戦闘民族は風土が作る(ハイブルク家は洗のゲホゲホッ!)
二千字ぐらいで投稿したいのに三倍ぐらいになるのはどうにかしたい(;´Д`)
自分はテオ=バーニンガー。
ハイブルク公爵家の騎士だ。
騎士になるには一定以上の身体強化が出来るか、卓越した技術を持った者がなれる。俺は身体強化に優れて騎士になった。
当時は己は選ばれた存在と調子にのっていたある日、あの悪……がやって来た。
『たかが身体強化が出来るくらいでのぼせ上がる性根をペキッとへし折ってあげましょう』
筋肉で体格が二回りほどデカくなった魔力が足りずに騎士になれなかった者たちを背後に控えさせた悪……ハイブルク公爵家三男セルフィル様。
身体強化如きに胡坐をかいて鍛錬を怠っていた俺を含めた騎士たちは蹂躙された。
マッチョが大楯を持ち、セルフィル様の指揮のもと一糸乱れぬ陣形に、個々で突撃してくる騎士は一人一人囲まれ圧殺されたのだ。
むさくるしい筋肉と嗅ぎたくない匂いトップ3の汗と、騎士を虐げて甚振る悪口雑言を今でも夢に見る。
そして一度騎士の位をはく奪された。
『努力しても実るかはわかりません。でも努力しなければ実る未来もなく腐るのです。なので僕と次兄で強制的に実らせてあげましょう』
『喧嘩か? 兄に喧嘩を売っているのか?』
騎士から兵士に落とされ、謎の言葉サーしか言ってはいけない地獄を受けた。
内容は思い出したくない。
ただ地獄が終わり再び騎士に任命された時、二度と手放すまいと涙を流した。
その後は地獄(堕落したら不定期開催)に戻りたくない一心で怠惰な過去と決別し、日々の鍛錬も真面目にこなしてハイブルク公爵家でも中より少し上の実力をつけた。特に馬術は(逃亡用に)上位に入るほどになった。
御当主様にも認められて護衛部隊の一人に入り、華の王都にもついていった。楽しんだ。すっごく楽しかった。学園に通う悪魔様がいたので節度の範囲内でだ。
そして悪魔が国家規模のやらかしをしたあとも公爵家騎士として粛々と仕事をしていたある日、御当主に呼び出される。
「君は馬術が得意だったな。王都近辺に不慣れなアレスト女辺境伯が兵を率いて元貴族の賊を討伐しにいくので案内人を任せたい」
「はっ!」
返答は悩むことなく瞬間で応えた。
悪魔を引き取ってくれる素晴らしき人格者アレスト女辺境伯様の先導役なんて大変光栄なことであった。
この時までハイブルクの地獄を味わった自分は優秀だと思っていた。
挨拶もそこそこにアレスト女辺境伯様は兵を率いてありえない速度で行軍。
予定していた最初の開放する村に予定時間を大幅に短縮して到着して、その勢いのままなだれ込んで一瞬で賊を討伐。
「次はどの方向にある村か町かな」
「あ、ここから東の方に馬で一日ほどかかる村でして……」
「よし、昼までには討伐しようか」
それを二回繰り返し。
「こちらの方向に町はあるか?」
「ええと少しお待ちください……。ああ街道沿いから少し距離がある木材で栄えた町があります。賊は来たが少数だったので返り討ちにしたと報告が上がってきていますね」
「それは虚偽の報告だな。大量の血の匂いが漂ってきている」
そう言ってアレスト女辺境伯様は予定の行路を大きく外れる。
町には逃げ込んだ元男爵の一族が暴力で支配していて、アレスト辺境伯兵は先の開放してきた町村と同じように一蹴した。
「はあぁぁぁ」
深くため息が出る。
今いるのは先ほど解放した町の代官屋敷の居間だ。
残念ながら代官家族は殺害されていた。太陽も落ちかけていたので、荒らされた代官屋敷を片付けて本日の休息地にしたのである。
「まさか一日で四か所も解放するって誰も思わないだろ」
一日一か所の賊からの解放を予定していた。近場なら二か所目もと考えていたのを四か所、しかも一か所はイレギュラー。
悪魔の婚約者は、いや婚約者の家はおかしい。
