知識が無ければわからない
今話を書いているときに寝ぼけながら書いたの。
のじゃ姫スキル魅了大(大半に効果あり)、ショタ魅了(マニアックに特効)
わかるが、何を見て書いたの?(´・ω・`)
やだなーやだなー。
「それで彼女の魔法のどこが危険なのです」
一通りチェルシーの魔法の検証を終えてデータをまとめようと考えていたら、すぐ近くのテーブルに拉致された俺。そして生真面目なお顔を更に生真面目にした王妃様に問い詰められています。
愚王な旦那から解放され、産んですぐに離れることになった娘と一緒に暮らせるようになって少し若返られた王妃様。
めんどうだなーめんどうだなー。
「この子は捻くれているからそんな風に言うとわかりやすく教えてくれないわよ。それに面倒くさいと思っている顔だから煙に巻く気ね」
人の顔から心を読むのはハイブルク公爵家の裏頂点ヘルミーナ様ことヘルママである。そろそろ俺もお年頃なのでママ呼びは止めさせてもらいたい。
「あら、もう足搔くのは止めちゃったの?」
「絶対に逃げられないのがわかっていて逆らうなんてできませんよ」
ヘルママが楽しそうに見ている。
現エルセレウム王国最高権力者と数年後なら単独で国家転覆出来そうなハイブルク公爵家の女帝に捕まって逃亡は出来なかった。
「それでチェルシーさんの魔法が危険ということですね。正直に言って凶悪すぎます」
もう面倒くさいからから聞かれることには正直に答える。だってそれが一番早く解放される方法だからだ。
王妃様が続けてという視線を送ってくるので言葉を続ける。
「彼女の魔法は熱そのものです」
「……意味が分からないわ。火ではなくたかが熱でしょう?」
王妃様が眉間に皺を寄せる。
「そのたかが熱は水をお湯にして、熱すぎると火傷しますよ」
「そのくらいでしょう? 火は燃えるのよ」
うーむ、王妃様はどうしても火より下にみたいらしい。覚えている前世の知識で納得させることが出来るだろうか。
「セルフィル」
前世の無駄知識で話す内容を考えていたら、ヘルママが俺の名を呼んだ。
「貴方と他人とは違い過ぎるのを忘れているの。今話すことは彼女のことでしょう?」
ヘルママはそう言って視線を動かす。その瞳が映すのはカルナが奇麗に整地した地面に文字を書くのじゃ姫と、文字が読めないチェルシーがその字を覗いていた。
ステイステーイ。
心のオッサンが手のひらを下に向けて動かして落ち着けと言っているのがムカつくがステイだ。燃焼と熱の関係性を時間をかけて説明して何になるのだろう。危うく頭がおかしいショタと王妃様に認定されるところだった。
ありがとうヘルママ! おそらく未来知識を人に喋っちゃダメと釘を刺したのだろうけど、相手を言葉で叩きのめすのは抑えられたよ。
深く一呼吸だけ深呼吸する。
「王妃様、簡単に述べると彼女の熱の魔法は火の魔法よりも遥かに熱くなります。先程の爆発も一瞬で高温になったせいで起きたもので、聞き取りでは彼女を奴隷にした炎獄の魔法使いは自分の火魔法に使わせて熱量をかさ増ししたものと思われます」
チェルシーの魔法の事だけを現代日本の知識で推測して、なんちゃって中世レベルにまで噛み砕いた。
熱の魔法と言ったけど、結果からおそらく超高温を発生させるのがわかっただけだ。
チェルシーが第二王子の反乱時に至近距離で大爆発に巻き込まれたのに生きていたのがまずおかしかった。メイドのアリーが回復魔法をかける際、飛来物での裂傷や打撲ばかりで火傷は殆ど無かったらしい。彼女の周囲で死んだ者たちが重度の火傷を負っているのにもかかわらずにだ。
つまりチェルシーには火または高温を防ぐ方法があったのである。
防ぐ魔法と言えば結界だろうが、それでは増幅魔法と勘違いしていたのはおかしい。それに結界という摩訶不思議なものは、いまのところこの世界の歴史上存在してはいない。
だから火傷をしない、しかし裂傷などは受けるのなら火または熱に抵抗が出来て火魔法の威力を増幅できるように見える魔法だと予測はついた。
