上層部はブラックの中(主にショタのせい)
筆者は何年もかけて予約投稿を覚えた!
しかし、右手人差し指が即時投稿をしようとしている!(>_<)
「すまなかったなハイブルク公爵」
貴族たちが出て行ってしばらくたってから、疲れ切った声で宰相は謝罪した。
「いえ、足を引っ張る者はどこにでもいるもの。いまのうちに脅しておけば新しく湧くのも少なくなるでしょう」
バルトも不遜な態度を崩して応対する。
「ああいう者は権利を主張するだけで、こちらの言うことは全く聞く耳を持たなくて困る」
「今は国難に力を合わせて立ち向かわなければならぬのに……」
大臣たちも呆れた様子で愚痴を言い出した。
宰相たちとバルトは事前に示し合わせたというわけではない。ただ、足を引っ張る貴族が邪魔でしょうがなくて、相手がどれだけ強大な相手かを身に沁みさせてから、お前らでは相手にもならないと、心を折って退場させたのである。
「まあこれで懲りたであろうから少しは大人しくするだろう。そんなことよりも魔法協会のことだ。あの悪魔が引き渡すのをためらうほど、その奴隷は王国にとって危険な存在なのか?」
「……」
バルトは場を引き締めた宰相から自分の弟を悪魔呼ばわりされたことに、ちょっとイジメすぎたのではないか弟よ、と思ってしまった。
「そうだ。セルフィルはそう判断している」
「魔法使いでもない彼に魔法の何たるかがわかるのかね。私たちも魔法使いにいなくなられると困るのだよ」
「……これはこの場限りで忘れてほしいのだが。弟は魔法協会よりも魔法について理解がある」
大臣の一人の質問にバルトは言い淀みながらも答えた。
「何故だね」
「それは我が家の機密で教えることは出来ないな」
「それで我らが納得出来ると思うのか」
「納得していただけなければ、弟もハイブルクもこの件と国政から退かしてもらおうか」
どこに今よりも遥かに発展した世界の知識を弟が持っていると話してどうして信じてもらえるだろうか。本当に秘匿しているものだが、自分がおかしくなったのかと思われるの嫌なバルトであった。
「セイレムも同様です」
アリシアもバルトに追従した。
それには大臣たちはざわりと動揺する。彼女は先ほどの貴族たちをちょっと脅すのではなく、国を脅迫していたのだ。
「セルフィル君は私の恩人ですから、ここに来る前に臥しているお父様に相談してセイレムの意思決定権を預かってきました」
「いいのか?」
家を巻き込む宣言にバルトが心配そうに確認する。
「どちらかというとお父様の方が乗り気で、私の為というよりバルト様の為というのが言葉の端々に……」
「……」
アリシアの呆れたため息と宰相たちのうわぁという抑えた声が室内に響く。
バルトは義父になるセイレム公爵の愛が重かった。
いや愚かな王に王子に言いなりになっていた国の上層部に見切りをつけた。そして同様の自分にも。だから第一王子と婚姻させて話の通る王妃にされかけた娘なら、情で動かずに対応出来るだろうとしてくれたのだ。
そう思いたいバルトだった。
「了承した。こちらが疑問に感じて質問しても答えなくていい」
宰相が自分たちが圧倒的に不利な条件を提案し呑んだ。
国を割るようなことは出来ない。彼の天敵の弱点が知れるのには後ろ髪を引かれていたけれど。
「それよりも増幅魔法というものは危険な魔法なのか?」
「ああ申し訳ない。奴隷チェルシーの自己申告が人の魔法の威力を増幅すると言っていたのでそう名付けたが、セルフィルの考えでは別種の魔法らしい」
「「「……なんだと?」」」
「先ほどは部外者がいたので一部の情報だけ流しました」
宰相たちはバルトの返答に納得した。
「騒ぎ立て悪意無いまま噂を広める者たちには聞かせられぬからしょうがあるまい」
「……弟は情報の差が出来て、魔法協会を叩きのめした時に協力者の発見が早まると」
