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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-14.エイナート

「あ、あの。長くなりそうならば、私はこれで……」


 僕たちの話を聞いていた物件業者は、さっきから怯え続けていた。

 魔物絡みの話になるとは思ってなかったのか、逃げるように帰っていった。鍵だけ渡して、あとはお願いしますとだけ言った。


 幽霊よりも、確実に存在する魔物の方が怖いよね。


「ね、ねえ。本当に魔物がいるの? いたとして、戦うの?」


 ティアも怯えているらしく、声が震えている。先日のドラゴンの件が怖かったのだろうな。二度も同じ目に遭いたくはないよね。

 一方のティナは元気だった。


「ギルドですね! 行きましょう行きましょう! 相手の正体がわかればこっちのものです! さあさあ皆さん何してるんですか。街に魔物が潜んでいる危機なんですよ!」


 調子いいなあ。


「お姉ちゃん、相手が幽霊じゃないってわかったら、急に元気だね……」

「切り替えの早さは尊敬できるけどね」

「ヨナ様、お姉ちゃんみたいな人を尊敬しちゃ駄目ですよ」

「こういうのも大事だと僕は思うよ」


 会話しながら、街のギルドへと向かう。

 カルラが案内してくれたけど、なぜか気が重そうだった。


 ギルドの前でもふもふを止める。冒険者たちが、なんだあのでかい馬はと驚きの声を上げていた。


 それから、カルラの顔を見て驚く者も。お前の馬かと尋ねてきた男に、カルラが質問を返す。


「エイナートは、いる?」

「ああ。いるぜ。あそこだ」

「そう……」


 男が指差した方に、カルラはゆっくりと歩いていく。僕とティナもついていった。


 周りの冒険者が何人か、カルラを見てヒソヒソと話している。

 ある若い女の集団は特に、クスクスと馬鹿にするような笑い方をしている。理由は知らない。


 そして、金髪の男がいた。カルラと同じ、二十代半ばくらい。彼がエイナートなんだろうか。若い女の冒険者に馴れ馴れしく話しかけていた。


「悪い話じゃないだろう? 俺のパーティーに入れよ。いい思いさせてやるぜ? 俺はいずれ子爵を継いで、この街に君臨する。俺と仲良くしておいた方がいいって。子爵お抱えの冒険者になれるんだからな」


 女は話しかけられて困惑しているようだけど、エイナートなる人物は軽薄な笑みを浮かべながら言葉を止めなかった。そこにカルラが割り込む。


「そこまでに、しなさい、エイナート。困って、いるでしょう?」

「うん? カルラか。俺に会いに来てくれたのか?」

「ええ。そう」

「それは嬉しい! 用を当てよう。俺を忘れられなくて会いに来た。それか……ああ。我が麗しのシャルロット嬢の遣いで来たのか。彼女は息災か?」

「どちらも、違う。地下水路の鍵を、貸してほしい。あなたなら、鍵を手に入れられる」

「地下水路……? なぜだ?」

「そこに、魔物が住み着いている、可能性が、ある」


 魔物。その言葉に周りがザワついた。


 一方でエイナートは冷静で。


「なるほど? それは大変だ。すぐに確認しないと。だが俺は鍵の在り処を知らない。子爵である母上が持っているのだろうが」


 母親が子爵。彼は確かにそう言った。


 ということは彼も貴族だ。なぜそんな立場の人間が冒険者なんてやっているかは不明だけれど、カルラがここに来た理由はわかった。鍵の管理者の近しい者と会えるから。

 エイナート自身が鍵の場所を知って、おとなしく持ってくれば話は早いのだけど、そうはいかないらしい。


 古い上に長らく開けられていないもの。保管はされていても、誰もが場所を把握しているわけではない。


「では、子爵に、取り次いで。わたしは、公爵の、食客。会うのに、支障はないはず」

「んー。そうしたい所だが、母上は忙しくてね。いかに公爵の遣いであっても、簡単には合わせられない。なにか手土産があれば別だが」

「手土産?」

「そうだ。こうしよう。俺とシャルロット嬢の婚約を正式に成立させよう。その挨拶という形なら、母上も時間を作ってくれるさ」


 ピクリとカルラの眉が上がった。


「なぜ、シャルロット様が、出てくるの?」

「俺と婚約の話が出ているからだ。当然のことだろう? いっそのこと、もう嫁に迎えて一緒に住んでもいいと俺は思っている。どうだろうカルラ、不安ならシャルロット嬢の護衛として、君もついてくればいい」


 シャルロットとの婚約? たしかにそういう話は出ていたけれど、こいつが相手なの? かなり歳が離れているし、ものすごく軽薄そうな男だけれど。師匠は許可したのか?

 少なくとも、カルラにとっては許されざる婚約らしかった。


「お断り」


 険しい顔で言うが、エイナートも涼しい顔だ。


「じゃあ、鍵の話も無しだ」



 次の瞬間、カルラが剣を抜いてエイナートへ向けた。エイナートは目を丸くしながらも素早く反応して距離を取り、多少戸惑いつつ自身も剣を抜く。突然の騒ぎに、酒場が騒然となった。みんなが距離を取りつつ、けれど逃げはしなかった。突然の戦闘の結果を興味深げに見ている。


 カルラの動きに迷いはなかった。本気でエイナートを殺す勢いで、長い剣を突き出す。


「おい! カルラ。血迷ったか!?」

「正気じゃないのは、お前!」


 一突きを回避されたものの、カルラは変わらず何度も攻撃を繰り返す。エイナートは当初明らかにおよび腰だったものの、相手が本気だとわかると反撃を始めた。


 迫る刃を自らの剣で払いのけて、自ら踏み込みカルラを押し返す。体重も筋力もエイナートの方が上らしく、カルラは後退を余儀なくされた。しかしエイナートの振った剣を、カルラは難なく防いだ。


 周りは騒然としているが、誰もふたりを止めようとはしない。


 話の流れから、なんとなく理解できた。このエイナートなる男は子爵の嫡男。なんで冒険者ギルドにいるのかわからないけど、街の権力者。あとシャルロットの婚約者。

 カルラが公爵家から重用されているのも、冒険者たちは知っているのだろう。

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