火魔法は真っ先に排除した。だってプライドの塊な魔法使いが、己より才能がある同系統の奴隷なんて認められるはずがない。
と、ここまで考えて熱操作が有力候補かなと予想したのだ。なので魔法を見せてもらう時に水を撒いて水蒸気でも出れば正解に近いかと思っていたら、爆発するのは予想外だったが。
検証とチェルシーとメイドたちからの情報をまとめて熱系の魔法としたのだ。しかし、実際は電子レンジみたいに電子を水分子にぶつけて動かし熱を発生しているのか、直接分子を動かしているのか、魔力を熱に変換しているのか、俺にはわからない。
あくまで見て聞いて令和日本人の知識から予測しただけだ。
それでも、なんちゃって中世世界では正解に一番近いはずである。
いくら賢くても知識を学ばなければ理解も予測も出来ない。
大人になって役に立たねえなと思っていた基礎学力が、まさかの異世界で役に立つとは思いもしなかったよ。
「……それは彼女が主人であった魔法使いよりも強いということかしら」
「少し調べましたら、チェルシーさんの主だった魔法使いの元々の強さは平均の魔法使いよりも下だったそうです。それがある時から人を一瞬で灰も残さないほどの力を持つようになって、炎獄と呼ばれることになったみたいですね」
「そう……」
「いたわねぇ。人の物を掠め取って威張る貴族が」
王妃様はチェルシーの境遇に同情している。おそらく愚王の幸せの為に自分の人生を削っていたから気持ちがわかるのだろう。
ヘルママはハイブルク家の仮の当主をしていた時に、部下の功績を掠め取っていた無能な貴族を思い出したのだろう。少し不機嫌だった。
近い境遇には親近感が沸くものだ。
「貴方の考えでは彼女を魔法協会に引き渡すのは悪手なのね?」
「今の協会にチェルシーさんを扱えるとは思えません」
いやだってねぇ。
「今まで全力で魔法を使ったことがないらしいんです。もし協会で暴発したら、最悪王都に活発に噴火する火山みたいものが出来るんじゃないんでしょうか」
「……はい?」
目を開いてポカンとする王妃様。
意味がわからないよね。俺もわからん。ヘルママは『あらあら屋敷が火事になって大変だわ』と余裕がありまくりだ。
「チェルシーさんの熱魔法がどのくらい高温まで上げられるのか、危険すぎて安易に計測出来ないんです。炎獄の魔法使いの火魔法が人を骨まで燃やし尽くしても、彼女は本気であっても全力ではなかったんです」
俺は乾いた笑いをしていないだろうか。
王妃様が不安そうにその危険人物と遊ぶ娘を見た。
一応、二人にはアリーとセイトを傍に控えさせていた。のじゃ姫に危害を加える様子が見えたら処分していいと言ってある。ちなみに変態執事ことアレハンドロはチェルシーと俺との間に入るようにいた。俺の外付けチートがここまで警戒しているのは、王妃様のメンタルに響くから言わないでおこう。
「大丈夫ですよ。彼女は呪われていて誰かの魔法にしか魔法はかけられないようになっていますから」
「呪いですって!」
「ええ、呪いです。彼女から聞いた話の中に、炎獄の魔法使いがチェルシーさんに『増幅魔法』という言葉を何度も投げつけたらしいんです。魔法のまの字も知らない元農民の彼女は魔法限定にしか魔法が使用できないと思い込まされてしまったみたいで」
チェルシーにはそのことは伝えていない。瞬間超高温魔法を無差別に出来る状態なら、のじゃ姫と一緒に学ばせない。
「ほんっとうに大丈夫なのね?」
「魔法の根本は心です。知らない、殻を破ろうともしないとなれば彼女は何も出来ません。ただ感情のままに暴走すればその限りではないのですけど、王女様がお相手しているので落ち着いているみたいですね」
王妃様は安全を確認してくるけど、貴女の娘は書き取りを終えてすぐにダッシュしてチェルシーのもとに来たのですが。注意してくれませんか。え? まだどう接すればいいのかわからない? 一男一女二義息子を育てたヘルママに親子の接し方を教えてもらわなかったの?
