ざまぁ♪
本日二回目の投稿です。読まれてない方は前話からどうぞm(_ _)m
ざまぁ「ふっ、ようやく私の出番がやって来たか!」
「~♪」
マロッドは機嫌よく鼻歌を歌っていた。それは彼が愛する乳母だったヒラリス侯爵夫人が教えてくれた子守唄だ。
「これで良かったのですよね母様」
妹は母様母様と呼んでいたが、彼は気恥ずかしさで一度も呼べなかった。一度だけ言ってもいいだろうと思ったのだ。
復讐は遂げられなかった。でも復讐相手の片方の血は王になれないように最低限の事は達成できた。
不満はあるけど達成感はある。
あとは反逆者として祖父のランドリク伯爵とその一味と共に処刑を待つだけだった。
「誰だい?」
なのにちゃんとした部屋とはいえ貴賓用の牢の扉がノックされた。
「君はセルフィル君の配下の者だね」
返事も無く開いた扉から現れたのは褐色の肌を持つアレハンドロだった。
「ついて来い」
一言だけマロッドに声を掛けて廊下を歩きだし姿が見えなくなるアレハンドロ。
扉が開きっぱなしでどうすればいいのかわからないマロッドは少し経ってから、アレハンドロを追う。
幸いにしてアレハンドロは待っていてくれた。マロッドが傍まで来ると歩き始める。
どこに行くのか? 何のために自分を出したのか? 質問してもアレハンドロは答えず黙々と前を歩くのでマロッドも沈黙してついて行くだけになった。
「ここだ」
そこそこ歩いてアレハンドロはある部屋の前で止まった。
「ここは……」
その部屋が誰の居室かマロッド知っていた。
「迎えに来たときが終わりだ。いられる時間はギリギリまで稼いでやる」
それだけ言って褐色の執事は音も立てずに歩いて廊下の先に消えていった。
マロッドは言葉が足らな過ぎて理解が追いつかない。
それでも何となく扉をノックする。
「入りなさい。この部屋には今は二人しかいません」
厳しく冷たく聞こえる声がマロッドの入室を許可してくれた。
「失礼します」
彼は扉を開き、自分には危害を加える気はないとゆっくりと入り扉を閉めてその場に跪いた。
「立ちなさい」
「はっ」
許可が出たので立つ。部屋の中がマロッドの目に入る。
国の女性の頂点の部屋にしては簡素に抑えられた寝室、その中心にあるベッドの上に二人がいた。
一人はベッドに腰かけている王妃ジョデリア。もう一人はベッドの中央で寝ている第二王女リリアーヌだ。
「起こすことはなりません。それが私の条件です」
「……ご配慮ありがとうございますっ」
マロッドは頭を下げて感謝するしか出来なかった。
一度も会わずにいるつもりだった。会っても敵同士で、自分には死ぬ未来しかなくて憎まれることで彼女の心の傷を小さくするしか出来なかった。
逸る心を抑え、マロッドはゆっくりゆっくりと近づいていく。
「セルフィル=ハイブルクに感謝しなさい。今回の功績の殆どを今城で行われることに対して目を瞑る為に使ったのです」
「あぁ……」
あの小さな身体で大きな障壁となった彼が妹と逢える時間を作ってくれたことに、感謝が口から少し漏れ出た。
国へ反逆したマロッドが未来の女王に逢うなんて王妃が許しても、それ以外の誰もが許さないだろう。
先ほどセルフィル君の使用人は時間を稼ぐと言った。
逃げる貴族達を丁寧に一人残さず殺していた彼なら、誰も気づかない時間を作れるだろう。
だから少しでもこの時間をマロッドは嚙み締めるつもりになった。
「はは、リリィは寝相がわるいなぁ」
「うみゅ~」
ずっとリリィに触れていただろう王妃の反対側にマロッドが座ると、その振動が伝わったのか、うるさいと言わんばかりに腕で何かを払う。
