ショタはよく困らせられる
短いですが。続きも書くと投稿するのが伸びそうなので。
人間がある程度文明を創って、ある程度の規模の都市を造ると、必ずと言っていいほど作るものがある。
「ウチもセイレム公爵のところも一緒ですね。討伐に寄子の貴族は独立性を訴えて兵を出さなかったのが大半みたいです」
「アレストは上に従う気風なのでそういうはありませんが、公爵家ともなると下も様々なんでしょうね」
「勝利した上が言っても拒否するのは、ほぼ敵対すると表明しているようなものなんですが」
「中立は力を持つ者が出来る特権でしょうに」
「なので僕の兄もセイレム公爵も宰相たちも、大混雑中の国政をこなしながら自分たちの派閥を整理処分もしないといけなくて」
「どこも忙しいですな」
「ええ本当に」
「オッサンの世間話みたいな会話しないではよ行こうや」
エイプ子爵と向かう途中で話してみると仕事関係で苦労しているようで話が合う。なのにウキウキと俺たちを先んじて歩くロンブル翁が早く行こうぜと催促してくる。
「若いですな」
「一番の年寄りなはずなんですけど、僕が生まれるより前に五十から先は数えていないそうですよ」
「私より上ですなぁ」
そんなお花畑のロンブル翁に引き連れられて歩いているのは、色街 遊郭街、歓楽街と呼ばれ、王都の一画をそれらの店で占領した女の不夜城。
右を見ても左を見ても一日中開店状態で男を誘うようなお店が開いていた。緊張した青年がお姉さんの胸元に惹かれて入店したり、商人らしきオッサンが両腕に女の子を抱えていたり、小走りで走っていく男、お爺ちゃんが壁際に座り女性たちを眺めている。
「あら? ここは僕ちゃんのような子供が来る場所じゃないわよ」
「御心配なく。こう見えて通える年齢に達していますので」
「「「え?」」」
呼び込み中なのか肢体がくっきりとわかるドレス着た女性が注意してくれるのを丁重にお断りする。
異世界の成人年齢はお金を持っていれば十代前半でもお酒を飲めるし、そういうお店に行けるザル設定だ。
「渋いおじさまね。一杯奢っちゃうからお店に寄りません?」
「ははは、お誘いは嬉しいですが、今日は付き添いで来ていましてね。次寄らせていた時には誘っていただいたお礼にこちらが奢らさせていただきますよ」
「「「あらぁ」」」
ニコリと微笑み返すロマンスグレーエイプ子爵に夜のお店の女性たち頬を染め。
「あっ! ロンちゃんよっ!」
「ようっ」
「十日前に飲んだ分を支払いなさいよっ!」
「私のところは三日前よっ!」
「「「払いなさいよっ!」」」
「はははっ、今日は仕事の最中だからまた今度なっ!」
通り過ぎるたびにおねーちゃんたちに督促のお言葉と物を投げつけられるロンブル翁
三者三様の対応をされながら女性たちと欲に塗れた男たちで溢れたメインロードを歩く。
前世のそういう場所もなんちゃって中世のこの場所も文明の差はあれど、人の三大欲求の一つは時代も世界を越えても雰囲気は大して変わらないらしい。
「さてここが娼館区画最高ランク娼館『華の蝶』だっ!」
投げつけられた木のコップを帽子にしたロンブル翁がジャジャーンと紹介した建物は区画で最も大きい。質のいい石を使用した壁に、扉は細かな細工が施されて高級感が漂う。周囲の娼館とは数段格の違いを見せつけていた。
俺たちが近づくと扉の両脇に立つ守衛の男たちが開けてくれる。
よく物語で何の確認もせずに通さないおバカがいるけれど、御家や店の顔である門扉をそんな連中に任せない。来る者の素性をある程度記憶に留めて、上に報告するか己で判断処理出来る選ばれた者たちなのだ。
「おい、あれロンブル翁だろ。入店させていいのか」
「お前はまだ立って数回だったな。いいんだよあの中年は、今日は品の良いお連れもいるから大丈夫だ」
どうもロンブル翁はこの区画のブラックリストに入りかけているようだ。お姉様たちに物を投げつけられてるし、ブラックリスト入りになったら給料減額するよう長兄に直訴すんぞ。
ジジイへの対応を考えながら入店すると。
「お待ちしておりました。セルフィル様」
「「「いらっしゃいませ」」」
「「「うわお」」」
貴族の女性とは違う男の視線を集める煽情的なドレスを着た鮮やかな
華たちが王城よりも高級そうなカーペットに跪いて首を垂れていた。
性欲過多のハーレム大好きオッサンでもないかぎり美しさに押されちゃう光景だ。
「今日ここ『華の蝶』に来られた理由はわかっております」
美しい華の先頭で一際華やかな女性が顔を上げ、一音一音の旋律で男を蕩けさせる言葉を紡ぐ。
「こんな場末にもアレスト女辺境伯様と婚約された話は流れてきております」
彼女はスッと手で自分の後ろを指した。指先まで洗練されたその動きに華が咲くように顔を上げる。
「どうか初夜の前にお試しを。こちららは望んで褥を共にしたいと申した者たちです」
「全然目的違いますしっ! 婚約者の家臣がいるのに何てことを勧めているんですかーっ!」
「しかし、初めて同士だと事故がおこりますよ?」
ニッコリ笑顔の先頭女性、華の蝶の女主人メリダ。
てめー。最近来なかったからってからかっていやがるな!
ウキウキ翁「ウキウキウッキウキ♪」
ショタ「夜の街にスキップを踏んで行くジジイは前世でもよく見たなぁ」
ショタのあんまり行きたくない場所の一つが娼館街です。この世界では成人年齢はガバガバで十代前半でも貴族子息は通う者もいます。ショタは未成年はダメ!独り身で二十歳を過ぎたら飲みぐらいには行こうかなと考えていました。
ロンブル翁は娼館街区画で人気もありますが、ツケの量でも有名です(^^;)
ちなみに第二王子マロッドの恋人の一人は、華の蝶で人気のあった娘です。ひとときの恋だったと付いては行きませんでした。









