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嫌なことは後回しにしたいよね。

無意識で逆張りする人っていますよね。

 ハイブルク公爵の長兄の登場で、【統合中枢詰め込み部屋】での一幕はなんとか収まった。


「やり遂げた感を出しているが、まだ終わっていないからな」

「ですよねー」


 むさい中年と爺たちの部屋から解放されても、長兄からは逃れることは出来なかった。いや話し合わないといけないので逃げないけど。

 王城でハイブルク公爵家が確保している部屋に集まったのは、長兄、俺、グリエダさん、ダッシュ君。

 そして、なぜか長兄の婚約者アリシア=セイレム公爵令嬢さん。

 俺とグリエダさん、長兄とその婚約者のアリシアさんでソファ二つに着席した。もちろんダッシュ君は扉方向で直立で立っている。地位の差は如何ともし難いのだ。

 どうしてダッシュ君がいるのか、それは彼に長兄が【統合中枢詰め込み部屋】にいたか確認していないと答えたので、呼びに行ってもらった。あきらかに長兄がいないタイミングで宰相が俺を呼んだから保険としてだ。

 俺の上司はハイブルク家当主である公爵の長兄である。俺が断れない件でも長兄なら断れると算段したのだ。

 なのにイタズラ常連の子供の謝罪しに来た親みたいに登場されたのは大変遺憾であった。ダッシュ君にどう伝えたのか聞いたけれど黙秘したので、公爵女辺境伯公爵令嬢公爵末っ子の真面目なお話のこの場に参加させたのである。いつも宰相と愉快な大臣たちといるから慣れている? いやいや、小市民は自分より少しでも上の地位には緊張するのです。


「まあ魔法協会の反応がセルフィル、お前次第で対応策が変わるのがなんともなぁ」

「僕だって大変不満ですよ」


 宰相から魔法協会へ俺が向かうのを長兄は許可した。

 売られたのではない。どうせ行くつもりだったし。それに長兄を挟めば国はハイブルク公爵家に借りが出来たことがはっきりとするのだ。俺が直接受けたのなら『彼が国の為に引き受けてくれた』個人で受けてくれたのだから御家は関係ないよね? と言い逃れ出来る。物凄く苦虫を潰した顔の宰相が長兄に承諾してもらう姿はメシウマだったね。


「あの、本当にセルフィル君を魔法協会に行かせるのでしょうか」


 長兄の婚約者アリシアさんが不安そうに聞いてきた。

 彼女は元になった第一王子に婚約破棄されて、長兄の婚約者となった悪役にされかけた公爵令嬢だ。可憐な美少女だけど芯のある女性なんだけど、最近は俺が長兄落としの為にノリで渡したメイド服姿でおられることが多い。

 今は私服のドレスで、義弟になるショタを心配してくれる慈悲のお言葉をくださった。あんまり俺のことを心配くれる人いないのよ(泣)


「大丈夫だよ。敵対したと判断しないかぎりこいつは不快に思わせるぐらいしかしない」

「あぁ、それなら大丈夫ですね」

「グリエダさん、酷いと思いませんかこの二人」

「王に恨まれ、王を蹴落とし、王の派閥に止めを刺した件があるから否定はできないかな」


 ブルータスお前もかな気分ですよ女性お二人さん。

 ……まあ悪意があっても実力行使でもされなければ、心に傷(トラウマ)を植え付けるくらいです。

 ダッシュ君はこちらをデスヨネーな感じで見るな。


「私が戻ってくるまで協会には行ってはいけないよ」

「……もの凄く幼児扱いしてますね?」


 真面目なお話をするのでソファーに隣に座っているグリエダさんが、子供にお留守番させるような言い方をしてきた。(宰相たちの時は俺が膝に乗っていないと覇王様は手を出しかねなかったと、後付け名目。単純に二人分椅子が無かったからだ。そうですよねグリエダさん)


