件に出されましたが、もちろん署名していただけますね」
現政権を魔法使いの価値で強請としていた彼らは、魔法使いとの契約で僅かな逃げ道も無くなった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「なあセルフィル様よ」
「なんですか国王の執務室で餅を七輪で焼いているロンブル翁」
「そろそろ冤罪を被せて魔法協会を潰しにいかねえの?」
「冤罪って……、そんなことしませんよ。え? しないの? みたいな驚いた顔をしないでくださいっ! エイプ子爵が引いているじゃないですか」
「え、いや少しだけです少し。若いうちはそういう強引なやり方もいいと思いますよ」
婚約者の臣下に生暖くて優しい目をしながらかばわれると悲しくなるものだとわかった。
「じゃあどんな罪を擦り付けて魔法協会を潰すんだ」
「どうやっても僕を元凶にしたいんですね」
「我が身を振り返ってみろよ」
昔は冤罪をかけないと悪い貴族や商人を素早く処分出来なかったから仕方が無かった。それに冤罪よりも悪い事をしている人物限定だったからノーカンノーカン。
「こちらからは本当に何もしませんよ。だってしてくるのは相手側からでしょうし無駄なことはしません」
賭けポーカーで得た権利で餅を食べながら答える。
「傲慢で人を踏みにじってきた人物が、拒否や引き延ばしされて我慢出来るはずがないんですよね」
「戦場にもいたなぁ。貴族だからと指揮系統全無視で突撃する奴」
「よくいますね。根拠の無い自信でさもあるように自慢する若者」
うむ。賭けポーカーで手に入れた食うだけ権利で食べる餅が上手い。
前世でよくいた一代で築き上げた会社の、苦労時代を知らずで周囲が逆らわない三代目辺りが自己肯定感が高すぎて、何でも自分の思い通りになると勘違いしていた馬鹿がいた。
「でもその力が見掛け倒しで相手に通じない時はどうなるかわかっていないですよね、そういう人物は」
「大半は深夜に毛布にくるまれて骨数本に罅をいれられましたな。改心しなければ改心するまで毎晩で、訓練中にも」
「大体は超高空から石が降ってきて謎に死んでたなぁ」
アレスト辺境伯領は古代ギリシアのスパルタなのかな? ロンブル翁、犯人はお前だろうっ!
「それに長兄に大義名分を作るから待てと言われまして」
「ほうハイブルク公爵が」
ウチの長兄、ハイブルク家の常識人であるけど純粋な貴族なのだ。
俺はからかい過ぎてはかりごとみたいになっているけれど、長兄は陰謀、謀略、権謀を正義の為というおままごとのような建前で使用せず。貴族という統率者として悪いとわかっていても、その優秀な頭で使う人である。
「悪辣の度合いではセルフィル様の方が上だけどな」
しーっ! 被害の差でそこは理解しているの!
「では奴隷の少女が攫われるまでは待機ということですね」
「長期戦にはならないと思いますよ。王都の兵力が戻る前には事を起こすでしょうから」
騎士団がある程度戻ってくれば王城から誘拐する難しさは格段に上がってしまうから期限はそのくらいだろう。
「待った。ハイブルクもアレストも兵が少ないんだよな。魔法協会に討ち入りする兵力はどうするんだ」
「何言っているんですか僕とロンブル翁とエイプ子爵の三人ですよ」
「……マジ?」
「本気です。あ、でもいい経験になりそうですから二人ぐらい連れて行くかもしれませんね」
「これは久しぶりに覚悟しないといけませんかね」
「ハハハ、一晩で魔力の使い方を覚えた人が緊張するほどの事ではないですよ」
未来知識式電気腹部運動法を教えたらあっさりと覚えたエイプ子爵。実戦を経験した人ほど覚えやすいのだろうか。それともジジイだからなのか俺にはわからない。
「それに対魔法使いのアレの使用許可を長兄に取りましたから、協会に向かう前に屋敷に寄らないといけません」
「ゲッ、アレを使うのかよ!」
「予定外の危険が起きた時用ですから、基本二人で対処はお願いしますね」
たかが権力にしがみつく魔法使い如きには、この二人でも過剰戦力だ。
しかし、誰も奴隷のチェルシーの心配をしないな。
その過去の惨状には同情はしても所詮他人であり、関係者でもない者の憂慮するほどこの世界は優しくはない。
同じようにチェルシーを助けてやろうと思うほどの正義感は俺にも無い。
「お二人は魔法協会は手を引くと思いますか?」
「「無理だろ(ですね)」」
だよねー。
触れるなショタ「暗躍はしたこと無いのです」
石爺「だいたいはちょっかいを出してきた奴が不幸になるんだよな」
エルフ爺「危険物ですか」
中立は平和な時にしか出来ません。勝者が決まった後に騒げば……(;´Д`)
ショタは主人公でありますがヒーローではないので、チェルシーを積極的に助けるなんてしません。だって責任を持てないから。力で助けられる覇王様も出張中です。
誰も助けてくれない彼女の運命は如何に?
……誰も?(´・ω・`)
ランクイン通知に一喜一憂している筆者です(*´∀`*)ノ
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またバッドエンドの物語を考えちゃった。覚えてたらそのうち書くか( ´艸`)









