拾ってきちゃダメって言ってたでしょ!
書いてると目的のものを書くまで辿り着かないあるある(;´Д`)
魔法協会でデコルにある人物の身柄を要求された。
炎獄の魔法使いサルマーン(笑)の奴隷チェルシー。
第二王子の反乱時に炎獄の魔法使いは参戦していて、その奴隷であったチェルシーという人物も一緒にいたらしい。
デコルが土魔法使いでやけにあっさりと退いたのは、本当の目的はこちらでだったのだろうと落ち着いた後ならわかるが、不意を突かれて困惑した俺は、誰かも不明なので持ち帰って調査してから引き渡すことを約束してしまった。
もー負け、大敗北。
把握もしていないのに約束してしまうなんて貴族として、いや前世で社会人としてありえない失敗だ。
帰りは負け犬の匂いを感じたのか蜘蛛柄白タイツ女に鼻で笑われ、フラフラしながら馬車に乗り込む。
わかっているのは名前と身分、後は日曜の朝に爆破される怪人の傍にいたこと。
俺も見ていたけど、その中心部付近にいて助かるのは、ほぼ絶望だと感じるぐらいの爆発だった。つまりデコルの要望しているチェルシーという人物は死んでいるのだ。
グリエダさんが帰って来るまで残り少ない仕事をこなしながら、最近は疎かにしていた前世知識の実験(被験者D&S)をしてゆっくりすごそうとしていた。その暇つぶしの時間が全て、死亡確定者の捜索と魔法協会への対応に追われるので潰れるのに絶望していると、馬車に同乗してたエイプ子爵がふと思い出したかのように顔を上げた。
。
「そういえば私のところに死体の処理をしていたら、生きていた少女がいたと報告がありまたな」
「それですっ!」
それからは大変だった。
まず報告者はグリエダさんと一緒に賊討伐に向かっていておらず。グリエダさんの屋敷まで行って、エイプ子爵に眼精疲労と腰痛になる犠牲を賭して報告書を探してもらい。(婚約者では、まだ他家の機密文書を見せてもらえる権限はない)
見つけた報告書には城の者に渡したと書いてあったので城に戻った。そこで馬車の揺れで悪化した腰痛でエイプ子爵が脱落。
反乱に加担したのだから、牢屋にいるだろうと走って行くがおらず。牢の出入記録を見ても確認は出来なかった。
なので衛兵の詰め所に突入。そこでもう一人のジジイ、ロンブル翁が体力切れで脱落。
詰め所で衛兵たちに聞き込みをすると、アレストの兵士から確かに少女を預かった。が、とある使用人たちが引き取ったらしい。
「こりゃ、あいつらだな」
「ええ、たぶんあいつらです……。僕はエイプ子爵が回復して来るまでここにいますから、呼びに行ってもらえますか。交代でヘルママの護衛についてください」
「変態も?」
「変態もです。許可したのはあいつでしょうし」
「あいつはセルフィル様が大声で呼べば来るんじゃないか。メイドたちも」
「嫌です。本当に来そうで怖いじゃなですか」
回復して追い付いてきたエイプ子爵を背後に置いて衛兵の安物椅子でふんぞり返る。
そして飼い主に呼ばれて大喜びでやって来ました使用人ズ。
「まず正座」
ピッと床を指して正座をさせる。
三人は多少困惑気味に、変態一匹は嬉々として正座。
「城門前で誰か拾いましたよね」
その一言でメイドたちビクゥッと反応した。
はいアウート。
「「「はい……」」」「はいっ!」
怒られると思ってしょげるワンコメイドたち。喜ぶな変態。
使用人たちは一人の女性を保護していた。
意識の戻った彼女は名をチェルシーと伝えたという。
「僕が探していたのはその女性ですね。後で会いに行くとして、どうして助けたんです? 僕の殲滅宣言はグリエダさんの帰還速度を読み間違えたせいで半数近くが生き残りました。だけど、その中で貴方たちが手を差し出すほどの価値の人物がいたとは思えませんが」
敵対者に慈悲を向けるようなメイドたちではない。特に俺が敵と認定したら裏でこっそり暗殺させないタイプだ。
そんな彼女らがそうやすやすと人名救助なんてするはずがない。
「私とカルナが保護しました」
三人は視線でやり取りをして、一番背の高いセイトが手を上げた。
「衛兵がアレスト家の兵士に引き渡された彼女に困っていたので、こちらで引き取りました」
