国家とショタを困らす個人と協会
遅れた理由。電動アシスト自転車でコケて病院行きレベルの怪我をひと月で自力で治し。たった一年で電動アシスト部分が破損し、ただの自転車になったことにメンタルズタズタでした(T-T)
チェルシーは俺の質問に答えられなかった。
まあ田舎の村娘から奴隷になって道具扱いされていたのだから当然だろう。知識が無ければ想像もつかないのだ。
そこで一度時間を置くことにした。
「すっげー気になっているんじゃねえの。あのチェルシーっていう娘」
「自分の生存した理由がわからないのですから混乱していましたね」
「己の信じていた才能が別物と言われたらさぞかし衝撃を受けるでしょうな」
「僕も彼女の魔法がどういうものかちゃんと特定は出来ていないですから、下手に決めつけるのは出来ませんよ」
今の俺はジジイ二人を連れて城にある元愚王の私室に戻っている最中だ。
「変に自覚してあの場で魔法を使用されたら、僕でも庇えませんし始末しないといけませんでしたよ」
「そのまま処分したほうが良かったのでは?」
「さすがに国にはチェルシーの生存とその理由を報告しないといけませんし、魔法協会だけでなくもれなく貴族からも恨まれそうですからね」
「ああ、魔法使いを全て引き上げるということでしたね」
エイプ子爵はまだチェルシー殺害を諦めていなかったようである。
人の好さそうなノリのいい人と思っていたら、中身は自分の主の為に些細な障害を取り除く冷酷機械……、のようで自分たちの領地に損害を出さないよな? と俺を見定め中のジジイだ。
いや全部なのかなぁ。経験値があるジジイは表情が読めないから面白……いやいや、めんどいな。
「彼女の魔法が解明するまで僕の方で預かります」
辺境伯の傍で仕えるぐらいの人物なので下手な行動はしないだろうが、一応釘を刺す。でも納得は出来ないで不満を持つだろうから理由も話しておこう。
「エイプ子爵は魔法使いはどうやって魔法使いとわかると思いますか」
「それは魔法を使用したからではないですか」
「そうですね。では魔法使いが初めて魔法を発動させたとき、どうやって発動させたと思います?」
「それは呪文を唱え……。ああ違いますな」
エイプ子爵は途中で気づいた。
彼はアリーが回復魔法を使用したのを見ている。
「魔法使いの初めて使う魔法は呪文を唱える必要が無いのですね」
「貴族や豪商なら魔法使いを雇い呪文を覚えることも出来ますけれど、何かの拍子に発動してしまって自分が魔法使いだと気づいたのが大半です」
万単位で調べたわけではないので正確性に欠けるが、この世界では呪文は神様が授けるものではなかった。昔にさんざん調べたのよ。わかったのは魔法使いは先天性の才能を持った者だけがなれる職業だってことだ。
「現在の呪文を唱えての魔法は魔法使いが創り上げた技術です。出力の安定化や、魔法の種類を明確に分けるなど有用な部分もありますけれど、魔法を使用するために呪文は必須ではありません」
「剣術と同じようなものですか、常識が崩壊しますなぁ」
「だいたいが感情を大きく揺さぶられた時、コントロール出来ずに無差別に周囲に発動されるみたいです」
エイプ子爵は呆れた声で呟いた。
だろうね。特別な才能と思われていた魔法が、実は剣を持って振るのと変わらないと言われたらショックを受けるだろう。
でもハイブルク公爵領で貴重なサンプルを使って検証を行った結果。体格、身体操作、感覚的なものに優れていれば、剣術を習わなくても強い人は強いのと魔法使いは同じと結論は出た。
「セルフィル様は説明が長すぎんだよ。ようはあのチェルシーを殺そうとして即死させないと、謎の魔法を死ぬまで無差別に周囲に撒き散らすかもしれないから手を出すなと言いたいんだよ」
「……そこまで長くは話しませんよ」
もう一人のジジイ、ロンブル翁が俺の結論を言ってしまった。
あと最近必要なかったから忘れていた魔法使いの裏話も合わせて話すつもりだったのに!
