王国を滅ぼす方法
「お前が人間の王国から追放された転生者か。この魔王に何の用だ?」
「私は王国に復讐をしたいのです。ぜひ、魔王様のお力をお貸しください」
「人間が魔王の力を使って復讐とは面白い。よし。手を貸してやる。何をしてほしい?王国に攻められるほどの戦力を用意するのは時間がかかるがな」
「いいえ。王国を直接攻める必要はないです。逆に、小競り合いしているのを止めて王国から手を引いてほしいのです。そうすれば、王国は自滅します」
「どういうことだ?」
「今、人間が団結しているのは、共通の敵の魔王様がいるためです。その共通の敵がいなくなったら、人間達は互いに対しての不満が噴出していき、人間同士で争い始めるでしょう」
「そんなにうまくいくとは思えんが」
「すでに毒はばらまいてます」
「毒?」
「私は転生者です。私の転生前の知識で、人間がどうなれば争うか良く知ってます。追放直前に王国内に争いの芽をばらまいてやりました」
「よかろう。お前の話にのってやる。しかし、追放されるとは、何をやらかしたんだ?」
「私は単なる冤罪です。私から料理のレシピを奪うために王国が罪をでっちあげたんです」
「料理のレシピ?」
「私は転生前も単なる一般人で、転生前の一般料理の知識でほそぼそと定食屋をやっていたんですが、こっちの世界は料理にも著作権料が入るそうですね。それで、ハンバーグとかコロッケとかの権利が莫大な金を生むことで、王国は私からその利権のレシピを奪い無実の罪で追放したのです」
その毒はちょっとずつ王国を蝕んでいく。
わずかに異なる価値観は修正をされず、お互いの不信感を積み重ねていく。
それは水面下で、互いの憎しみをふくらませていく。
膨張しきった負の感情は、王子の婚約破棄宣言で破裂させられる。
それは王国滅亡の第一歩。
「婚約破棄なんて、どうしてひどいことを言うのですか?」
立食パーティーの場で婚約破棄宣言をされた婚約者は、まったく理由がわからず王子に聞く。
その王子の返答は、王国を二分する決定的なきっかけになる。
「おまえが勝手に唐揚げにレモンをかけるからだ」
と、王子は、みんなが食べやすいように焼き鳥の肉を串から外していた婚約者に言った。
おわり