アレスト兵は疾うの昔に現役は退いているお年寄りなのに若い自分がぎりぎりついていけるほどの体力の化け物だった。
一人で数人を相手取り圧倒できる武力。これは王都で弱者しか相手してこなかった元貴族が弱かったせいでもあった。
そして個人でも凄かったが集団戦闘が異常過ぎた。
普通、敵側の陣地に攻め込むのだからどう攻めるか決めて、それでも不測の事態が起きた時の事も考えてと事前の準備が必須だ。
なのにアレスト女辺境伯様は騎乗したまま突撃、各々勝手に動きながらも主攻、助攻、遊撃、おとり役に分かれて完璧に連携していた。なんの合図もせずにである。
「ハイブルク家の軍でも事前に示し合わせていないと無理なのに、なんだあれ狼の狩りだろう」
「そうですね。近いと思いますよ」
「うわっ!?」
独り言に背後から返事がきて驚いた。
慌てて振り向くと女性が湯気の立つトレイを手に立っていた。
「驚かせて申し訳ございません。アレストのことかと思いつい答えてしまいました」
「あ、いえ、気を抜いていた自分が悪いのでっ!」
奇麗な謝罪の会釈をする彼女に慌てて立ち上がり手を振って止めようとした。
「そ、それより! 辺境伯様のお世話が一息ついたのですか」
彼女はアレスト女辺境伯様の侍女だ。
女辺境伯様の身の回りの世話をする為に馬に荷物を括り付けて騎乗し、自分たちと同じ速度で付いてきた凄い女性である。
「はい。グリエダ様はお休みになられるとのことで下がらせていただきました。部屋に戻る途中で居間の方に灯りが見えたので」
彼女は手に持っていたトレイを見せる。そこには二つのカップと湯気をだすポットに小皿にはこの屋敷にあったのかクッキーが数枚、それらが載せられていた。
「お気遣い申し訳ございません……」
「いえいえ私も就寝前に少し口に入れたかったので」
自分が座っていた席の反対側にある椅子を勧める。
彼女はお茶淹れた後に座った。
お互い何も話さず飲む。
良い香りと僅かな渋みを感じながら喉をスッと落ちていく。
「美味い……」
「屋敷にあったものですが、少しお高い茶葉だったようですね。新しい代官がやってくるまでに味が落ちるので使わせていただきました」
もう死んでいる屋敷の主に感謝を捧げる。
「先ほどは狼の狩りなどと言って申し訳ございません。決して侮辱するような例えではなく……」
「わかっていますよ」
こちらの言い訳に笑顔で侍女殿は返してくれた。
他家を侮辱する発言は訂正しておかなければ後々の問題になるのでホッとする。
「こちらも訂正すると、あれは長年の戦いによって鍛えられた爺様たちにしか出来ません。出来たとしても前当主様に近しい者ぐらいでしょう」
「そうなんですか正直安心しました。私と同年代もあのように動けると聞いてしまったら絶望していましたよ」
「馬に乗って生まれたと言われる騎馬民族と何十年も戦って培われたものですから」
恐ろしい事を聞いてしまった。騎馬民族は意思伝達の時間も惜しいほど速く戦闘行動が出来るということだ。あとで報告書に書いておく。
「話は変わるのですがバーニンガー様、この度は私たちの同行の許可を認めていただきありがとうございました」
一瞬何を言われているのかわからなかった。
そして出発当日の朝に王都門の前で、アレスト女辺境伯様と侍女殿と数名のメイドを同行するさせないで揉めていたのを思い出した。
「ああ、あれはですね。女性であられる辺境伯様の世話する者を行き先で探すのに悩んでいたので好都合だと考えただけですから」
男は身体を拭かずに何日もある程度は平気だが、高位貴族当主の女性を緊急時でもない限り野営をさせるわけにはいかなかった。
「いいえ、本当に感謝しております。グリエダ様は婚約者のセルフィル様がおられるのでそれなりに意識して気を付けておられますが、中身は男寄りというか軍のガサツな兵寄りな思考なので、身の回りの世話をするものがいなければその……」
