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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その63:ぬこ様と魔王様と(14)】


 我は破壊された転移魔法陣の術式を、入念に調べた。


 確かに本来のアクセスが遮断されている。が、それ以外に何か、妙な仕掛けが施されている。


 おそらくだが、別のゲートへの接続する術式が追加されているのだ。しかも、ご丁寧に一度、我が部屋の魔法陣と繋げた形跡もあった。


 ただ、術式だけでは詳細まではわからない。しかし、ともかくこちらから術式を構築し直せば、新しいゲートに繋ぐことは可能なようであった。


 だが、いったい誰が? 罠か何かかもしれん。まあ別に罠でも問題はなかろう。


 ぬこを攫った輩の近くに行けるのならば、闇雲に探しに行くよりも効率が良い。


 そもそも移動した直後に攻撃を喰らったとしても、我に傷を与えるのは至難の技である。


 我は術式の再構築を進めることを決め、その作業に集中し始めた。


 が、しばしして、我の部屋をノックする者が。無視していると、「魔王様!」という聞き慣れた声と共に、もう一度扉が叩かれる。


 我は小さくため息をつくと、「今行く! 少し離れておれ!」と命じて部屋の外へ。


「いったい何用であるか?」


 我の言葉に、何とも言えぬ表情を見せるベリアル。


「何用も何も……何があったのか聞きたいのはこちらでございます! ワーグノートを封じたのち、またどこかへ飛んで行かれたらしいではないですか? それも尋常ではない速度で。他にも異変があったのでございますか?」


 む。周囲を気にしている暇はなかったので、誰かに見られていたか。面倒な。まあいい。


「ワーグノートの眠りを妨げた犯人が分かったので、処罰しに行ったのである」


「は? 犯人でございますか……?」


「うむ。ダークベットが此度の一連の首謀者である。あやつは我に従わぬ者達と結託し、ワーグノートを起こして我の魔力を削り、徒党を組んで弱った我を打ち果たそうとしたのだ」


「何ですと!? ……まさか、ダークベットが……では」


「うむ。返り討ちにしてやった。もはや跡形も残っておらん」


「そうだ、ベリアルよ。今から申し伝える場所に向かい、ダークベット一味の残骸を回収しつつ、まだ残党が残っていないか探れ」


「残骸……」


「その身は消え去ったが、服くらいは残っておるからな。それを証拠として、広く領内に知らしめよ。我に直接戦いを挑むならば良い、が、今後、このような搦手を使ったものは、ダークベットのようになる、とな」


「は、ははあっ! さすが魔王様! ではすぐに!」


「よし。では我は部屋に戻る。今度こそ休憩するので邪魔をするでない」


「は、大変申し訳ございません!」


 よし、これで当面は誰にも邪魔されぬ。


 人の作った複雑な術式と格闘することしばし、ようやく向こうの魔法陣との連結が確認できた。


「よし、では行くか。待っておれ、ぬこよ」


 我は怒りを抑え、務めて冷静を保ちながら、転移魔法の光に包まれたのである。



◇◇◇ 



 魔法の光が遅まると、ぴぴぴと小鳥の声が聞こえ始める。


「……どこだ、ここは?」


 見渡せばそこは、人気のない森の中。


 罠の類ではなさそうだ。となると、どうしてこんな場所に魔法陣が設置されているのかが謎ではあるが……。


「まあ良い。まずは、現在地を確認する必要があるな」


 我は空高く飛び上がる。


 足元に広がるのはやはり森だ。しかしそれよりも。


 我の視線の先に、見知った建物が確認できた。少し前に、写真機を奪った場所。街から離れた場所からでもわかる、特徴的な建物。


 教会本部。つまり、ここはやはり、ルラの住まう王都の郊外か。


 写真に刻まれていたのが教会の服を着たものである以上、無関係ということはあるまい。


 我は迷うことなく、教会本部の建物に向かって加速を始めた。



◇◇◇ 



 我の速度に巻き込まれた空気が、街に突風を巻き起こす。


 眼下で小さな悲鳴が聞こえた。ふと視線を移せば、ちょうどエリナの店の辺りの通りが見えた。


 うむ。無事にぬこを助け出したら、ぬこが頑張った褒美に、お菓子を買ってやろう。そうだ、ぬこ自身に選ばせるのも良い。


 まあ、ぬこに何かあった場合、この街は全て燃やす尽くすのであるが。


 そんなに事を考えていたら、すぐに教会へと辿り着く。さて、どうするか。何発か魔法で威嚇して犯人を炙り出すか? いや、万が一ぬこに当たったらまずい。


 それにしても足元が随分と騒がしいな。見れば教会の者どもが慌てて敷地外へと逃げてゆくのが見える。何だ?


 ふと、鈴の音を耳にした気がする。


 我の聴力に間違いはない。あれはぬこの首輪の鈴の音だ。


 あの一際高い塔の方から鳴ったな。


 我が目的地を定め、移動を開始した直後、塔から落下する人影。


 あれはもしや?


 我が最大速度で近づくと、やはりルラであった。


 目を瞑り、何かを抱きしめていた落下中のルラを抱き抱える。


 我が助けてやったというのに、なおも気づかぬルラ。しばししてようやく、恐る恐る目を開いた。


「……一体お主は何をしておるのだ?」


 呆れる我に、ルラは目を丸くする。そしてその胸元に抱えられた箱から「にゃ」という可愛らしい声。



 うむ。ぬこが無事で何よりである。




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― 新着の感想 ―
『うむ。ぬこが無事で何よりである。』 あ~~良かったぁ~~。ぬこが無事なら何も言うことはありません。 あ、でもやっぱり、無事でなければ全面戦争というより、蹂躙? 街は無くなっていたんですね。 聖女、グ…
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