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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その23:まおうさまはふきげん(上)】


 ここ2、3日、魔王様の機嫌がよろしくない。


 その変化はわずかではあるが、魔王様の第一の腹心を自負する、このベリアルの目は誤魔化せない。


 そもそも魔王様の様子がやや変わったのは、少し前からだ。以前は軍議なども興味なさげに、話を聞いているだけであった魔王様。


 その目からはなんの感情も読み取ることができず、私はいつも心底恐ろしいと思っていたのである。


 だが最近の魔王様は、わずかではあるがご機嫌がよろしい時と、逆に不快そうな雰囲気を滲ませていることが非常に多くなっている。


 原因ははっきりしている。勇者パーティのせいに違いない。理由は判然としないのだが、ここのところ、立て続けに勇者どもが魔王様の元へとやってきていた。


 あ奴らが魔王様の感情の動きに影響しているのは間違いない。


 まずは不機嫌さ、これは我々配下の不甲斐なさに起因している。こう何度も勇者の侵入を許しては、魔王様とて面白かろうはずがない。


 城外の警備はかなり強化しているのだが、中々補足できずに城への侵入を許していた。


 場内に潜り込まれた場合、ほぼ我々の負けである。魔王様より城内では派手な戦闘は禁じられているのだ。


『戦闘でいちいち城を壊されてはたまらぬわ。どの道、我が一蹴できるゆえ、紛れ込んだ鼠は放っておけ。宝物庫などの警備だけしておけば良い』


 とのお言葉である。確かに魔王様が人類如きに後れを取るとは思えない。


 それに玉座がある部屋は、希少な素材で造られた特別な場所。魔王様が魔法を放ったとしてもあの部屋なれば城が傷つくことはそうない。


 幾ら魔王様がお強いとは言え、臣下としては忸怩たる思いがある。魔王様も呆れているだろう。故にこそ、不機嫌さが滲み出ているのだ。


 そして機嫌の良さもまた、勇者たちが要因で考えて間違いない。


 勇者が簡単に魔王様の元へ辿り着くのは痛恨の極みではあるが、同時に、魔王様の愉悦の時間が増えることを意味する。


 強大な魔力を持て余している魔王様が、気兼ねなくその暴力を振る相手こそ、愚かな勇者たちなのだから。


 時折見せる薄い笑みは、勇者が地獄の炎に包まれる様を思い出して愉悦しておられるのだ。


 魔王様が軒並み滅したため臆したか、それともまともな人材がいなくなったのか、ここしばらくは小康状態が続いているが、またいつ、勇者が虫のように湧いてくるか分からない。


 早急に原因を突き止め、後手を踏んでいる現状を解消しなくては。


 しかし、ベリアルには勇者が増えた理由も、急減した理由も皆目見当がついていないのだ。


 何の手も打てない我ら配下の不甲斐なさに、苛立ちを感じておられるのも無理はない。


「……今日の報告はこれだけで良いか?」


 ベリアルが深い思考に沈んでいるうちに、魔王様が口を開いた。いつの間にか全ての報告が終わっていたらしい。


「はっ! 本日はこれまでにて!」


「うむ。では我は私室に戻る。……わかっていると思うが、緊急の要件以外は部屋に近づくでないぞ」


「ははあっ! 皆、しかと心得ております!」


「よし。では解散である」


 颯爽と玉座の間を出てゆく魔王様を見送ると、軍議に参加していたもの達はバラバラと退出してゆく。だがベリアルはそのまましばらく動かずにいた。


 何か、魔王様がお喜びになるようなご提案はできぬものだろうか……。


「あら? ベリアル様、そのような深刻な顔をされてどうされたのですか?」


 声をかけられてそちらを向けば、


「なんだ、お前か」


 魔王軍の一軍団を率いるラステリアスの姿。


「なんだお前か、とはご挨拶ですわね」


「ああ。すまん。少々考え事をしていたのでな」


「……もしかして、魔王様のご機嫌がよろしくなさそうだった事と、関係が?」


「ラステリアスも気づいたか。うむ、ならば少々お前に相談に乗ってもらうとしよう」


「構いませんわよ」


 そんなラステリアスの言葉に深く頷きながら、ベリアルは己の考えを滔々と話し始めた。



◇◇◇ 



 一体、何が悪いというのか。


 最も良さそうな逸品を求めてきたはずである。


 最初は多少、興味を持ったではないか。


「……ぬこよ。今日もキャットタワーには登らぬのか?」


 せっかく買い求めてきたキャットタワーであったが、どうにもぬこの反応が良くない。店主のエリナにも相談してみたが、


「慣れたら使ってくれると思いますよ」


 とのことであったので、辛抱強く待っているのだが……。我はすぐにでも、このキャットタワーに付いた袋の部分でぬこが丸くなるのが見たいのである!


 我がキャットタワーに手をつきため息を吐いていると、ぬこがゆっくりとこちらへ近づいてきた。


「おお! ぬこよ! ついに!」


 両手を広げ、ぬこを迎え入れる我。


 我を完全無視してその横を通り過ぎるぬこ。


 そしてぬこは聖灰の入ったトイレにぴょんと飛び乗るのであった。




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