「……わかりました。それなりの規模の町で夜を過ごせるように調整します」
「申し訳ございません」
「いえいえ、自分も野営より楽に休めますので」
侍女殿が頭を下げられた。
ハイブルク公爵兵もアレスト女辺境伯様に稽古をつけてもらった……。いや、あれは蹂躙されただけだな。
暴力そのものの主を持つと、悪魔ほどではなさそうだが大変そうだ。
「それもですが今回の賊の討伐の行程の調整も殆どをお任せしており申し訳なく」
「いえいえ、アレストの皆様の討伐に参加できるほどの武がなかったので、裏方で貢献しようと考えた次第で」
自分たちが向かい合うテーブルの上には、書きかけの報告書の他に明日からの日程の調整を書いたものがあった。
『なに? 騎士は武力さえあればいい? ならば事前の準備、兵糧、現場での調整、兵站とその他諸々の貴方たちが雑事と言うものの無い世界を体験させてあげましょう』
二つ目の地獄を体験して、自分は多くの人々の力によって戦えるのだと涙し。
『わかりましたね。なら学び習得してください。貴方たちは兵を直接纏めて上の命令を実行する中間管理職なのですから』
誇りだけでなく心も砕くものもあると体験し、地獄は幾つも種類があるとわからせられた。
「それに先ほどまでウチの爺様たちを屋根の下で休ませる為に民家に泊れるように掛け合ってくださいましたでしょう?」
「軒下では体力が回復しませんから」
「自分たちはまだ若いと勘違いしている爺様にはいい薬ですと言いたいところですが、初日で身体を壊してはアレストの恥になったのでバーニンガー様には感謝しかございません」
「いえいえ、そんなたいしたことでは」
隠してはいなかったが、感謝されると照れてしまう。
「武も無いと言われましたが、アレストの連携を崩したくなかったのではないかと。その代わりに侍女の私たちの安全を確保するように動かれておられるように見れました」
そういう風に動いていたのも間違いない。だってアレストの突撃に入るなんて無理だったし、なら出来ることしようとしただけだ。
「グリエダ様が先ほど感謝をせねばならないなとおっしゃっておられました」
「あ、もうその辺で」
悪魔よ。これが褒め殺しというやつなんですね。羞恥で死にそうです。
【違います】
彼女の誉め言葉は止められた。しかし辺境伯の感謝を受け取らないのは非常に失礼なことになるので、明日も羞恥に顔を赤く染めることは決定されていた。
「まあ侍女様が言った通りのことしかやっていませんから体力は余りまくっていますので、後方支援をこなして功績を上げたいと思っていますよ」
これは本当だ。どんな仕事でも真面目にこなせばハイブルクは実績に積み上げてくれる。人の功績を掠め取って上に上がっても、仕事が出来ないなら過去を調査されて悪魔が作った罰を受けることになるので、悪魔曰くクリーンな職場らしい。
「あ、それで明日の行程でお願いしたい事がありまして……」
少し嫌な過去を思い出していると、侍女殿が言いにくそうに切り出してきた。
「負傷者でもいましたか。それとも辺境伯様の容体でも悪くなられたのでしょうか」
負傷者なら傷の具合で町に留まるか王都に輸送する手配をしなければならない。アレスト女辺境伯様は悠々と賊を葬っておられたけれど、女性なので男の自分にはわからぬ問題が起きたのかもしれない。
「ウチの爺様たちなのですが、今日張り切り過ぎて明日は使い物にならなくなっていると思うのです」
「……ん?」
「二か所ぐらいなら大丈夫だったのでしょうが、若く健康なグリエダ様と自分たちの身体の衰えの差を自覚できておらず、今現在、私が連れて来た者たちが腰と肩と膝の痛みで唸る爺様たちのもとに、湿布と軟膏を配っています」
