嘘に真実を混ぜた上にアリバイを乗せ
最初のサブタイ【至高存在デコルww】でした(・∀・)
初めてwwを使用してドキドキの筆者です。
生まれ落ちた瞬間から自分は至高の存在だった。
だから劣っていた親は妬み養育を放棄して教会に捨てた。その教会も劣る者ばかりで自分を疎むばかり。
ある日、ある程度成長して己だけで生きていけると判断した自分は、当たり前のように魔法を使用して疎んだ連中に制裁を加え、魔法協会に行列で迎えに来させた。
それからは協会最速の速度で会長にまで上り詰めた。
会長は魔法使いを自由に扱える存在である。
それがエルセレウム王国魔法協会会長デコルが娼館に行くたびにする自慢話だった。
「話はわかっているな。さっさと寄こせ」
そんなありえない自慢話をするほど驕っていたデコルは一言で無駄な時間を終わらせようとした。
「寄こせ、とは?」
彼の目の前に立つ少年、セルフィル=ハイブルクは可愛らしく小首を傾げた。背後にロンブル翁とエイプ子爵が立つ。
セルフィルの何もわかっていない態度に舌打ちするデコル。
彼にとって呼び出した時点で、自分の目的を調べて叶えるのは当然だと考えていたのだ。
「魔法協会から王城に送られて来た手紙に、僕を協会に向かわせろというようなことが記されていて派遣されました。国からの要請なので一応使者にはなりますが、その目的は魔法協会が何を要望しているか聞きに参上したのが現状なのです。どうか察せられない未熟者に、国の魔法使いの撤退という無体をするのか、理由をお聞かせ願えませんでしょうか」
「フンッ。国はそんなことも理解できずにお前を寄こしたのか」
セルフィルの自分側の不備を謝罪している様で、お前が伝えてないのだから当然だろう馬鹿野郎と暗に言っているのに、デコルは気づかない。
「土魔法使いのメイドだ」
「土魔法使い?」
「第二王子の反乱時に大規模な土を詠唱もせずに盛り上げた者だ。知らないとは言わせないぞ、その時お前の傍で行使したはずだ」
「反乱時……土、詠唱もせず……」
「そのメイドを寄こせ。それだけで国から魔法使いを引き上げさせるのは止めてやろう」
ブツブツとデコルの言葉を呟くセルフィルに、誰もが了承せざるを得ない条件を叩きつける。
エルセレウム王国周辺の地域では魔法使いは最強の戦力とみなされていた。大半の魔法使いは協会に入って強力な後ろ盾としてから、国や貴族などに雇われている。なので後ろ盾の協会の命令には魔法使いは従うことになる。
横暴を遥かに超える暴走行為だが、出来ないとは断定出来ないからこそ、セルフィルは魔法協会に出向くことになったのだ。
身体強化の魔力使いが普通の人の百人に一人現れるとしたら、魔法使いはその魔力使いの百人に一人という割合で生まれる。
つまり魔法使いは国にそう数はいないのだ。しかも最近、小悪魔なショタと敵対して覇王様の一撃によって、多くの魔法使いが死亡していた。
協会としては規模は大きくても、少ない魔法使いを撤退させるぐらいはそう難しくなかった。
「土魔法使いを差し出せば引き上げを停止してくれるのですか?」
「そうだ」
おずおずと聞いてきたセルフィルに、そのくらいで済むのだと鷹揚と頷くデコル。
「では無理です」
「は?」
だがセルフィルの返答に呆気にとられた。
理解が追い付てくると顔を真っ赤にして机に拳を叩き下ろす。
「何を言っているのかわかっているのか」
「本当に申し訳ございません。デコル会長様のご期待に添えるようにしたいのですが……」
「ならそいつを寄こせば済むことだろうがっ!」
「ですがデコル様が所望する者は魔法使いではないのです」
「そんな訳あるかぁーっ!」
もちろん嘘だ。
メイドのカルナは土魔法使いである。今はのじゃ姫リリィにねだられて、王族が許可した者しか入れない庭園の一部を小山にしている最中だ。
「私の下にはしっかりとした情報が入ってきたのだ。お前が自分のメイドが無詠唱の土魔法使いと国に報告したとなっ!」
セルフィルは少し驚くが、すぐに申し訳ない顔に戻る。
「確かにそう報告しました。ですがそれは虚偽の報告でした」
「虚偽だと?」
「はい、あの時兵士の中にまぎれて魔法を使っていただいた魔法使いの正体を隠すためにです。御身分上、国の揉め事に関わっていると知られると大変困る方でして、私のメイドに魔法を使っているふりをさせていたのです」
もちろん嘘である。
国の上層部にメイドのカルナが土魔法使いというのは報告した。ただ無詠唱をいい事に、使用している判断が困難な伝心魔法使いのセイトのことは報告していない。
だが、その言葉にデコルは少し納得した。
偶然に無詠唱のメイドの情報を手に入れ、魔法の秘奥が自分の手に入る手段が一つ増えたと歓喜していた。しかし、秘奥がそう簡単に手に入るはずがないと考えたのである。
「まぎれて魔法使いがいただと」
「いました」
「誰だそいつは」
「その御方の正体は……」
「言え。あの場に魔法協会会長の私が知らない魔法使いがいるのは、協会に反逆するのも同然なんだぞ」
