もう一件落着でいいんじゃね?強制降伏印籠ないの?
ショタ久しぶりの悪魔降臨(´д`)
王妃様の出現にこの場で一番驚いたのはたぶん俺、セルフィル=ハイブルクだろう。
「え、なに? 王家って僕に恨みがあるの?」
「セルフィル様に恨みを持っていないのは、セルフィル様を知らない人だけと思います」
「正直に言葉にするのが美徳ではないですよダッシュ君。スナオ君は頷かないの!」
この二人地味に図太くなっていやがる。派遣先の宰相と騎士団長のせいだな、あとで苦情の恐怖の手紙を送ってやろう。
よし、少し頭が覚めたぞ。
現状はがっつり戦場のど真ん中でキレたのじゃ姫リサイタルに、王妃様ご降臨。
……うぼぇあ。
これ予測出来てたら世紀末の覇王様を余裕で倒せるんじゃね。でも地面くりぬいて罠全回避されたりするから無理か。
「しかしどうしましょうかね」
もう完全に場の雰囲気は壊れてしまった。時間が経てば戦意も戻ってくるだろうが、それを見ているだけはもったいない。
なによりのじゃ姫リリィと王妃様の感動の再会を壊すのを許すつもりは無い。
俺は無償の親の愛にはグッとくるものがある。
前世では両親に愛されていたと自覚しているし、今世の母はたった一人若い身空で俺に愛を注いでくれた。
故に泣くリリィを二度と離すまいと抱きしめる王妃様の光景に俺は弱いのである。
グリエダさんがどうするんだい? と笑みを浮かべてこちらを見ていた。
元は俺が調子に乗って愚王派の貴族を煽ったのが今回のマロッドの暴走の発端だし、終わりにするのは俺がしないといけないだろう。
石畳から下りて正面の土塁に向かう。
「セイトとカルナはいつでも対応できるように待機。スナオ君は王妃様達の護衛をお願いしますね。ダッシュ君は僕と一緒に最前線に行きます?」
指示を出しながら前方に向かう。ダッシュ君は断固拒否してのじゃ姫と王妃様の下にスナオ君についていった。危険回避察知能力は高いくせに、逃亡先が同程度の危険な場所というのがダッシュ君らしい。俺なら王妃様が通ってきた城門から中に逃げるのに。
「これで護衛は終わりだね?」
ずっとリリィの傍にいたグリエダさんがお立ち台になっていたリリィのいた場所からトントンと軽く下りてきた。
「今回は僕のミスが幾つかありましたけれど、グリエダさんにリリィを護ってくださいとお願いしたことですかね。助けてから戻ってきたときには全て終わらせていたはずなんですが」
「それは私と白王を甘く見過ぎだったね」
肩を竦めるグリエダさん。
んもー、『なぜおまえがここにいるっ!?』みたいに言われる覇王様補正がありまくりじゃないですか。
それで無造作に抱きかかえるの止めてくれませんか?
「あ、鎧姿のグリエダさん格好いいですね」
「そうかい? 去年新調したものなんだが久しぶりだときつくなっていたみたいだ。新しくする前にセルフィルに見てもらえて良かったな」
覇王様巨馬降臨のインパクトで忘れていたグリエダさん女騎士バージョンを称賛したら聞いてはいけないことを暴露されしまう。どこがきつくなったのかは俺の後頭部で確認済みだ。……まだ成長なされてませんよね?
そして抱きかかえられたまま土塁の防壁を登……。おいカルナ土魔法で階段状にするんじゃない! そのままマロッド陣営の前にタイタニックの船首プレイで登場するじゃないか。イヤーッ!
