【その44:キャッツな、かいとう(3)】
更新予約間違えたので、本日は2話更新です!
ついに写真機を手に入れた。
厳密に言えば、画像を焼き付けるための“ふぃるむ”を。写真機自体はすでに入手していたので、今回のものは壊れていても何ら問題はない。
しかしよくよく考えれば、ホーウィなる者から、“ふぃるむ”だけ貰えば良かったのではないか? いやだが、その場合はルラが協力するか怪しいところであるな。
「マオさん、聞いてます?」
「む?」
「使い方の説明ですよ? ちゃんと覚えてください」
「うむ。すまんすまん。それで、このふぃるむをここにセットして、魔力を込めるのであるな。で、ボタンを押せば良いと」
「はい。写真にするときの注意点としては、なるべく写真機を動かさないこと。ボタンを押したあともしばらくそのままの姿勢を保つことです」
「動くとどうなる? 爆発するのか?」
「しませんよ? 写真がブレブレになります」
「それは困るな。どれだけ動かずに居れば良いのだ? 半日か?」
「しばらくでいいですよ。そのレンズから魔力でふぃるむに絵が映し出されたら、ふぃるむを取り出して新しいものと入れ替えてください」
「魔力は毎回貯めねばらぬのか?」
「いえ。何回分かまとめて貯めておくことができます。ただこれ、それなりに魔力を消費するので一気に貯めるのは大変だそうなんですが……まあ、マオさんなら何の心配もいりませんね」
「無論だ。魔力なら売るほどある」
「ですよね。この写真機があまり流通していないのは、この魔力の必要コストの問題だとホーウィさんが言ってました。なので、ふぃるむもなかなか手に入りません。ここにある分を使い切ったら、それで終わりかもしれませんから、大事に使ってください」
「わかった。では早速」
「私の話、聞いてました?」
「聞いておったぞ。しかし試しに使ってみるのは大事であろうが。……写真機を固定しないとブレるということは、ぬこが激しく動くのもダメということであるな」
「はい。そういうことです」
「ではルラよ、しばしの間ぬこを抱いておれ。ぬこが暴れぬように、最新の注意を払い、優しく抱くのだ」
「はぁ……わかりました。じゃあ一枚撮ったら、私は帰りますからね」
「よかろう。早速準備せよ」
ルラが軽く肩をすくめ、床でゴロンとしていたぬこを抱き上げると、ぬこは特に抵抗することなくルラに身を委ねる。
毎回ここが少し悔しい。我がぬこを抱く時は時折暴れるというのに。ルラの場合は嫌がるのを見た事がないのだ。
「……我がぬこの主人であるからな?」
「いきなりなんですか? それよりもほら、早く」
ルラに急かされるも、枚数に制限があると思うとやや緊張してきた。この魔王に緊張を味あわせるとは、写真機、侮れぬ。
「マオさん?」
「焦らせるでない、今、撮る」
震えぬように全身を硬化させる。かつ写真機は壊さぬようにするには力の加減が重要だ。なんと扱いの難しい代物か。
怪訝な顔でこちらを見ているルラ、抱かれるのに飽きたのか、軽くあくびをしたぬこ。時はない。ここで勝負を仕掛けるのみである!
かしゃり。
「……………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「あの、もう大丈夫だと思いますよ? 確認してみては?」
「よし、開けてみるぞ」
そろるおそる写真機を開いてみれば、
「おお……」
そこには愛らしいぬこの姿が絵になっていた。
何度も写真と実物のぬこを見比べる我。
「わあ、かわいく写ってますねぇ。……じゃあ、私帰りますね。さすがに限界です」
小さくあくびをしながら帰るルラに適当に手を挙げて、我は感動を噛み締めることに集中したのであった。
◇◇◇
「つ、疲れた……」
真夜中に教会を破壊して写真機を奪って、その足で魔王の部屋に行って使い方を説明して、そうしてようやく帰ってきた。
すでに窓からは朝日が差し込んでいる。
埃っぽい体を清めたい。でも、それより何より、とにかく寝たい。
話を持ち込んだのは私だけれど、まさか、教会本部を破壊するとは思ってもみなかった。……本当に、大丈夫なのだろうか。
部屋には誰かいた。こちらもそれどころではなかったので、相手を確認する余裕はなかったけれど、もし、私の姿を見られていたら……。
変装していたから、多分大丈夫だと思うしかない。
「だめ。全然頭が回らないや。とにかく寝よ」
私は着の身着の儘でベッドに突っ伏すと、そのままあっという間に深い眠りについた。
◇◇◇
目が覚めたのは夕方。まだ少し重たい頭を振っていると、外から誰かが私を呼んでいる声が聞こえる。
誰だろう? 片手で寝癖を直しながら、小窓から覗いてみれば、そこには――――。
オリオネートさんが、聖騎士団の人と一緒に、教会の扉を叩く姿が見えたのである。