「勝手に育ったわと言われた私の絶望がわかる?」
「……」
ヘルママが王城に残ったのはのじゃ姫と親子の関係回復のサポートだと思っていたのに、オロオロする王妃様を見て楽しんでたのかな。
王妃様を可哀想に見てるとギロリと睨み返されてしまう。そしてハァーと息を吐きだした王妃様はキッと表情を引き締めた。
「エルセレウム王国は魔法協会所属の魔法使いの者から被害を被り奴隷にまで落とされた民を保護することにします。その為にセルフィル=ハイブルクにその任を任せます」
おおっと水戸黄門様の印籠並みのチートをゲットしちゃったぜ。
「あら王家ではないのね」
黙っていたヘルママがこくりと首を傾げた。うむ、美魔女の所作は美し妖艶で見ていて心が癒される。
「この子の短い間での所業でそこまで信頼はできないわ。リリアーヌの事で少し信用しているぐらいかしら」
「あの僕、エルセレウム王国にとってかなりの貢献していると思うのですが……」
うるうる僕は可愛いショタだよ。最近は国盗りと反乱阻止と王女プチアマゾネス化ぐらいしかしてないよ。好印象は持たれない経歴だなぁ。
そんなことより王妃様からチェルシーの保護の名目を頂いちゃった。王家だと魔法協会のいちゃもんを真正面から買ったことになるから、国という大雑把な範囲でいざとなったら簡単に切り捨てられるぐらいのものだけど、それでも結構重要なことを王妃様はしてくれた。
「よかったわね。これで建前が出来たわよ」
「ここの使用許可を出すのも、関わる気も私には無かったのに、ヘルミーナが強引に」
ニッコリ笑顔のヘルママ。
王妃様が眉間に寄った皺を指でほぐしている。この人、常に他人に振り回される運命なのだろうか。
「それで魔法協会をどうにか出来るのですね?」
王妃様が今回の元凶をどうするのか聞いてくる。
そうチェルシーが魔法使いとかどうでもいい話で、魔法協会への対処が本命なのだ。
「長兄にも伝えましたが、チェルシーの身柄の代わりに無詠唱などの論文を渡すことで納得してもらうつもりです」
「無詠唱は魔法使いの力を増すことになるのではないの?」
「王妃様、魔力使いの身体能力が高くても、それだけで騎士にはなれません。身体を鍛えて武芸を学び修めたりと様々なことをこなして騎士と呼ばれます。魔法が使えるだけで自分たちは強いと……」
「努力しなければ使えない技術だけを教えるつもりなのよセルフィルは」
あ~ん! 自慢げに説明しようしたのに、ヘルママに超短縮されたよっ!
無詠唱は俺の試行錯誤の夢想をウチのメイドたちが気が狂うほどの鍛錬で使用できるようになったのだ。生まれ持った才で天才だと思い込んでいる馬鹿には会得できるわけがない。
「まあ協会で無詠唱は全否定してきたので、何言ってんだこいつ!? と怒りそうですですけどね」
「何をしているのっ!?」
俺がHAHAHAと笑いながら肩を竦めると、王妃様にツッコミをいれられた。
追撃のツッコミが来る前にヘルママが手で王妃様を抑える。そして俺に話を続けろと視線を送ってきた。
「タイミングが悪かったんですよ。ウチのメイドを引き渡さない為に無詠唱は無いと嘘を吐いてしまった後にチェルシーさんのことを出されましたから。それでも無詠唱が使える機会を与えられて、素直に応じるならそれもよしじゃないです?」
「それでは貴方の嘘を信じた魔法協会側は信じないでしょうね」
「もちろんメイドを手放したくなかったとか理由をつけて嘘を吐いてましたと伝えますよ。そのぶん努力すれば役に立つ魔法の理論も付け加えますし」
後だしされても怒らないよ。それどころか四属性の可能性とかも教えちゃうよ。
でもな
「それではあちらは応じないわ。魔法という大きな力で無理を通して難題ばかりをこちらに押し付けてくるのよ」
「でしょうね。僕を完全に見下していましたから」
我が世の春を歌っていた王をどん底に落としていても、王子が率いる貴族を打ち倒していても、魔法協会は見下していた。
チェルシーが王城で生きているのを知っていて、愚王の件を知らなかったはずはない。
それでもチンピラのように絡んでくる。
でも、俺のハイブルク公爵領での所業は知らないのだろう。エルセレウム王国魔法協会の支部が公爵領にあるのだから、ちゃんと確認を取ればよかったのだろうに、お金さえ送られてきたらどうでもいいと思うほど傲慢になっているのだろう。
俺のやらかしの殆どを知っているから、ヘルママが楽しそうにこちらを見ている。
「身の丈を越えて手を伸ばしてきた増長者にはそれなりの罰を下さないといけませんよね」
「待って、あやふやに言わないではっきりと明確に魔法協会をどうするのか言いなさい」
えー、こういうのってあやふやに言うのが貴族らしくて格好いいんじゃないのー?