「先ほどまで調子にのっていた相手にこの羞恥プレイ! グリエダさんリリィの護衛につかせて怒ってますね!?」
「なにを言っているんだい。君はこの国の頂点と上層部の前でも抱きかかえられていたじゃないか」
「……」
ぐうの音も出ない。
俺はここぞという場面で格好良く出来ない運命なのか。……よしグリエダさんの機嫌が直るなら甘んじて受け、命がかかっているコケにできない連中の視線は無ー理ー。
土塁の防壁の上で降ろされて、しばし顔を覆う。
大丈夫、心のオッサンは前世でもっと羞恥心マックスな状況にあったこともあるのだ。そうセルフ精神回復を行い顔を上げると、マロッド陣営の視線は俺に集中していた。
ですよねー、覇王降臨、のじゃ姫ガチギレ、そして感動の再会シーンからのイケメン女騎士がショタを抱きかかえて目の前に現れたら注目を引くよな。
まあいいや。俺の精神を削って視線を集められたと考えよう。
「さて国家反逆の罪を持つ皆さん。貴方達は本来、大重罪で家族親戚も含めての処刑対象になります」
お前らに伝えているんだぞとマロッド陣営をゆっくりと見渡す。
まずは自分の罪を自覚してもらおう。
なんぼのもんじゃいと目に力が入る者もいるが、大半は青ざめた表情になる。腐敗した貴族の下に集まった連中だ。所詮、おこぼれを頂戴するか強制で集まった烏合の衆でしかない。
「ですが今見た光景。愚かな王によって子供と離れ離れになって子を想い続けた王妃と、母に逢いたいがため苦難を乗り越えてここまでやって来た第二王女の再会の瞬間を、貴方達の凄惨な光景で塗り替えたくないのですよ」
殲滅の予定が崩されたのだから、遠慮なくリリィ達も使わせて貰う。
何度もやる気を上下させられた彼等は落ち着いて冷静になっている、わけではない。他人に思考を預けた彼等は急な場面転換についてこれずに、脳が疲弊しているだけだ。
「なので降伏すれば、今は命を取ることはしません」
そこに幸せな光景を見せつけ、逃げ道という甘美な糸を垂らしてやる。
「それともこのまま戦い続けます? こちらに一人も損害を与えていないのに? ああ、それでも全員で突撃されたら流石にこちらが分が悪くて全滅するでしょう」
そしてな粗塩な希望があるようにみせかけ。
「でも、いったい何割の貴方達が死ぬのでしょうね。もし王妃様と王女様二人を捕らえるならまだしも害し過ぎてしまえば……。国賊として国が総力を上げて命だけでなく貴方達の存在全てを殺し尽くし。そして永遠に汚名を歴史に残すことになります」
そして地獄に堕とす。
最前線で型落ちの軽装の鎧を纏った兵士一人の手から槍が落ちた。一人、また一人、剣を槍を落としていく。
そして跪いて手を合わせて降伏を願い始めた。
さぞかし最初に垂らした糸が魅力的に見えたのだろうね。
「君は悪い子だね」
「グリエダさん達が登場しなければ使えなかった方法ですけどね」
マロッドが兵達を焚き付けた欲望はリリィ達の暴走で出鼻を挫かれ、そこに蜘蛛の糸と地獄の二択を選ばせるようにしただけ。
元は殲滅だったのだから、こちらがかなりの譲歩をしたことになる。
まあでもこれで兵士は無力化出来た。
かなりの下級貴族は魔法使いの暴発自爆に巻き込まれ死んでいるか死にかけているかのどちらか、兵士の殆どは心が折れた。上級貴族はマロッドが隔離しているみたいで端の方でガタガタ震えている。
ではあと残りは?
「うろたえるなっ! 騎士の君達がいれば問題はないっ!」
「あー、そっちを選択しますか」
もう肩の荷を下ろしてもいいと思うんだけどねお兄ちゃん。
小悪魔ショタ「いや~、糸を垂らして必死にしがみついてくる姿にゾクゾクしますね」
ダッシュ「「悪魔だ」」
逃げ道を用意してから、それ以外の道を爆破する行為をどう思いますか?(・_・;)
ショタもチャラ王子も最終目標はありますけれど、それに届くのは殆ど無理とわかっていますので、多くの妥協案を考えています。0か1でなく、1か0.9か0.8か0.7か0.6……とその場その場で変更しています。今のところ二人とも0.5以下ですが(´▽`)
さあ、そろそろこの戦局も終盤!
次回!ダッシュスナオの背後に隠れる!
マジで長かった~(;´Д`)
誤字脱字の修正ですが、本当に助かっております。ありがとうございます<(_ _)>
いいねも筆者が深夜の外でクネクネして喜んおります(●´∀`●)最近は山中でイチャつこうするカップルカーが来ないから、感謝の舞が捗っております。もしカップルカーが来たら本当にあった怖い話に筆者はなるんですかね(;・д・)









