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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その65:ぬこ様と魔王様と(16)】


 我はゆっくり上昇を続けながら、ルラに命じる。


「檻を覗き、ぬこの首に何かついていないか確認せよ」


「首? 首輪がついているのでは?」


「阿呆。首輪以外にである。我はお主を抱えておるゆえ、確認ができん」


「ちょっと待ってくださいね……えっと、あの、なんだろ? これ。宝石? ……あ、待ってください。これもしかして、術式が組み込まれてる? あ、ぬこさん、動かないで!」


「爆発の可能性がある術式か確認できるか?」


「うーん、多分違う気がします。もしかして、マオさんを討伐するためのハーロットの罠ですか? でも、この大きさのものが爆発しても、正直効果があるとは思えませんし、それに……」


「それに何であるか?」


「ハーロットは自信がありそうでしたから、もっと大がかりな魔法か何かが準備されていると思うんです」


「うむ。では、まずはその術式を解明せよ。万が一ぬこに被害が及ぶような代物であれば放ってはおけぬ」


「それならば一旦この場を離れたらいいのでは?」


「それはならぬ。一定範囲を超えたら発動する類の魔法である可能性が捨てきれぬ以上はな。故にこのままお主が解読するのだ」


「ぬこさんのことを考えれば、無茶とはいえませんね。……分かりました。ハーロットもマオさんが近づいてくるまでは動かないみたいですし、なるべくゆっくり上昇してください」


「うむ。任せよ」


 我が殊更速度を落として上昇を続けている間も、


「ぬこさん、こっち向いてください」

「あ、そのまま」

「いい子ですね、そのまま。ああっ、待って」


 などとぶつぶつ言いながら解析に挑むルラ。


「こんな小さな魔法陣、誰がやったんだろ? ああもう、読み取りづらい!」


 ともかく文句を言いながらも、ようやく「これ、もしかして……」と口にする。


「わかったか?」


「もしかしたらという可能性に過ぎないのですが……」


「かまわぬ、話せ」


「この魔法陣は“目印”じゃないかと思うんです。この目印を目掛けて何らかの魔法が発動するような」


「……ふーむ、ありえるな。我を倒すほどの強力な魔力を確実に当てるための的か。それをぬこにつければ、確実に我に魔法を当てられるであろう。なかなかの知恵者よ」


「……マオさんがそこまでぬこさんに執着しているのは知らないと思うので、結構偶然だと思いますけどね……。っていうか、これ、まずくないですか? マオさんがハーロットのところに行ったらその強力な魔法が襲ってるんじゃ?」


「うむ。そうであろうな。が、まあそれも良かろう」


「良かろう……って、何にも良くないですよ?」


「我は少々腹を立てておるのだ。先ほどはお主の頼みを聞いてやった。これ以上は我の好きにさせてもらう」


「もう。……確かにこちらのお願いも聞いて貰ってるので、これ以上は言いませんけれど……本当に大丈夫なのですか?」


「我を誰だと思っておるのか。最強の魔王ぞ」


「……こればかりは魔王の実力、期待しています」


「任せておくがいい」


 そんな会話をしているうちに、ついにハーロットのいる場所までやってきた。


「……貴様が此度の犯人らしいな。ハーロット」


「魔王、お前に名前を口にされるのは不快極まりないが、まあいい。お前を討伐する勇者の名だ、その心に刻んでおけ」


「勇者、のう。お主が? 笑わせる。我の元にやってきた勇者は、どの者もずっと気高く、気力に満ち溢れていたぞ。少なくとも堂々としておった。……コソコソと裏で動き回るお主が勇者? 寝言は寝てからいうが良い」


「……何とでも言え。最後に勝つのはこのハーロットだ!」


「で、どうやって我に勝つのだ? ほれ、見せてみよ。何らかの準備をしておるのだろう? 我はどうしてやれば良いかの?」


 せっかく親切に魔法の発動条件を聞いてやったというのに、ハーロットは顔を真っ赤にして喚き出す。


「俺を馬鹿にしているのか!? 父や母のように見下した言葉を吐くな! 偽聖女を抱き、両手がふさがっている貴様に何ができる!」


「何が気に障ったのか知らんが、少し落ち着くが良かろう」


 我の親切な言葉に対して、やり取りを聞いていたルラが「うわ、容赦ない……」と呟く。失敬な。


「ほれ、貴様の切り札を見てやろうと言っているのだ、早くせよ。あれか? お主に近すぎるとお主もダメージを喰らうような代物か? よし、では少し離れてやろう。……どのくらい距離が必要であるか?」


「俺を、俺を見下すなと言っている!!」


 必死にこちらに訴えていたハーロットは、ふと、動きを止め「ふふふ」と笑い出す。何あれ、怖いのだが?


「いや、その自信こそ、愚かな証拠か。いいでしょう魔王、では、もう少々上空へ上がっていただけますか。そこで、私の切り札をお見せしましょう」


「敬語に切り替えることで、己の性根を隠そうとしているのだな。ふむ、難儀な性格ぞ」


 我の言葉にルラが我の服を引っ張りながら、「からかい過ぎですよ!」と小声で注意してくる。まあ、煽るのはこの辺にしておいてやろう。


「では、少々離れてやるとするか」


 我は再び上昇を始める。


 そうしてハーロットを見下ろす程度場所までやってきた時、ついにハーロットが動いた。


「その傲慢さで、身を滅ぼすがいい!! 魔王!!」


 怒鳴ると当時に、塔の階段へ向かって走り出すハーロット。


 その直後。


 我に向かって巨大な魔力の光線が襲いかかってきたのである。



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― 新着の感想 ―
ええっ!? 残り二話なんですかあ、、、(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
いや、わたしはやっぱりハーロット頑張れと言っておきます。 よくあるお話ですが、実力差がありすぎると相手の強さがわからない、といいますよね。 もう、お気の毒としか言えません。
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