「保護するのはそういうわけです。明確に何の魔法か判明してから対応しても遅くはないと思いますので」
「セルフィル様は彼女の魔法がなんなのか予想はついておられるのですか?」
「いくつか予想はしていますよ」
チェルシーの話を聞いて何種類か思いついていた。
「その中で大本命のがありますが、正直当たって欲しくないです」
「もし当たっていれば?」
「数秒もあれば周囲を地獄と化すぐらいは出来るかもしれませんね」
当たって欲しくないわー。でもこういう時はだいたい当たりそうな気がするんだよね。
「そのような危険人物のもとに王女様を置いてきてよろしかったのでしょうか?」
「熟睡してチェルシーさんの服を掴んでいたので仕方がありません。でも、自分の信じていた魔法が違うかもしれないと疑惑を持たせられ混乱したまま放置された状況で、置いてきたアリーにさとらせずに魔法を発動出来ますかね」
「ほんとセルフィル様は人の嫌がることをするのに躊躇がないよな」
「要監視の人物にしては緩々な対策じゃないですか」
三人メイドは俺の要望に応えるために様々な技術を趣味で習得している少し奇特な連中だ。その中で俺の影武者も兼任しているアリーは近接格闘と周囲の気配察知に優れている。危険と判断したらのじゃ姫を抱えて避難しろと命令していた。
「明日には彼女も落ち着くでしょうから何の魔法かの検証実験はそれからですね。場所は……、それも今から考えます」
「騎士団の訓練場でよろしいのでは? あそこなら被害は起こらないでしょう」
「訓練場ですか……。いえ秘匿性のある場所にしましょう」
俺はエイプ子爵の提案を却下した。
「魔法会長のデコルにチェルシーさんが生存していた情報を流した連中が王城の中にいますので、処分したのが知られると大揉めになります」
チェルシーの魔法も問題だけど、こちらの方が結構な問題だ。
「デコルは僕を名指しで呼びつけました。ウチのメイドと執事を見張っていた使用人がいたんでしょうね。彼女が誰かわかっていたのは第二王子の反乱の現場も監視していて……。いえ、隠れて見ていた中立の立場をとっていた貴族かもしれません」
炎獄のサルマーンという輩はそこそこ有名な魔法使いらしかったから、貴族で知っていた奴が王城で働く自分の配下の者に調べさせて魔法協会に密告したのだろう。
ハァーと呆れのため息が出た。
「これも、僕が魔法協会に密告した人物を探すのもしないといけないんですよねぇ」
「まあ問題の根幹に関わっておられますからな」
「下手な誰かに任せると、いきなりのタイミングで被害を被ることになるかもな」
「ですよねぇ」
ジジイたちの意見に、もう一度ため息が出てしまう。
モンスターペアレント(魔法協会会長)をおちょくる簡単なお仕事だったはずなのに、面倒くささマックスの事案になってしまった。
「これから今日起きたことを国に上げる報告書をまとめたいと思います。お二人にも手伝ってもらいますよ」
「えー、儂ただの護衛ー」
「護衛も一日の報告はするでしょうが」
「私はお手伝いしますよ。グリエダ様に報告する私情が入ったのもお教えましょうか?」
「教えなくていいです……。夜のお店の部分だけ誤魔化してもらえませんか」
やましいはずはないのに、いかがわしいお店に行ったというのは後ろめたさがあるのはなぜだろうか。
「それよりセルフィル様は国に伝える前にバルト様に事の経過を報告しとけよ。そこを抜かすと揉めるからな」
「うっ。ロンブル翁が代わりに……」
「儂ただの護衛」
「私は外部の者ですので」
うう、ジジイたちが見捨てるの。
「怒られますかねぇ」
「魔法協会にこれから喧嘩を売るようなものですからなぁ」
「儂が聞いたらぶん殴るな」
「そこまではしない人ですよ長兄は」
度々名前を忘れる俺の一番上の兄バルト。
おそらく今回のことを聞いたら深くため息をついて静かに怒るだろう。そして諦めていろいろと対応してくれるのだ。
前世には罵声と責任をなすりつけする上司しかいなかったから、公爵家当主の仕事、国家運営に第二王子の反乱の戦後処理もこなしている長兄に、追加で魔法協会と事を構えるかもしれないと伝えるのは心苦しい。
「報告書を作る前に長兄に話に行きます……」
「その場で書かされそうだな」
「情報の齟齬も無くなりますし良いことではありませんか」
これからは姫様の仕事もそうしますか、と呟かれたのは聞いてないふりする。上司や苦手な人と確認しながらのお仕事はグリエダさんの精神が死にますので止めてください。俺? 前世で耐性スキルを覚えたから死亡しても短時間で復活出来ます。
正座ショタ「うぐうぐ」
休憩中長兄「いいから書け」
休憩中に一緒にいたアリシア「おろおろ」
暑さが年々致死を超えてきます(;´Д`)エアコンの使用時間が具合の悪くなる度合いに直結している筆者には地獄です。去年なんてウォッシュレットの交換中に死にかけたなぁ。気絶してたら心のおっさんの死因に近い死に方でした(。・ω・。)皆様も熱中症にはお気を付けて!
まあ筆者の死因は置いといて
一週間後の7月31日に『ハイブルク家三男は小悪魔ショタですCOMIC一巻』の発売日です!(*´∀`*)ノ
特典付きも発売されるので、熱中症に気をつけながら買ってください!筆者は予約しましたよ十冊!母がネット購入がわからないからあんたがしてと言われて……(´・ω・`)なんか地味に効く羞恥プレイでした。
サイン書こうか?と聞いたら、価値が下がると言われました。原作者とは?
自分が考えたキャラが漫画になっています動いているのは感動です(^^)単行本だけに載っている侍女長が、おっとネタバレはいけませんね。購入した方のお楽しみで(≧∇≦)
ひと月、怪我と暑さと電アシが無くなった自転車に落ち込むのでだらけていましたが、あと二話書いているのでコミックス発売日までに投稿します!
……まあ筆者のことをわかる方は我慢できずにすぐ投稿するのはバレているでしょうが(-ω-;)
ランクインしているのが通知に送られてきています。
この一ヶ月心の支えになっていました。☆を入れてくれた方、ブックマークしてくれた方、いいねしてくれた方、感想を書いてくださった方本当にありがとうございます<(_ _)>今後もランクイン出来るよう頑張っていきますのでご期待を(*´ω`*)