「そのことで父がグリエダ様にご迷惑をおかけして申し訳ございません」

 アリシアさんがグリエダさんに頭を下げた。


「君が頭を下げる必要は無い」

「そうそう、あれもこれも全部国の上層部の見通しが悪かっただけです」


 長兄と宰相との話し合いで俺の魔法協会出向とは別に、もう一つ案件をグリエダさん、アレスト女辺境伯に任せてきた。


「まさか第二王子の王位簒奪時の貴族の身内が領地に逃亡せずに、王都近辺で野盗になっているとは思いもしませんでした」


 第二王子マロッドは王位簒奪のふりをして、愚王派を一掃しようと画策していた。それに気づいた俺はその茶番劇に付き合って、被害が最小限に抑えて殲滅しようとした。


「法衣貴族と生まれた時から王都暮らしの領地持ち貴族たちは、田舎に落ち延びるなんて耐えられなかったのだろう。しょうがないことだよ」


 グリエダさんが慰めてくれるけど、長兄はそっと目を反らした。

 愚王派の殲滅がとある覇王様とのじゃ姫のせいで大量に捕虜が出てしまい、その家族に回す兵が取れずに逃がしてしまったというのが黙殺された真実である。俺も国の上層部も予想出来なかった。半日かかる距離を一時間とかからずに走る人馬がいるなんて予想出来るはずない。

 結果、予定より大幅に増加した野盗(元貴族)に騎士団の対応キャパを超えてしまった。そして自分たちの責任と超えてしまって被害に遭った民を救おうと私兵を率いて野盗討伐に向かったのがアリシアさんの父、セイレム公爵その人であった。


「父もそれなりの年齢なので気を付けるように言っていたのですが」

 アリシアさんはため息をついた。

 昭和男前俳優のセイレム公爵は、愚王を見切って御国の為に頑張ろうと張り切った。張り切って腰がぎっくりした。

 たぶん愚王で落ち込み、無限書類に絶望し、第一王女を短時間で長距離輸送した上で、野盗討伐はオッサンの腰に会心の激痛を与えたのである。


「あれは自分はまだ若い。まだイケてる。と考えたオッサンを絶望に落とす程の激痛を与えてきますから、胃薬の研究の合間に作った痛み止めがありますのでお渡ししてもらえますか」

「私のところの爺たちも『若い姫様にはこの痛みがわからないんじゃっ!』と号泣されたことがあるね。ところでしみじみと言っているセルフィルはまだ若いだろうになったのかい」


 はい地獄でした

 心のオッサンが前世時代にツルッと滑って落とした納豆飯が入ったどんぶりが奇跡的にこぼれずに着地したのを拾おうと屈んだときに、ピキッと。

 その激痛たるや、目の前のトイレの扉が絶望するほどの遠きアヴァロンに見えるのである。ぎっくり腰を笑えるのはぎっくり腰をした奴だけだ。 

 そんなわけでセイレム公爵は道端に落ちている瀕死の虫状態でも討伐に向かおうとして悪化。現在は自宅で横になったまま書類にサインを書くお仕事に従事している。(泣)

 トップが不在のセイレム公爵兵たちに動揺が走った。国最大派閥の公爵の兵ならそれでも討伐出来ようが、彼らの損害が大きくなるのはセイレム公爵も国も本意ではなかった。


「セイレム公爵は私の領地に僅かに接する箇所にある険しい道から物資を輸送してくれていたからね。恩には恩を返すのがアレスト家一門の総意だよ。なに得意な武力を使うだけだ」


