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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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47/67

【その47:ぬこはどこからきたの?(上)】


 その日我が私室にやってきたルラは、妙に興奮した様子で開口一番、


「すごいこと、分かりましたよ!」


 などと述べる。


 ルラの大きな声に反応したのか、ぬこが耳をぴくつかせて立ち上がると、鈴の音がチリリと小さく響く。


「ぬこが驚くではないか」


 我の抗議にルラは軽く謝罪をしてから、それでもなお、


「そのぬこさんの事で、すごいことが分かったんです」


 と言い、我に迫ってきた。


 何を話すのか知らんが、ぬこに関することであれば耳を傾けるにやぶさかではない。


「まあ、少々落ち着くが良い。今、茶を淹れる、座っておれ」


「あ、大丈夫です。私が淹れますから。この間買ってきた紅茶、まだ残っていますよね?」


「うむ。では任せる」


 最近初めて知ったのだが、人間界の茶は美味い。


 ルラの部屋で飲んだものが、思いのほか美味であったので『特別な茶葉か?』と聞いたのだが、一般的な市販品だというのは驚きであった。


 手先の器用さは茶葉にも影響を及ぼすのであろうか? その辺は分からぬが、ぬこの買い物ついでに手に入れたのである。


 茶を待つ間ぬこと戯れておると、ルラがしみじみと声をかけてきた。


「ぬこさん、だいぶ慣れてきましたね」


「うむ。当然であろう。主人である我の偉大さが、ようやく分かってきたのである」


「主人はどっちかというと……」


「何か言ったか?」


「いえ。何でもないです。お茶、入りましたよ」


 我が椅子に座れば、ぬこがその膝に飛び乗って……こない。ぬこはルラの膝に乗り、まるくなった。


「ぐぬぬ」


 ルラめ。


 こやつもしかして、我が不在の時間にぬこにおやつをあげているのではないか? 我には『おやつはあまりあげすぎないように』と言っておきながら、なんと狡猾な。


「急に睨まないでくれますか?」


「お主が狡いからである」


「全然意味がわからないんですけど……。ともかく、ぬこさんの事です」


「む。そうであったな。ぬこに関する凄い話とは何であるか?」


「実はですね、ぬこさんがどうしてマオさんのところへやってきたのか分かったんですよ」


「それはもう知っておる。転移魔法を通してきたのであろう?」


「それはそうなんですが。おかしいと思いませんか? 魔王城のそばに繋がる転移魔法陣なんて、極秘中の極秘案件です。ぬこさんに限らず、余人が気軽に入れる場所にはありません」


 言われてみれば、まあ疑問ではあるな。


「そういえば、あの魔法陣は地下にあった。今思い返せば、この間壊した建物とよく似ておった。あれは教会の敷地であったか」


「あ、そうか。認識阻害の魔法を使って利用したことがあったんでしたっけ。ではその辺りの説明は省きますね。転移魔法陣は教会の敷地の一角にあり、厳重に警備されています。もちろん、野良猫が出入りするような隙間もないです」


「ふむ。興味深い話だ。ではどうやってぬこは魔法陣を通過したのだ?」


「実は、ぬこさんは私たちの国の猫ではありませんでした」


「何? ではぬこは魔族なのか?」


「いえ、そういう事ではなく、私たちの国から遠く離れた、別の国に住まう種類の猫だったんです。思えば少し不思議だったんですよね。あまり見かけない毛並みでしたし。水を怖がらないのも、その種類の猫の特徴なのかもしれません」


「ほお。なるほどな。で、外国(とつくに)の猫がどうしてルラの国に?」


「はい。実はですね、ぬこさんは王女様に献上されるために、遥々私の国にやってきたんですよ」


 ルラの説明によれば、王女の10歳の誕生日のお祝いをすることになった。こ奴らの文化では、10歳は特別な区切りであるらしい。


「10歳までは神様の子供、10歳からが両親の子供、という信仰があるんです。10歳までは病魔に負けてしまう子供も多いので」


 なるほど、頑丈とはいえぬ人間らしい風習である。


 ともかく、王女の大事な祝いということで、何か特別なプレゼントをとなり、本人に希望を聞いたところ『珍しくて可愛い動物を飼いたい』と言い出した。


 そこで王の命令を受けて、珍しい動物が持ち込まれたのだ。ぬこだけではなく、様々な種類の動物が。


「では、ぬこは城に持ち込まれたところで逃げ出したというわけか。だが待て、流石に献上品が逃げたら騒ぎになるのではないか?」


「ええ。本来であれば」


「本来であれば?」


「本当に、いろんな条件が絡んでの出来事だったんです。まず、逃した商人は、すぐにその事実を知らせませんでした。本人の弁明では、隠蔽するつもりではなく、騒ぎになる前に自分で見つけようとしたらしいです」


「うむ。気持ちは理解できなくはない。露見すれば罰せられる、という恐怖からであるな」


「魔王なのにそんな気持ちわかるんですか?」


「失敬な。まあいい、話を続けよ」


「これが最初の齟齬。そして次に、この日は偶然、転移魔法陣のメンテナンスの日だったんです。不具合がないかを限られた人たちが確認してました。で、試験的に魔法陣を発動させたところで……」


「ぬこが飛び込んだ」


「はい。ぬこさんも見知らぬ場所でパニックだったのでしょう。闇雲に走り回った先が、たまたまこの施設でした。見張りの兵士もいたのですが、あっという間の出来事であったそうです」


「ほお。そんなことが……。だが、そのようなことが起きれば、余計に騒ぎになるのではないか?」


「ところが、そうはならなかったんです」


 ルラは小さく首を振って、事の真相を語り始めた。


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― 新着の感想 ―
猫が魔王のもとに来た事情は大変よくわかりました。 なぜ、問題になっていないかは次回を楽しみにお待ちします。 でも、聖女はそんなことしていて良いのでしょうか?カメラ?写真魔道具?盗難の疑いがかかっていま…
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