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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-17.政略結婚

 一方、母であるポロソバル子爵には野望があった。領内の影響力をさらに強めるために、公爵家と婚姻関係を結びたいと考えていた。

 公爵家にとっても、急に勢力を増した家と繋がりを持ち、嫁を遣って動向に目を光らせておくことは都合がいい。


 ただ、公爵家には未婚の娘が十二歳のシャルロットしかおらず、子爵の子はエイナートだけだった。

 どうせ政略結婚。愛など必要ないと子爵は割り切っていた。しかしエイナートは違ったようだ。


「シャルロットは将来、いい女になるぞ。楽しみだ。だが、放っておくとロクなことにならないな」


 ある夜、酒場でエイナートがハーレムの女たちに語っている。可憐で幼い妻を(めと)るのが、よほど嬉しいらしい。


 自分を慕う女に結婚相手の少女のことを語るなんて、カルラの常識ではありえない。けれどエイナートは気にもしないし、女たちもエイナートの後ろにある財力しか見ていないから、熱心に同意するだけだった。むしろ金持ちの娘が嫁いでくれば、そのおこぼれに預かれると考えていたのかも。


「純真な子供でも、成長するにつれ貴族社会の黒さに染まっていく。ああ、ムカつくな。どうせ染めるなら、俺の好みにしたい」


 女たちが口々に、その通りですとかエイナート様はさすがですとか言う。つまらないお世辞だが、エイナートは満足らしい。


「だから早いうちに、俺に惚れさせたい。俺の頼れる姿を見せた上で、子爵家に早い時期に来るよう説得するんだ。もちろん公爵にもな。ちょうど、いい機会がある」


 聞けば、近々公爵家がシャルロット含め一家揃ってコリングの街を訪れるらしい。管理者が変わった港の視察を兼ねて、家族を連れて出かけるみたいな感覚だ。

 視察の名目があるから一応は公務。プライベートのお出かけならそうはいかないが、管理者である子爵家が出迎えて案内することになる。


 その際の警備主任をエイナートが拝命することとなったらしい。


 もちろん動員するのは、子爵家で雇っている正規の兵。私兵に近いパーティーメンバーはお呼びではないが、エイナートはあっさりと公私混同を決めた。


「ちゃんと警備はするさ。俺の指示で完璧に動く兵士。そのおかげで視察は何事もなく終わる。指揮をする俺の姿に、シャルロットはさぞ熱い視線を向けてくれるだろう。だが、小さい彼女は、周りをむさ苦しい男に固められて守られることを嫌がるはずだ」


 たぶんエイナートは、自分はむさ苦しい男に含まれていないと考えてるのだろうな。


「だから、彼女を含めた公爵家の近辺警護は、君たちにしてもらう。シャルロットも、女性が近くにいた方が安心するだろう」


 それはそうかもしれない。


 この女たちが、ろくに剣も振れない外面だけの冒険者であることを考えなければ、いい考えだ。

 どうせ、荒っぽいことは何も起こらないだろうし。エイナートだけではなく、他の女たちも同じ考えだったらしい。


「カルラ」


 エイナートはこちらを見て声をかけた。


「君が一番腕が立つ。何もないと思うが。もしもの時は頼むよ?」


 そう言ってウインクした。


 こんな男に頼りにされても、別に嬉しくはない。けれどハーレムの他の女たちは、嫉妬するような目を向けた。将来的に正妻、子爵夫人になるとでも思っているのか。シャルロットを押しのけて? ありえない。

 カルラは黙って頷いた。どうせ何も起こらない。気怠い仕事をして、褒められるだけ。


「母上から言われて、庶民の姿を知るために冒険者なんかやらされているが、その経験が活きる時が来た」


 エイナートは己の成功を確信していた。



 だが当日、事件は起こってしまった。



 手はず通り、港を視察する公爵家にエイナートはべったりとくっつき、兵士たちに高圧的に指示を出しては、シャルロットの方へ自慢げな顔を向けた。

 当のシャルロットは、エイナートにはあまり興味を持ってなさそうだったけれど。


 視察も終わりが近づき、エイナートも兵士たちも気が緩み始めていた。


 そこに、一台の馬車が突っ込んできた。


 四頭引きでスピードもパワーもあり、引っ張っられている馬車本体も箱型であちこちが補強してあり重そうだった。

 そして御者席に座っているのは、鎧で武装した兵士だった。表情は見えなかったけれど、動きに迷いはなかった。


 こちらに対する殺意が込められていた。もちろんカルラにではない。子爵家か公爵家に対してだ。


 守ろうとした兵士数人を馬が蹴り倒し、重い馬車が踏み潰した。それでも何人もの兵士が止めようとしたし、剣をや槍を向けた結果、馬は負傷。一頭が倒れると、それに引きずられるように他の馬も転倒した。

 元々の勢いがあったからか、倒れた拍子に足が折れて、馬たちは激痛に(いなな)きながら暴れていた。


 もちろん子爵家の兵士たちも、暴走馬車を止めるために何人もが犠牲になった。彼らもまた骨を折ったのか、何人もの兵士が地面に横たわり、うめいている。


 これで終わりではなかった。御者が降りて剣を抜く。馬車そのものからも数人の武装した男が出てきて、こちらに襲いかかってきた。


 後にわかったことだが、彼らは前に港の管理を行っていた貴族家の残党だったらしい。子爵に乗っ取られた恨みを晴らすための襲撃を行った。管理権を子爵に移す許可をした公爵家も恨みの対象だから、視察の日は絶好の機会だった。


 彼らは没落したとはいえ、それなりの資金力もあるから武装に金をかけられる。普段から訓練もしていたのだろう。


 つまり強敵だった。

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