 セイレム公爵が抜けた分をどうしようと悩んでいた宰相たち。思い出したのは今日も元気に王都にいる騎士団を壊滅判定している覇王グリエダさんと愉快な爺さんたちであった。

 宰相が野盗討伐依頼をしたとき断るかなと思っていたら、あっさり承諾した理由はセイレム公爵の貴族としての義務を遂行した結果だったようだ。

 今度、腰肩目頭皮に効くセットを持ってお見舞いに行こう。俺はまともで苦労人には優しいのだ。

 そして受けたグリエダさんは長兄と結託してアレスト辺境伯領への物資を一割増やさせて、そのほとんどをハイブルクかセイレムから購入することを確約させた。


「まあ十日ほどの周辺掃除だ。そんなに手間ではないよ」

「十日・・・・・・。父はひと月以上かかると」

「それがこの国では普通だ。セイレムの兵の運用に不安を覚えなくていい」


 うーん、覇王様だけでなくその配下のヒャッハー! にあたる人たちもチート級なのかアレスト辺境伯家は。


「ん? どうしたのかな、なにこいつら話しているんだという目をしているダッシュ君」

「してませんっ!」


 ふとジトジトヌメヌメした性格の視線を感じがして見ると部屋のいる四人に完全に忘れられていたダッシュ君だった。

 何もせずに立ったままは地味につらいよね。


「よし、何か発言していいよダッシュ君」

「え、いいです」


 やだこの子即答ですよ。


「何か話せダッシュ。しばらくは実務はしたくないし宰相の下に戻りたくないから会話の始まりになるものが欲しい」


 でた上司(公爵)から部下(下っ端)への無茶ぶり。

 グリエダさんへ支払う報酬の予算を現在進行形で捻出している【統合中枢詰め込み部屋】に、長兄は少しでも戻る時を遅らせたいようだ。

 そうじゃなくても、この後は公爵二家と辺境伯とショタでいろいろと話を詰めないといけないからね。

 グリエダさんもアリシアさんもダッシュ君の存在を認識したようで、何を話すか興味のある視線を向けている。

 面倒な事は後にしたいのは人類皆同じなのだ。


「今なら何でも話してあげますよ。つい最近とある筋から手に入れた恋文を詩集にしようとしているのですが、その著者名とか」

「それ知ってます」

「まぁ、詩集にするぐらいですから素晴らしい恋文なのですか?」

「大変素晴らしい(面白い)ですね。情感がゾワゾワします。あと一人とは言ってないからね」


 アリシアさんは興味津々、グリエダさんは興味ゼロ、長兄は出版を阻止して恩を売るか同情して隠滅するか悩んでいる。


「・・・・・・では」


 何か言うまで四人の視線が自分から外れないと悟ったダッシュ君。


「どうして皆様は魔法協会を会話から外そうとしているのですか?」

「「「「あー」」」


 思えば出会った時に逃げ出したせいで、俺に興味を持たれたダッシュ君。やってはいけないのやってしまうから、彼は微妙に不幸体質なのかもしれない。


時代劇好きショタ「勧善懲悪が大好きです。渋いオッサン格好いい」

ダッシュ「でも宰相様を弄りますよね」

ショタ「宰相は小狡いことを考えてそうで脇役にしか見えません」


最近ずっとショタを装備している覇王様ですが、辺境伯の自分も忘れて……たぶんいません(^^;)

常時何をしでかすかわからない子猫みたいで、心配可愛い期間で離れたくなかったのでしょう(*´ω`*)


アーマー○ーンで一巻が無料中です。時々覗いてランキングが5位!?と驚いたら無料タイトルの中で、というこれは喜んでいいのかわかりませんでした(´・ω・`)


最近の悩み

コミカライズされて初めてショタと覇王様がBLに見えると気づいた(つд`)

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【コミカライズ一巻も発売するよ!】 【ハイブルク家三男は小悪魔ショタです1~3巻、コミックス1巻絶賛発売中!】 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵
― 新着の感想 ―
腰ではないが、高校の時に自転車でコケて脱臼。 買ってもらったばかりのマウンテンバイク、現場に放置するのは論外だったので家まで無理して乗って帰ったけど地獄だった……
なんかアリシアさんの服装が冒頭ではメイド姿になっていて途中で私服のドレスになっているようなのですが皆さんの前で着替えたのですか?
ぎっくり腰は無いけど、出先で右足を捻挫して保険証が家にあるので300キロ運転して帰ったなぁ・・・ ブレーキがヒヤヒヤしたよw 三巻の表紙がのじゃ姫の将来を表してる気がする
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