「あー」
アレスト女辺境伯様という化け物級の動きに付いていっていたので忘却していたが、アレスト兵の皆さんの殆どが高齢の方たちばかりであった。
一日で賊を四度も一蹴出来た戦闘能力は、後で大きく負担が身体にかかるものだったらしい。
予想していた侍女殿の荷物の半分は湿布と軟膏で占められていたそうだ。無かったら数日は行動不能になっていたらしい。
マジ感謝である。
「わかりました。明日の昼まで各々休む時間に当てて、午後は移動のみにしましょう」
「よろしくお願いします」
「グリエダ様も先ほどようやく説得出来まして、バーニンガー様の作成される日程に従うとの言質を取れました」
「……それは大変ありがたいです」
上の者を説得するのが仕事の中で一番きつくて難しいので、先に済ませてくれていた侍女殿には感謝しかない。ちなみに二番は部下に納得という名の妥協させることで心が痛む。
「ならば一人で先に向かって潰しておこうと笑顔でのたまわれたので、その説教をしたのでこんな夜更けになりましたが」
「ほんっとうにありがとうございます」
高位貴族の単独賊討伐を許したら、責任を取って自分の首が飛んでいたところだ。実行するのはたぶん悪魔。
その後はアレスト女辺境伯様の性格にご年配の兵の気性を、このあとの討伐の行程を侍女殿の助言に愚痴交じりの中から作っていく。
『いいですか。女性の愚痴には同調するのが一番です。こちらは話さないでいいのかですか? 自慢話を楽しく聞いてくれる女性は心中で嘲笑っているか、結婚相手に相応しいか値踏みしているだけですよ。モテるためには女性を楽しませる話術を磨きなさい。まあ無理でしょうが』
悪魔もたまには役に立つことを教えてくれる。しっかりとトラウマも植え付けてくるが。
悪魔ショタ「自由に改造していいのは楽しいな♪」
ハイブルク騎士「ヒィィィイッ!」
おかしい。覇王様ターンを書こうとしていたのに、現小悪魔ショタのハイブルク領での悪行が滲み出てた(´・ω・`)
テオ=バーニンガー君は最初騎士になったぜ!イエーイッ!と大半の騎士と変わらないイキリ野郎でしたが、兵士を洗の…マッチョ改造人間にしたショタにボコボコにやられました(´▽`)ノ
本人は器用貧乏な平均より少しは上?と思っていて、自覚ありませんが、悪魔ショタの洗の…マルチにどの方面でも優秀な改造人間になっています。
次兄が副官に考えていたのを、長兄がかっ攫いました(^^)
次兄ってダドリオって名前だったんてすねぇ。ある読者様がまとめたキャラ設定メモがなかったら別名になってましたね(^_^;)
覇王様の侍女様はお久しぶりの登場(*´∀`*)ノ
コミカライズの最新話で出られます。ネームを見た影響でたぶん出しました。意図的ではないところが筆者クオリティ(o゜▽゜)o
絵で見ると普通の美人さん。言っていることおかしいけと普通で美人さんなんですよね。気になる方はアイビー最新刊を見て下さいm(_ _)m
バーニンガーと侍女殿は進展すると思う?(・ω・)
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待っている間の暇つぶしに
【釣り合う二人はバカップル】
ノクタ版
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カクヨム版
https://kakuyomu.jp/works/16817139556484842815
ノクタ版はエチエチが入ります。ノーマル版はカクヨム版を。
ただのバカップルを書いていたのに、人前で読むと大変に危険物と化した物語です。
ショタの前世の親友、魔王様も少し出ます。
笑わずに読めたら是非ともご感想を!
君は雨乞いワールドから逃れられるか!(*´∀`*)ノ









