進む探索
一日二回の三つ首の討伐を繰り返して、分かったことがいくつかある。
まずこいつらは、壁の岩を食べて鉱物を体内に溜め込む習性があるらしい。
しかもただ集めるだけでなく、体内で圧縮までしているようだ。
金剛石が結晶化したのも、その奇妙な習性のおかげのようだ。
多い時はこぶし大の金塊が十個以上、小指の先ほどの金剛石の結晶もまれに見つかった。
金塊はおよそ金貨二十枚ほどの価値で、金剛石の小結晶は金貨十枚の値がついた。
ただし毎回、そう美味しくはなく、頑張って倒してみたものの鉄塊や銅粒ばかりが転げ出てくる場合もあった。
どうやら空洞の場所によって、採れる鉱物の種類があるようだ。
さらに三つ首の悪魔は倒せば三日から四日で再発生するが、そこですぐに倒してしまうと何も出てこない。
溜め込むのを待つ必要もあるようだ。
当然、先へ進むのが目的のトールたちには、そうなるのを悠長に待つ気はない。
最初は大張り切りで戦っていたクガセやキキリリも、後のほうになるとすっかりうんざり顔になっていた。
もっとも障害物がなくなったおかげで、空洞の行き来が楽になったのは間違いない。
トールたちはラムメルラと協力して、効率的に探索を進める。
炎獄の階層は焼けた地面や壁が厄介であったが、天然の洞窟のため厄介な仕掛け罠もなく、基本的に悪魔だけ用心すれば済む。
ラムメルラの抜群の記憶力に<空間知覚>を有するソラの正確な地図作りが合わさった結果、広大な迷路のようであった階層は驚くべき速度で解明されていく。
導き出された最適路のおかげで移動は速くなり、攻略の速度も日に日に上がっていく。
だが、そうそう甘くないのもお約束だ。
下の階へ進むほど、悪魔の数が増えたのだ。
敏感に侵入者を察知して通路へ飛び出してくる番犬どもはもちろん、中部屋の火頭も多い時は三体までとなる。
苦しい場面も多々あったが、トールたちも二パーティに増えていたため、なんとか乗り切ることができた。
そして数をこなせば、次第に戦闘は楽になってくる。
最後のほうは焦り声や怒号が飛び交うこともなく、余裕を持って倒せるようになった。
それに悪魔はスキルポイント稼ぎには、うってつけの相手だったようだ。
おかげでトールの<予知>も、あっさりレベル10に達する。
<予知>――戦闘に関わる対象の行動を予め知る。
レベル:10/使用可能回数:一時間十三回/発動:瞬/効果:十三秒以内/範囲:視覚。
<加速>の効果時間が三十三秒なので、そこまで延びてほしかったが十三秒で打ち止めであった。
しかし嬉しいことに予知できるのが、これまではトール自身のみであった。
自分を中心にした部分でしか、未来を推し量ることは不可能だったのだ。
だが今は視認できた対象なら、なんでも十三秒後までの動きを把握することができる。
<復元>、<遡行>、<加速>にこのスキルが加わったことで、近接での戦闘でトールが打ち倒される事態はほぼなくなったと言っていいだろう。
ただ残念なことに、新たな枝スキルの発生は確認できなかった。
ソラも<消去>を含めた四つの枝をレベル9にする。
こちらも新しいスキルの発生はなかった。
だが驚くべき事実が発覚する。
少女の技能樹の四本の枝には、まだ先があったのだ。
トールと同じ神の御力の領域――レベル10。
上限が解放されたのだ。
喜ぶべき状況なのだが、問題はそのレベルに到達するために必要なスキルポイントの量である。
上枝スキルの完枝状態であるレベル9は、到達すれば歴史に名が残るほどの使い手と認識される。
その域に達するため、生涯を費やして稼がねばならないスキルポイントは9万。
そしてソラの下枝スキルの上限に必要な量は、それよりもさらに多い10万ポイントであった。
トールの時の約十倍なのは、それまでが強力すぎたせいだろうか。
ムーのほうもしっかり稼げたおかげで、とうとう中枝魔技の<迅雷速>が完枝となった。
下枝魔技も完枝となるため、ついに<雷眼看破>の枝果特性が実る。
このおかげでトールたちの動きが格段に向上する。
ユーリルは上枝魔技を三つ同時に発動できるようになった。
おそらく央国の西側地方で、これ以上の使い手は存在しないであろう高みだ。
そのせいか最近は少し人離れした雰囲気が漂い始めている。
装備の面でも強化は進んだ。
金塊や金剛石の結晶を譲る代わりに、トールは金剛鉄の原石を優先的に回してもらい、とうとう剣一本分に足りる量を集めることに成功したのだ。
すでにトルックの工房には、とびっきりの一振りを発注済みである。
またその間にキキリリたちも、わざわざ銀細工師のハイラをボッサリアから呼びつけ金剛石の結晶の首飾りを注文していた。
数が多く時間もないため、おそろいの意匠となったが、なぜか全員に好評だった。
熱さを感じないせいで探索はさらに進み、ついにトールたちは迷宮の最高到達記録を更新する。
さらに十九階も調べ上げ、二十階へ至る通路までも見つけ出した。
そこから漂ってくる並ならぬ異様な気配に、トールは骨休めと覚悟を決める休息日を提案する。
炎獄の階層に入って、ちょうど一ヶ月の時が過ぎようとしていた。