彼女の話す保護した経過は調べた通りのものだった。
「その、あの時点で彼女の服装があまりにもみすぼらしく、第二王子側と判断出来ませんでした。行軍の途中で捕まった貧民街の者かもと思い、被害者として保護して回復したら解放しようとしていました」
「あー、奴隷ですからまともな服装ではありませんでしたか。戦いを行軍パレードと勘違いしていた装飾過多の連中の中では異質に見えますよね」
魔法使いはたいして働きもしないのに金を持っているはずなのに、炎獄の魔法使いとやらは自分の奴隷に相応の服しか与えていなかったらしい。
「うん。それならしょうがありません」
「処罰なさらないので?」
エイプ子爵が聞いてきた。
「魔法協会の件がなければ取るに足らないことですからね。彼女たちの裁量権の範囲内ですよ」
「まあしょうでしょうな」
「あの、魔法協会とは?」
おずおずとカルナが尋ねてきたので、昼間の魔法協会訪問の内容を話す。
「証拠隠滅してきます」
「それよりも協会を消した方が後が面倒にならないわ」
「全員埋めれば……」
「待って待って」
三人が危険発言したので止めた。
「チェルシーという女性が魔法協会関係者と判明したのはつい先ほどです。そこについてはなんの咎めもしません」
本当に? と上目遣いで俺を見てくる三人メイド。お前ら咎めないのわかっててやっているだろう。
そんなにしてほしいのなら侍女長にチクるぞ。俺と姉様と次兄が拾ってきすぎて、拾ってきちゃダメ宣言されているから城で匿ったんだろうし。
「それで今はどこに?」
「王城の使用人用の寮の一室に」
「君たちなら周囲の安全は確保しているでしょう。少しでも敵対の意思を見せたら処理するでしょうし」
「そこは完璧にしております」
いいのかなぁと、呟くエイプ子爵。いいんですよ。国を獲って国盗りを防いだ俺の配下のやることぐらい少しはお目こぼしされるから。
「今から向かいますが。その前に……アレハンドロ」
「はいっ!」
俺の視界の端で自分の番をまだかなまだかなとそわそわ待っていた。主を性的に見ている変態執事に声を掛けると、尻尾があれば千切れんばかりに喜んだ。
「セイトとカルナが保護を決めても、当時の現場で俺の執事のお前が一番上の決定権を持っていたはずだよね。そのチェルシーという女の何が気になったんです?」
呼んだ覚えもないのに三人メイドと一緒に来ていた彼に質問を投げる。
変態執事アレハンドロ。
幼少期の俺を暗殺しに来て忠誠を誓った凄腕の元暗殺者だ。ショタコンだけど滅茶苦茶強く。人の強さをほぼ正確に測れる人物眼に優れていて、ハイブルク公爵家に敵対する者たちを見つけ出していた。
前世でブラック企業に勤めていた俺に誰かを測れるような眼はないので、かなり必須な変態執事なのだ。
長年の付き合いでわかっているけど、俺の為にならないと判断したら女子供でも切り捨てる変態が匿うのを許可するなんて気になるよね。
「そうですね……」
おうふ。
変態執事の勘など聞かなければよかった。後ろに控えているエイプ子爵を見るのが怖い。だって変な圧を肌で感じるの。
マジでチェルシーって何者なの?
三人メイド「「「お母さ~ん」」」
オカンショタ「ダメ!元の場所に置いてきなさい!」
子供の頃、猫を拾ってきていた筆者です。母は困っていただろうなと、大人になってようやくわかりました(^^;)
そういえば、書き物を始めた頃にウチの歴代猫のことを書いたな~(*´ω`*)
たぶん書くことが無い裏設定の一部
アレハンドロは転生者です。一切記憶はありません。
前世は戦国の世のある一族の分家の一人で、本家を超える程の才能を持った武芸百般な人。本家スキーになる分家な筈なのにならないまま亡くなる。
転生して紆余曲折あってショタという仕えがいのある主を得た。ショタより今世をエンジョイしている。記憶は無いけど。
PCがやたら遅いとイライラしてたら、CPUが十分の一しか動いていなかった(;´Д`)
解決したらめっちゃ速い(*´∀`*)ノ
前の持ち主はそのせいで売ったんだろうな……(-ω-;)