「「「小悪魔っ!」」」
小悪魔の罠にドン引きする大臣たち。
「宰相にはもう一つ上の段階の情報を流してほしいと……」
「あの悪魔がっ!」
バルトは申し訳なさそうに吠える宰相から目を逸らす。
「待て、なぜそれを私たちに話したのだハイブルク公爵」
「私はこの部屋にいる者で密告をするような人物はいないと思っている」
小悪魔の罠をバラしたことに不信を抱く宰相と大臣たちの視線に、バルトは落ち着いていた。
「全員が現在の国の状況を知っているはずだ。この部屋で一丸となって国を立て直そうした苦労が身に染みているはずだ。自分の席を狙っていた部下が憐みの目で見た時代わって欲しいと心の底から思ったはずだ」
バルトはそこまで言って一呼吸入れる。
「そして全員が毎日屋敷に帰りたいはずだ……。なのにわざわざトラブルを起こすようなことするはずなんて、この中にいるはずがない。私は自分のベッドでぐっすりと眠りたいんだ……」
最後は訴えるのではなく、上を向き哀切極まりない感情を呟いた。
少しの沈黙が落ち、やがて鼻をすする音やバルトのように天井を仰いで目頭を押さえる者が現れた。
彼らも己のベッドで寝たかったのだ。いくら王城の個室で質の良いベッドで眠っても仕事が気になり寝付きにくいし眠りは浅いし寝起きは身体は重くて憂鬱である……。
完全に気を抜ける自分の屋敷のベッドで寝たい。
それは割に合わない国難の政務をこなし、ブラックに染まってしまった大臣たちが真に望むものであった。
貴族を見たらまず疑えの人生を送ってきて最近酷使されまくって疲れている彼らには、小悪魔の罠で落とされたところにバルトの信頼と同類の言葉は心に響いた。人、是を詐欺師の手段と言う。
そんな大臣たちをニコニコ笑顔で見ているアリシアがいたのにはバルトは気づかない。
『長兄は僕の言うことは聞いてくれないどころか、僕を使って誠実と共感で心を獲っていくと思います。アリシアさんは右往左往する上層部を見ててください。楽しくはないですけどわだかまりは解けた感じはなんとなくしますから』
アリシアが父親の公爵からセイレム家の権限を預かり、バルトと待ち合わせて【統合中枢詰め込み部屋】に向かう前に小悪魔がこっそりと隠れて囁いてきていた。
その時は意味がわからなかった彼女だけれど、王子の婚約者時代に仕方が無かったと助けてくれなかった人たちが苦悩している姿に少しスッとしたことで理解できた。
真面目で良い子ほど心に溜め込んである日いきなり壊れるのを、前世でよく見ていて知っているセルフィル君。
兄の行動パターンを読んで宰相と大臣たちを生贄にアリシアちゃんのストレス緩和をついでに行ったのだ。ちなみに宰相たちのストレスは大人だからとまったく考慮されていない。
「それであの悪魔は魔法協会どうするつもりだ」
弟の考えをわかったうえで乗り少し罪悪感を持ったバルト以外、アリシアの国の上層部への不信感が少し下がって同情が微増し。国の上層部はバルトへの好感度が少し上昇、ショタへの警戒度が激増して、仲間意識ができてメンタルが回復すると話は魔法協会の対応に戻る。
「協会が奴隷の保護を認め譲渡するならば、ハイブルク家からは無詠唱の成功例の報告書と論文を代わりに出すつもりだ」
また室内がざわつく。
「それは公爵家の秘匿するものではないのか」
「以前はですね。第二王子の反乱時に我が家のメイドが使用してあとは広まるだけで、無駄な労力で秘匿するより価値のあるうちに使い切ったほうがいいと判断した」
「その無詠唱が魔法使いの連中に広まるのは問題ではないかね」
「無詠唱はそこまで都合のいいものではない。その仕組みと対応策を書いたものを後で提出するのでその時に内容は説明したい」
バルトはこちらを立てればあちらが立たずにならないように、国にもちゃんとメリットになる情報を渡した。
