これは薬草採取でデートではない! 4
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「草木がぼーぼー生えている薄暗い山の中でデートなんて、なんて色気がないんだろうね」
ラロは、次の日に帰って来た。
どうやら昨日も一度帰って来たらしいのだけど、わたしとクリストバルが何やら楽しそうに食事をしているのを見て、気を利かせたらしい。
……そんな気を利かせてもらう必要はないし、そもそも楽しそうにしてなんていないわよ‼
で、帰って来たラロは、子犬のくせににまにまとおっさんくさいにやにや笑いを浮かべて、わたしに昨日何があったのかを説明させた。
するとあからさまにがっかりした顔をしたけど、逆に聞くけどねラロ、あんた、わたしのクリストバルの間に何かが起きるとでも思っていたわけ? あるわけないでしょ?
わたしはクリストバルが嫌いだし、クリストバルもわたしが嫌いなのだ。
嫌いなもの同士の間で、甘酸っぱい展開が起きるわけがない。
「ただ薬草を採りに行っただけよ、デートなわけないでしょ」
「男と女が二人きりで出かけることを、俗にデートと言うんだよアサレア。アサレアはまだおこちゃまだからわかんないかもしれないけどね~」
見た目で言えばあんたの方がよっぽどおこちゃまよ! 生後三か月くらいの子犬みたいな外見をしているくせに、偉そうなことを言わないでほしいわね。
それにね、二度目の人生では、これでも人妻だったのよ!
相手がエミディオって言うのがいただけないけど、とにかく、多少はそれなりの経験があるんだからっ!
まるで男女の機微に疎い、みたいに言われたくないわ。
「それはそうと、クリストバルがやたらと狼を気にするのよ。危険なの?」
「まあ、人間にとって狼は脅威だろうけど、ここにいる狼は大丈夫だよ。みんな気のいいやつらだからね。たぶん昨日は、アサレアが男と一緒にいたから気になって様子を見に来たんじゃないかな。クリストバルがアサレアを傷つけないか心配だったんだよ」
「……そう、なの?」
それはそれで不思議である。
だって、わたしも狼に会ったのは昨日がはじめてなのだ。
それなのに、狼の方はわたしを認識していたってことよね。どういうわけかしら。ラロが関わっていたりする?
気になったけど、この山にいる狼が安全だってわかったから、まあいいかしらね。
「でもさ、クリストバルっていいやつだよね。汚部屋がすっかり綺麗になって、僕は大満足だ」
こいつ、またお部屋の「お」に変な意味を持たせなかった?
わたしはラロを睨んだが、彼は痛くもかゆくもない顔で、へそ転して前足を頭の後ろに回してぷかりぷかり浮いている。
「そういえばあんた、昔からクリストバルには好意的ね」
「あいつは結構いいやつだよ」
「そうかしら?」
「そうだよ。少なくともアサレアが熱を上げているあのいけ好かないエミディオより、ずっといいやつだね」
そう言えばラロって、昔からエミディオが嫌いなのよね。
どうしてだろうって以前は思っていたけど、あれかしら? 動物的直観というやつだったのかしら。エミディオの本性を見抜いていたのかもしれないわ。
「エミディオにはもう熱なんてあげてないわよ」
わたしが口をとがらせて言い返すと、ラロは大きな目をぱちくりとさせた。
「なんだって? ついに目が覚めたの⁉ ちょっと、今夜はお祝いだよ! ようやくアサレアのポンコツな思考回路がまっとうに!」
「誰がポンコツよ!」
まあ、実際にエミディオはろくな男じゃなかったから、ポンコツと言われても仕方がないかもしれないけど。
でもね、普通の女の子なら、毎回花束持参で現れる優しいイケメンにころっと心を奪われるのは当然だと思わない?
本性が見抜けなかったわたしは確かにポンコツだけど、同じことをされて引っかかる女の子はとっても多いと思うわよ!
「こうしちゃいられない! ごちそうを買ってこなきゃ!」
「あ、こら!」
わたしの文句なんて右から左に聞き流して、ラロがばびゅんとどこかへ飛んでいく。
本気でごちそうを買いに行ったのだろうか。
……そこまで嫌いだったのね、ラロ。
一度目の人生でも二度目の人生でも、そういえばラロから「あいつだけはやめておけ」ってさんざん言われていたのを思い出したわたしは、何でもっと真剣にラロの言うことを聞かなかったんだろうとちょっぴり落ち込んだ。
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