兄からのちょっぴりお節介なお礼 2
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薔薇を生け終わると(クリストバルが!)、わたしたちはダイニングに移動した。
「あ、そう言えばエミディオが持って来たクッキーが余ってるわよ。食べる?」
「いや、いい。俺も持って来ているから。ちょっと待ってろ」
そう言えば、なんか持ってたわね。
薔薇の水切りに向かう前に、クリストバルが玄関脇に何か置いていたわ。
クリストバルが玄関から大きめの籠を持ってくる。
「今日はカヌレを持って来た。ケーキにしようかと思ったんだが、その前に母上に用意されたんだ。美味しかったから持って行けと言われた」
「ふーん。カヌレって何?」
「食べたことがなかったのか。待ってろ、先に茶を入れて来る」
「うん」
クリストバルが籠をダイニングテーブルの上に置いて、お茶を入れるためにキッチンへ向かった。
遠くから「お前、また散らかしたな!」と声が聞こえたけど、聞こえなかったふりをする。
……ち、散らかしてないし! 午前中にエミディオが来て、その時に使ったものをまだ洗ってなかった
だけだし!
エミディオにムカついてたから、洗い物をする気になれなかったのよ。イライラして割っちゃいそうだったから。
しばらくすると、「まったくお前は!」とぶつぶつ文句を言いながらクリストバルが戻って来る。
「使ったら片付けるを徹底すれば、部屋は散らからないんだ。わかるか?」
「わ、わかるけど」
くっ、相変わらずの小姑だわ。わたしが悪いんだけど、でもわたしが暮らしている場所なんだから別にいいじゃないのよ。
クリストバルが入れてくれた紅茶の香りがふわんと漂う。
わたしが入れるとこんなにいい香りにならないんだけど、なんでかしら?
「ほら、これがカヌレだ。いろんな味があるぞ。プレーン、チョコレート、紅茶、ピスタチオ、リンゴに、これはレモンだな」
え、全部食べたいんだけど。
そんなに大きくないし、全種類いけるんじゃないかしら?
籠の中のカヌレは、こんがりと焦げたような色をしていたけど、もともとこういう色になるまでしっかり焼き上げるお菓子らしい。
悩んでいると、クリストバルが補足をくれた。
「小さいように見えて結構腹に溜まる。余ったものはあとで食べればいいだろうから、二つか三つくらいにしておけ」
「そうなんだ。じゃあ……プレーンと、チョコと、レモンにするわ」
わたしが選ぶと、クリストバルがお皿に三つのせてくれた。
「外側がカリッと焼き上げてあるからフォークだと食べにくい。手でつかんで食べろ」
「へー」
お上品にフォークとナイフで食べないといけないのかと思ったけど、手づかみオッケーなのね。よかったわ! それじゃあ、遠慮なく!
……ん! 外はカリッとしてるけど、中はしっとり滑らかで、ケーキとは違う不思議な食感ね。でも楽しいし美味しい!
そして、甘いカヌレとクリストバルが入れてくれた紅茶がとってもよく合うわ!
「クリストバルは紅茶屋さんをしてもいいと思うわ」
「紅茶屋さんって何だ。カフェのことか?」
「カフェっていうのね。そうそう、そんな感じよ」
カフェが何かは知らないけどね、要するに紅茶を出すお店をすれば人気が出ると思うの。だって、クリストバルの入れる紅茶はとっても美味しいもの。
「残念だが、俺は公爵家を継ぐ人間だからな。カフェの店主にはなれない」
「それもそうね」
そう言えばこいつ、跡取りなんだったわ。
ってことは、クリストバル、そろそろ結婚を考えないといけない年なんじゃないかしら?
貴族の跡取りってことは、血筋を絶やさないために絶対に結婚しないと駄目だものね?
クリストバルは今十九歳だし、そろそろ相手を決めないといけないはずよ。
……エミディオと違って、こいつは自分勝手な理由で結婚相手を選ばないでしょうし、結婚しても妻を冤罪をかぶせて処刑しようなんてしないでしょうね。
しかも公爵家の跡取りなんて、優良物件中の優良物件なんじゃないかしら?
黙っていればとっても綺麗な顔をしているし、さぞモテるでしょうに、こんなところでわたしになんて構っていていいのかしらね。
「だが、連れてってはやれるぞ、カフェ」
「何言ってるのか意味わかんないわ」
どうやってわたしをカフェに連れて行くと?
わたし、幽閉の身ですけど?
すると、クリストバルはにやりと笑った。
「ファウスト殿下が、お前に薬の礼をしたいとおっしゃっている。もうすぐシーズンオフだからな、俺と一緒に、こっそりうちの領地に行こう」
お兄様からのお礼と、クリストバルの家の領地に行くのと、つながりがよくわかりませんけど?
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