怒気を纏うデコル。デコルは先ほどから危ない発言を、小悪魔の前で連発していた。自爆レベル過ぎて小悪魔も巻き込むつもりかと警戒するレベルだ。
「壁の魔法使いモージソス様です……」
「!?」
セルフィルが小声で発した名前に反応するデコル。
「そ、それは本当なのか……? あのモージソス様なのか?」
「本当です。エルセレウム王国の三つ隣の国の魔法使いモージソス様です」
壁の魔法使いモージソス。
平野に一晩で高い防壁を創り上げたことで有名な大魔法使いであった。そしてここ数年で短縮詠唱を使いこなし始めた、実力で出世街道を走る人物である。
「ここにいるロンブル翁が過去に親交を深めていたようで、たまたまエルセレウム王国に用があられた時に翁に会いに来られたのです」
「あいつは戦場で出会って友になりましてな。主に酒で」
ロンブル翁が話に乗る。それは事実酒飲み仲間で、いろんな種類の酒の普及にも私財を投資してくれる酒と魔法のマニアであった。
しかし後半の会いに来たは全くの嘘である。
ちなみにセルフィルの文通仲間の一人である。ロンブル翁の伝手で手紙を送り、今では酒の醸造話でしか連絡をとっていない。
「ロンブル翁だと? あの石投げの上官殺しか……」
ただ、ハイブルク公爵家に来るまでに作り上げたロンブル翁の功績と悪名に包まれて、嘘は真実の中に混ざりこんだ。
「そして、当家に逗留されていた時に第二王子の反乱が起こり。宿泊費代わりにと手助けしてくれたのです」
「そんな話は私の下に来ていないぞ……」
デコルは他国の大魔法使いと呼ばれる人物が国にいて、会長の自分に会いに来なかったことに不満を露わにした。
「私事で友に会いに来て、他国の内乱に手を貸したので公式に残すことは出来ないとおっしゃられておりました。すでに出国もなされております」
「……」
セルフィルの嘘を見抜こうとするが見抜けない。なにせ相手は前世で、社会に揉まれてきた上司や取引先を上っ面な言葉で気分よくさせていた猛者なのだ。
「わかった。第二王子の反乱時にはモージソス殿がいて、防壁を作りお前らの手助けをしていたのだな」
「はい」
「モージソス殿に私事で手紙を送り確認しても構わないな?」
「構いません」
「……わかったメイドはいらん」
デコルは折れた。
他国にいるモージソスに確認すると言っても、セルフィルが動じなかったのに嘘はないと判断したのだ。
その前にセルフィルはハイブルク公爵家自慢の手旗高速通信でモージソスに事前に話を伝えておくつもりなのを、デコルは知らない。
「では魔法使いの引き上げは」
「ああ、こちらの勘違いだ。協会に属さず野良の魔法使いが、理不尽に貴族の奴隷扱いされているので保護しなければと先走ってしまったのだ。許せ」
「そうでしたか。モージソス様を秘密にするために行った行為が、会長様の慈悲深い御心をかき乱すことに申し訳ございませんでした」
デコルは先ほどいっていたこととは全く違うことを言い出した。
それにセルフィルは指摘もせず。それに乗るように話を繋げる。
よくある上の地位が急にごまかしてこの話は終わりに向かおうとすると下が従う、ありがちな光景だ。
「御迷惑をおかけしたお詫びの品は後でお送りします。お酒がお好きと聞きましたので年代物の良いものを」
「ほう」
好みは娼館で聞いていたので、すぐにデコルは機嫌がよくなる。
お酒と聞いて反応する背後のジジイは、セルフィルは無視した。セルフィルの個人の持ち出しなのに、自分が飲める分と勘違いしているジジイである。
「それではご用件は誤解があり、それも解決したということでそろそろ失礼させていただきます」
セルフィルは少し気が緩んでいた。
デコルの要求も予測の範囲内で強引な手段を使わなくて済んだし、発生した問題ごとはあるけれど報告すればいいぐらいなものしかなかった。
頭頂部にかかる太陽が翳るまで笑ってはいけないのが一番精神消耗が激しかったのは、セルフィルだけでなくジジイ二人もだった。
「待て」
そんなお仕事終わりー♪ と内心で心のオッサンがはしゃぐぐらい気が抜けてしまうタイミングで声を掛けられると、真面目モードに戻るのに数秒かかった。
「もう一つ話がある。炎獄のサルマーンの奴隷チェルシーを返還してもらおうか」
「……誰?」
詐欺師ショタ「人を騙すには信じさせる他者が必要です」
ダッシュ「いつも騙されるのですが」
ショタ「騙してはいません。ダッシュ君はおちょくっているだけです」
なんか新キャラが出る感じですが、お名前だけです。
短縮魔法の権威のお人、まあショタの文通相手なのでヒントを貰いまくって完成させた人です(^^;)
たかが一国の支部の会長のデコルでは、手紙を読んでもらえるかは微妙なところです。
さて、帰るまでが遠足を忘れて油断したショタ。チェルシーとは誰だ!?
二章の後半を読み直すといますよ。その頃は名前はありませんでしたが(・ω・)
しっかし、魔法使いは中二病だなー。









