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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-16.カルラの身の上

 確かにボートのためにギルドに来たし、あと公爵の城に手紙を出す必要はあったけど。


「いつの間にそんなこと」

「もふもふがすごい馬だって、冒険者がみんな褒めてくれて。それで仲良くなったの! 幽霊屋敷のこともみんな知ってたから、ゴブリンかもしれないって教えてあげたわ!」


 それで急に仲良くなれるんだ。すごいなあ。


 街の地下にゴブリンがいるかもしれない。その可能性を信じる者もいてくれた。それは嬉しい。


 幽霊屋敷で変な声が聞こえるという噂自体は知られたものだった。大通りの一等地がずっと空き家だから、みんな変には思ってたのか。そこに納得できそうな説明がされれば、信じる。

 アンリの人柄もあったかもしれないけどね。


 早速手紙を書くことにした。

 公爵宛と、ゾーラ宛だ。


 ゾーラたちには、人手が必要そうだから来てほしいと書いておいた。あと、魔物を寄せるガラス玉を持ってきてほしいとも。

 公爵にも手紙を出した。子爵の息子とトラブルになったけれど、どうやら事態の解決には子爵の力が必要だと。


 馬を飛ばしてくれるという冒険者を見送ってから、僕たちは街の飲食店を探した。


 そろそろ夕食時で空腹になってきたのもある。けど、それ以上に、落ち着いて話したかった。


「カルラ、君のことを教えてくれないか? エイナートとの関係も含めて」

「う、うん……」

「あと、シャルロットのことも」

「……」


 その名前を出せば、カルラは表情を険しくした。


 気持ちはわかる。シャルロットの婚約相手が、あの男。

 歳が倍以上離れた相手との婚姻話は貴族社会では無いわけではないが、それでもシャルロットにとっては戸惑う話だろう。

 だから逃れるべく、歳が近くて地位もある僕に結婚しろと言ったのか。エイナートよりはずっと良いと。


 僕はただのヨナだから、貴族と結婚はできない。シャルロットは宴の際にそれを知って、あの男との結婚が避けられないと悟りショックを受けた。


 で、カルラもシャルロットに思うことはあるらしい。話しづらくても、僕たちは敵ではない。教えてくれるだろう。


「お酒飲む? その方が話しやすいって人もいるみたいよ?」

「い、いいえ。それは、大丈夫……だと思う。……、…………一杯だけ」


 この場での唯一の成人であるカルラは、少し迷った様子ながらもエールを注文。干し魚をかじってからそれを酒で流し込む。


「いい飲みっぷりですね、カルラさん」

「飲まなきゃ、やってられない。ええっと、わたしがシャルロット様に出会い、公爵家に仕えることになったのは、一年前の、こと……」




――――



 カルラの両親は異国出身。ただし出会ったのは、このコリングの街だった。


 父は船乗り。母は、カルラから見れば祖父母にあたる夫婦がコリングの街に移住した後に生まれた子。


 母の祖国は戦争で大きく傷つき、両親は難民として流れてきたとのことだ。幸いにして、コリングの港町で慎ましくも幸せな家庭を築けた。母自身も、港の酒場に職を得られた。

 一方の父は、また違う国の船乗りだった。貿易商の持つ船の船員であり、どんな荒れた海でも突破して、積荷を納期通りに目的地へと運ぶ凄腕の船乗り。酒も大好きで、酒場で飲んだくれていた。


 ふたりが出会い、仲良くなったのは運命だったのだろう。こうしてカルラは生まれた。


 良い家庭だった。母は優しく、父は頼もしかった。仕事の都合で父は家を開けることが多かったけれど、それでも一緒にいる時間は幸せだった。

 カルラが成人するくらいまで、しっかり育ててくれたんだ。いい両親だった。


 ただし、亡くなるのは突然だった。ふたり、立て続けに死んだ。母は酒場でひどい酔っぱらいに絡まれ、殴られて打ち所が悪くて。父は航海に出たまま戻ってこなかった。


 カルラは成人していた。女としては腕っぷしが強く、冒険者の仕事が向いていることがわかった。たまに港に流れ込んでくる魔物を退治するのもうまかった。

 が、家族がいない寂しさを抱えていたのも事実。そこに声をかけられれば、少し惹かれてしまうのも事実。


「やあ。お前は美しいけれど、どこか悲しい顔をしている。俺がそれを癒やすことはできるか?」


 エイナートがそれを見抜く程度には、人を見る目があったのも事実だ。



――――



「そうだったのね。カルラも両親がいないのね。わたしたちと同じよね、ヨナ」

「まあ、うん。事情に多少差はあるけど、同じと言えるかも」


 僕は父が生きているけど、死んだ方がいい相手だし殺すつもりだ。だから親がいないって意味では同じ。


「ぐすっ。お辛かったんですね、カルラさん。両親を亡くすなんて」

「なんでお姉ちゃんが泣いてるの?」

「だってー」


 ティナも勝手に同情して涙を流している。なんなんだこれは。


 当のカルラはといえば、話の前半部分なのに、もうみんなのめり込んでいる事態に戸惑いながら、三杯目のエールを飲んでから次を続きを話した。



――――



 エイナート・ポロソバルは子爵の嫡男。母親である現在の子爵は女ながらも優れた政治手腕を発揮して、港と水路の管理を行い、街に莫大な利益をもたらしていた。

 元はポロソバル家といえば、街に張り巡らされた水路の維持と管理だけを行う、今ほど立場の大きな家ではなかった。港を仕切っていたのは別の家。


 しかしその家に立て続けに不幸があり、さらに汚職が発覚して失脚。その後の政治抗争に勝利した現子爵、エイリス・ポロソバルが立場を乗っ取ったという経緯がある。


 その政治劇や、そもそも他に男児がいたポロソバル家の家督を、なぜエイリスが継ぐことができたのか。黒い噂は多くあるが、子爵家は街の中のみならず領内全体でも存在感を増していった。

 そんな女子爵の御曹司に声をかけられた。


 金持ちというのは偉大だ。エイナートという男には軽薄な印象も受けたけれど、それでも寂しかった時期に声をかけられ、君の力が必要だと言われると心が揺れた。

 結局すぐに、エイナートはカルラの体が目的だったと知ることになったけど。


 カルラは彼を軽蔑したし、体を許すこともなかった。エイナートはそれを恋の駆け引きだと認識したらしいけど。

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