エピローグ そして動き出す
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クリストバルは、その日のうちにオルティス公爵にお兄様の件を相談した。
公爵は驚き、そして、この件はわたしの予算問題以上に慎重に動かなくてはならないと判断を下した。わたしもそう思う。
オルティス公爵一家は秋口まで領地で過ごすことになっているから、ふらりと王都に戻ってお兄様に会うと、お兄様に毒を盛っている犯人に気づかれるかもしれないということで、王都に戻るまでは現状維持ということになった。
お兄様には悪いが、急いで動いてぼろが出たら大変だからである。
今のところわたしが作った栄養薬で体調は上向いているので、秋口に解毒薬を届けるまで耐えてほしい。
そしてわたしは、ラロに相談して、今作っている解毒薬が効かなかったときのために別の解毒薬の製作にも取り掛かった。複数の解毒薬を用意しておいて、一つ目が効かなかったら二つ目、という具合に飲んでもらう予定だ。
……毒が特定できればそれに効く薬を飲んでもらえばいいんだけど、それが難しいからね。
とにかくお兄様を回復させて、適当な理由をつけてオルティス公爵家、もしくはわたしが暮らしている離宮に来てもらう作戦である。
ただ、急にお兄様が元気になったら怪しまれるから、このあたりは細かい調整が必要だろうとクリストバルが言っていた。
実際に体調が回復していても、お兄様には病弱演技を続けてもらって、それでも無理をして妹に会いたいと希望したみたいな感じに調整するのが今のところベストな作戦だろうと考えられている。
そして、オルティス公爵は今のうちに少しずつでもクベード侯爵家の近辺を探っていこうと、密かに動き出した。
わたしは解毒薬を作る以外に今のところ出番はないんだけど、何もしていないくせにそわそわしちゃうわ。
もしクベード侯爵家がお兄様に毒を盛っていた犯人だったら……、いったいいつから、王位簒奪を目論んでいたのだろうか。
エミディオはわたしを使って王位を手に入れようとしていたけれど、お兄様にまで毒を盛っていたってことは、ずっとずっと昔から計画していたのかしらね。
……そうとは知らずに、わたしの二度目の人生で、エミディオの言い分を信じてわたしを火刑に処したお父様は、なんて愚かな国王……いえ、父親なのかしら。
お父様はわたしを毛嫌いしているでしょうけど、お兄様に対してはそうではないはずよ。
だって、エミディオがわたしを妻にして、お兄様の代わりに王太子になろうとしたときに、お父様はお兄様を王太子の座から下ろすつもりはないと言ったそうだもの。
だからこそ、エミディオはわたしを捨てることにして、他国の王女に目をつけたのよ。他国から圧力をかけさせようって魂胆でね。
愛する息子に毒を盛り続けている男に、お父様はいずれ王位を奪われるの。なんて滑稽で愚かなのかしら。
ま、過去に戻って三度目の人生がはじまっちゃったから、二度目の人生の時間軸であのあと何が起こるのかはわたしにもわからないんだけど。
……でも、一度目と二度目の人生と比べると、三度目の人生はずいぶんと流れが変わったわね。
その結果、わたしの未来に何が待ち受けているのかは、未知数になってしまった。
まあ、殺される未来に突き進むよりはましでしょうけど、この変化が吉なのか凶なのかはわからないわ。
だけど、不思議とあんまり怖くないのよね。
クリストバルは、エミディオと違ってきっとわたしを裏切らないと、変な確信があるからかしら。
大嫌いだったはずの男を信用するなんておかしなものだけど、クリストバルがいるから大丈夫だって思えるのよね。
だから、迷わずこれまでと違う未来への一歩を踏み出すわ。
お兄様を亡き者にして玉座を得ようとしているエミディオの策略を阻んで、あいつにぎゃふんと言わせて、そして今度こそ、わたしは幸せに生きるのよ!
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この後にサイドストーリーを1話挟んで、第一部終了です(*^^*)