「私たちは問題ごとしか起こさない魔法協会にぶつけて無理難題で困っている悪魔に手を差し伸べて恩を売りたかっただけなのに、どうしてこうなったのか……」
「私もそうなると予想して交渉に弟を出したんだがな」
「「「はあぁぁぁ」」」
バルトと宰相たちはため息をつく。
今回の魔法協会の事は出来レースだった。
愚かな王をほぼ無血で幽閉し、第二王子の反乱で王の派閥を壊滅させたセルフィルは注目の的になってしまった。
それは年が若いと侮る者や、危険な存在と排除しようとする者、多くの悪意ある視線がセルフィルとハイブルク公爵家に向かうことになる。
だからこそ少しでも大きく見られるのを削るために、セルフィルが国に泣きつく場面を作ることを宰相たちは仕組み、バルトはセルフィルを使者として出すことに了承した。
その結果が、魔法協会と一触即発状態。
【統合中枢詰め込み部屋】にいるアリシア以外の胃がシクシク痛み始めた。
「まあ、今回はセルフィルを挟んだおかげで最悪は回避出来るのは不幸中の幸いだったか」
「回避? いったい何のことだね?」
ただ一人納得して、気が緩んだバルト。
「なんだ、宰相はまだ公爵領での弟の過去の所業を調査していないのか」
「バルト様。どんなに最速の早馬でも、教えていただいたハイブルク公爵家の伝達速度を超えることはできませんよ」
「知っているからセルフィルを使者にしたと思ったのだが違ったのか。仕方がない、ハイブルクの隠したい出来事だが教えよう」
「……頼む」
国より情報速度が速い技術をちらつかせられても、現在の問題を解決する為にグッと飲み込む宰相たち。
でも宰相たちは思った。
小悪魔の兄も性格が悪いと。
同時刻
「へくちっ」
「なんだ風邪かセルフィル様。止めてもいいんだぞ」
「どこぞの宰相たちが長兄に転がされて、内心で僕に悪態を吐いているんですね」
「噂でもなく確定なのですか」
「最近、【統合中枢詰め込み部屋】にからかいに行ってから、くしゃみが増えましたから。そして、勝っているのに止めませんよ。脱衣ポーカーで下半身パンツのロンブル翁」
「まさか魔力の使い方を教えてもらうので、集中力を鍛える為にゲームをするとは思いませんでした」
「脱ぐのは勝利者の選択制にするとスリル満点ですけど、そのぶん優勝したら夜のお店ひと月分僕持ちと、僕謹製流星刀レプリカがお二人には贈呈されるのですから、十分にやる気も集中力も出るでしょう?」
「まだ靴しか脱げてない方に言われても……」
「儂は出来る子儂は出来る子」
「ところでセルフィル様が優勝したらなにが貰えるので」
「ジジイ二人が子供に負けて恥辱に震える裸姿が見れるなんて最高じゃないですか」
イカサマショタ「ふふふふふ」
石爺「くそっ!イカサマしているのにわかんねぇっ!」
ショタ「手元だけ見てもわかりませんよ。全体を見るのです」
選択式脱衣ゲーム、学生の時よくしてたなぁ( ^^)
バルトは混乱の呪文(ショタの所業)を唱えた。
宰相たちは頭痛と胃痛で動けなくなっている!
バルトは仲間が出来たと内心喜んでいる!
宰相たちは呪いの呪文(恨み言)を唱えた。
しかし、ショタには効果が無い!
深淵を覗き込む者は胃痛にさいなまれる。深淵に手を出す者は……(´・ω・`)
長兄はショタの兄で公爵なのでたちが悪いのです(^^;)
真面目話が続くと、筆者の中の雨乞いフィーバータイムがコメディを書けと折れた鍬を刺してきます(;´Д`)
筆者が何を言っているのかわからない方は拙作バカップルをお読みください<(_ _)>
さて、コミックス一巻の発売日までに次回を書きますか!(*´∀`*)ノ
誰か一日を48時間にして、スマホを単語を調べるだけのものにしてほしい(;´Д`)









