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やり直し魔女は、三度目の人生を大嫌いだった男と生きる  作者: 狭山ひびき
第一部 三回目の人生

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吊り橋効果はやっかいな病気 1

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 翌朝目を覚ませば、長い脚をソファから飛び出させたクリストバルが、熟睡していた。

 思わずドキリとして、そう言えば昨日の夜に不審者が部屋に侵入したせいで同じ部屋で休むことになったのだと思い出す。


 クリストバルを起こさないようにそーっとベッドから降りて、好奇心に負けたわたしは、眠っている彼に近づいた。


 端正な顔に、長い睫毛の影が落ちている。

 何度か寝返りを打ったのか、艶やかな銀髪はちょっとだけぼさっとしていた。


 ……本当に綺麗な顔をよね。


 彫像みたいに完璧な顔立ちの男である。

 そして、寝顔は結構可愛い。


 ……うわ、肌すべすべ。なんなのこいつ。毛穴って言葉知ってる?


 気になって、そーっと指先で頬をつついてみる。見た目通りすべすべだ。女として悔しい。

 昨日の不審者はびっくりしたけど、そのあとの展開の方が正直びっくりだったわよ。

 まさかこいつと同じ部屋で休むことになるとは思わなかったもの。

 しかも――


 ……寝かしつけられたのが、ムカつくわ。


 自分の頭に触れて、クリストバルの手の感触を思い出した。

 すると急に恥ずかしくなってきて、顔が熱くなってくる。

 誰かに頭を撫でられたのははじめてだった。

 思いのほか心地よくて、不覚にもうとうとしちゃったわよ。


 クリストバルってば、口が悪い癖に、頭を撫でる手はとっても優しいのよ。

 何なのかしら。不覚にもドキドキしてきたじゃない。

 きっとあれね、これは前にラロが言っていた吊り橋効果ってやつだわ!


 ……って、わたし、いつまでクリストバルの頬をつついているのよ!


 わたしはぱっと手を離すと、慌ててクリストバルとの距離を取る。

 視線を左右に彷徨わせた後、そうよ、と手を叩いた。


「こんな格好でいつまでもここにいるべきじゃないわ! モニカさんの部屋に行って、着替えさせてもらおうっと」


 昨日は動揺していて失念していたが、わたしは今、夜着を着ている。

 ぼろい中古服で平然とクリストバルに会っていた女が何を色気づいているんだって思うかもしれないけど、夜着って言うだけで恥ずかしいのよ! たとえそれが、今までの普段着より高級な服でもね!


 わたしは無意識のうちに小走りになって、部屋の外に出ると、そのままモニカさんが泊っている部屋に向かった。





 モニカさんの部屋で着替えさせてもらったあと、クリストバルが泊っている部屋で朝食をいただいた。

 窓が割れて破片が散乱しているわたしの部屋について、宿屋の主人に説明と補償が必要だから、そのやりとりのために出発時間を二時間ほど遅らせることになったの。

 その間暇だから、朝食を食べた後、クリストバルに誘われてカードゲームをしたわ。

 カードゲームがはじめてだって言えば、クリストバルはちょっと驚いていたけどね。

 初心者のわたしのために、ルールが簡単なゲームを三つほどして遊んで、お昼前になってようやく出発よ。


「出発が遅れたから、途中の休憩を少し減そうと思うんだがいいか?」

「ええ、構わないわよ」


 いつもたくさん休憩時間を取ってくれているから、多少減っても困りはしないわ。馬車の移動にも慣れて来たし。


「それから、今日から宿は同じ部屋にするから」

「ええわかったわ。……え?」


 反射的に頷いて、わたしは「うん?」と首をひねった。


「ちなみに、誰と誰が同じ部屋なの?」

「俺とお前だ」

「……はい?」

「護衛の観点から、同じ部屋がいいと判断した」

「ちょっと待ってよ!」


 さらりと言うような内容じゃないでしょう⁉


「俺と同じ部屋じゃなければ、護衛の騎士と同じ部屋になるが、連れてきている騎士は全員男だ。それなら俺と同じ部屋の方がいいだろう?」

「モニカさんは⁉」

「モニカはメイドだ。護衛はできない」


 ぐぅ、確かにそうだけども!


「安心しろ。ちゃんとベッドが二つある部屋を取る」


 そういう問題じゃないでしょうよ!


「昨夜だって、大丈夫だったじゃないか。熟睡していたぞ」

「見たの⁉」


 そしてあれは、あんたがわたしを寝かしつけたからよ! 巧妙な手口でね! 不可抗力というやつよ!


「見てない」

「嘘よ! だったらなんで熟睡してたってわかるのよ! 見たんでしょ! 乙女の寝顔を見るなんてひどいじゃないのっ」


 すると、クリストバルは耳を真っ赤に染めて言い返して来た。


「それを言うなら、お前だって今朝、俺の頬をつつきながら人の寝顔を観察してたじゃないか」

「起きてたの⁉」

「頬をつつかれれば普通は起きる」


 なんてこと‼


「寝たふりなんてひどいじゃない!」

「起きるタイミングがわからなくなっただけだ! お前も、寝ている男の頬をつつくな!」


 うぐぅ。

 だ、だって、寝顔が可愛かったんだもの! つつきたくなったんだもの! あんたのその、つるっと綺麗な陶器みたいな肌が悪いのよ!


 ああ、もうっ!

 なんかドキドキしてきちゃったじゃない!

 吊り橋効果がぶり返してきたんだわ!


「とにかく、安全面を考えて今日から同じ部屋だ。諦めてくれ」


 ここで素直に「わかったわ」と言うのはとっても癪なので、わたしは拗ねた顔のまま押し黙った。





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