マロッドは恐る恐る手を伸ばしてリリィの頭に置いた。
リリィは不愉快なのか眉間に皺が寄る。
「可愛いなぁ。小さい頃のオーレッタも同じようにすると眉間に皺が寄ったんだ。でも撫でるのを止めると叩いたり蹴ったりしてきたんだよ」
触れることを諦めていた末の妹の髪を撫でて慈しみながら、マロッドはもう一人の妹の事を話す。
「オーレッタは反対していたんだ。でも僕はどうしてもやりたくてさ、ダメダメな兄だよね。いつか逢えたら怒らないであげてね」
第一王女オーレッタがアガタ公爵と共に公爵領地に逃げ込むように唆したけれど、マロッドはアガタ公爵に返り咲く為の道具として拉致同然に彼女は攫われたと、彼女達が王都を出た後に情報を流す。
心優しい彼の妹は一緒に死ぬ覚悟だったようだが、そこまで兄として落ちたくないマロッドの我が儘だった。
「……はぁ」
「? 何か気に障ることを言ったでしょうか」
感傷に浸っているマロッドを見て呆れたため息を吐いた王妃。
彼女はサイドテーブルに置いてあった紙を取る。
「貴方が第一王女を思い出に浸るように話したら渡してくださいとお願いされていたのよ」
んっ! と嫌な物を早く渡したいと言わんばかりに突き出された紙をマロッドは受け取り開いた。
【これを見た貴方には幸福が訪れます!】
マロッドは宗教にのめり込んでいた女性がこんな感じだったなと思い出した。
【まあ冗談は置いといて、コンニチワボクセルフィルダヨ。
事前に書いていたので途中の誤差はあるでしょうが無事妹には会えたでしょうかマロッド君。泣いた? 泣いたよね? こう感動の再会とか年を取ると涙もろくなるよね】
まだ自分もセルフィル君も十代だよ? と心の中でツッコミを入れるマロッド。
【そんなマロッド君に追加のプレゼントを用意しました。
ただ、そのプレゼントはいつ届くかちょっとわかりませんので、王妃様に配達されてマロッド君が第一王女オーレッタちゃんの事を感傷に浸って格好良く言ったら、この紙を渡すようにお願いしています。つまり読んだ時点でプレゼントはすぐそばまで来ていることになりますね。
感謝してくださいよ。救出したら全速力で城に届けてもらうためにかなり無茶をしてもらっているんです。おかげでセイレム公爵への貸しが無くなったんですから、貴方に貸し一つですからね】
コンコンと小さく扉をノックする音が聞こえてきた。
【もし泣いてなくて、プレゼントを見て泣いたら認めてくださいね】
マロッドは自分の敗北を認めた。
ああ、ああ、だってこんな幸せな時間をプレゼントしてもらえるなんて、嬉しくて泣くしかない。
「……お兄様?」
【だって貴方の望んでない敗北なんですから。ざまあみろっ!】
でも最後だけ何て書いてあるのか落ちた涙で滲んで読めなかったマロッドだった。
ざまぁ「違う違うんだぁ!不幸になってこそのざまぁなんだぁ!」
ショタは覇王様の攻撃を防御している最中なので後書きの出番はありません。
心が救われるざまぁもあっていいと思うのですよ(。・ω・。)
ちなみにショタはマロッドの思い通りにいかなくて大満足です(≧∀≦)
翌日、城内では無数の気絶者が……。
そして頑張ってオーレッタを連れて来て疲労困憊のセイレム公爵も巻き込まれ、廊下で変わり果てた姿で……( ノω-、)(ただの気絶です)
いやー冷静に見るとマロッドはきつい人生を送ってますよね(;・д・)
愚王と側妃の子供というだけで生まれたときから嫌われ者のデバフ付きって……。
さあ気分を上げていきますよ!
次回はエピローグ!
誰かが筆者の水色の脳に囁くのです。上手くボケろと……!はっ!?その声は屠藻彌……(・д・)