「実力行使をしてきたらですね。身動きとれないぐらいに暴力を振るって発狂させて協会の建物ごと埋めて更地にしてあげようかと」
めっちゃ怒られた。
のじゃ姫が驚いてチェルシーを連れて距離を取るほどに。自分のオカンが他人を怒る姿ってマジ怖いよね。
「協会は建物も人も残しなさい。国に服従するように心を折りなさい」
「難易度が激上がりの理不尽な命令を下されましたー!」
俺は前世の親友のように女性からのお叱りはご褒美と言ってのけるほどおかしくはないので、涙が出る寸前までなっちゃうの。
「でも出来るでしょう?」
頭をなでなでして慰めてくれるヘルママが出来るよなと暗に言ってきますよ。飴と鞭の鞭も飴に聞こえるのがヘルママらしい。
「出来ますけどぉー。ちゃんと出来たらご褒美をくれるってならですねー」
魔法協会の件を王妃様の命令通りに済ませても、俺のストレスが少し晴れるぐらいだ。
「何が望みなの?」
「そうねぇ」
「ヘルミーナは黙ってて」
俺のお願いは義母のものだったらしい。与える側の王妃様が取り返してくれたけど。
「う~んそうですね」
よく考えたら、心にオッサンが住まう俺は望んだものは自分でどうにかするタイプなのだ。宰相のベッドを少し反ったものに替えて悪夢を見させてというのも、自分でやりたいので却下。
あ、面倒なのがあったな。
それを告げると、王妃様は少し考えられた。
「……時間はかかるだろうけど叶えてみせます。でも貴方はそれでいいの?」
「棚からケーキのようなものは善行に使用したほうがいいんです。それに少しは心の慰めになってくれたら嬉しいんです」
「ほら、私の子供は良い子でしょう」
ヘルママのなでなでの速度が上がる。ハゲるハゲるの。
「それで本当に魔法協会はどうにか出来るのでしょうね」
「大丈夫よ。この国でこの子ほど魔法使いに対応出来る者はいないわ」
はい自慢の義息子です。
王妃様のご要望を上手く解決出来るのは俺しかいないだろう。
心をへし折るかー。アレがいいかな、いやコッチも捨てがたし、そういえば魔法使い必須の魔法の威力を上げてくれる杖の目算が付くアレがあったな。見せつけて自慢してやろう。
「不安だわ……」
「悪い子の顔になっているわよ」
はわっ!
のじゃ姫「これがあ~なのじゃ!」
ママの味「小さいのに字を書けるなんて凄いです」
メイド1号(字間違えてますね。あれではおです)
メイド2号(最近二人だけセルフィル様といろいろしてー!狂わすか……)
ショタの魔法知識を少し公開。今だにわからない異世界なろう魔法の原理(´・ω・`)誰か教えてーっ!(ノД`)
皆様コミックス一巻は買われましたか?購入された方は白タイツ原作者と不快な具視達が雨乞い踊りの悪夢を見られましたか?
原作者の私は具視達がマイムマイムする夢を見ましたよっ!(ToT)(書店で買ったその日に。これ本当)
というわけで、購入されてない方は書店にGO!(*´∀`*)ノ男性はちょいBLっぽい表紙を店員さんに見せつけ照れながら買ってくださいね!
なにとち狂ったことを後書きに書いているんだろう……(・_・;)
次回の覇王様回を書くか……。
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