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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-5.シャルロット

 王都の人間である僕やティナも、こんなに広い平原は初めて見た。森に囲まれていた村や街の住民であるキアやアンリも同じ。


「森がないって、なんか落ち着かねぇな……」

「そうかしら! わたしはこういうの好きよ! もふもふ行きましょう!」

「あ! おいこら!」


 アンリがもふもふを、夜の草原で走らせる。狭い屋内にいたのはもふもふにもストレスだったらしく、アンリに元気な返事をしてから気持ちよさげに走り回った。キアが勝手な行動を止めようと追いかけている。


「あははー! 広い世界っていいわね! 最高!」

「あんまり目立つ真似するんじゃねえ! 兵士が追いかけてきてヨナのこと見つけるかもしれないだろ!」

「あ! なんか小さい動物出てきた!」

「ほんとだ見たことねぇなこんな奴! 食えるのか!? おいアンリ! そいつを追い詰めろ! 捕まえたい!」

「ええ! もふもふ追いかけて!」


 静かにするって話はどうなったんだろう。


「アライグマね。巣穴で眠ってたのを起こしちゃったかしら」


 王都の外に何度も出たことがあるゾーラだけは、普段と様子が変わらない。アンリたちの様子を見て微笑ましげに笑っていた。

 その光景に笑みが浮かんだのは僕も同じだ。


「楽しそうだね」

「はい。初めての景色にウキウキしているのは、わたしも同じです」


 みんなが幸せそうなら、それでいいか。


 一方で、不安げな顔を見せる者もいた。

 ティナの家族だ。


 王都で安定した商売をしていたのに、急に外に出ることになるなんて。不安なのは当然だ。

 一家は今、荷馬車で身を寄せ合うようにしている。歩かせないのは、せめてもの気遣い。


「師匠。あなたの領地で、彼らにパン屋を開かせてはもらえないでしょうか」

「ええ。いいでしょう。街にいい物件がないか探させましょう」

「ありがとうございます」


 新しく商売ができるからって、それが全部解決するわけではない。見知らぬ土地で商売がうまく行く保証もない。

 けど、そのくらいの世話はしてあげないとな。



 馬車は南に向かっていく。途中で休憩したり、途中にある街で泊まったりして、数日後には公爵領に入った。



 ガリエル公爵領。王都の南にある広大な土地。他のいくつかの領と接している他、領地の南は沿岸部、つまり海となっているのも特徴。

 領の中には城塞都市が三つあり、公爵の居城があるナーズルの街は堅牢な城壁にぐるりと囲まれているが、残るふたつは沿岸都市であり、海に開かれた港を有していて、交易の窓口としての機能を果たしている。


 当然漁業も盛んであり、ふたつの沿岸都市の他、いくつもの街や村に漁港がある。


 諸外国の人々との交流も盛んであり、沿岸都市では複数の異文化が混ざり合う独特の雰囲気が形成されているらしい。

 港により、経済的にも文化的にも、また食料供給の意味でも豊かな街。


 一方で、海には魔物が存在していて、しばしば船や沿岸部を襲う。さらに外国が攻めてくる可能性にも備えなければならないから、強大な陸海軍が常備してある。

 いざというための戦力になる冒険者も多くいるため、軍事的にも強大なのがこの領地の特徴だ。


 もっとも、軍備が多ければそれだけ出費もかさむ。それと街の収入でどうバランスを取るかが問われる、難しい領地経営が求められる。そしてガリエル家は代々それを乗り切ってきた。ついでに王家の剣術指南役も務めてきた。

 すごい家だよ。


 王都ほどではないけれど立派な城門をくぐる。城門付近と街の中心が栄えているのは、このナーズルの街も同じ。そして街の中心には、ガリエル家の居城がそびえ立っている。

 街の性質を表すように、質実剛健。堅牢と呼ぶにふさわしい立派な城だった。


 僕が来るということは、公爵は既に早馬で城に知らせていたらしい。公爵の帰還以上に丁寧な出迎えを受けた。

 公爵家の人間が総出で僕を待ち構えていた。


「ヨナウス殿下、ようこそお越しいただきました。亡くなったという知らせが来た時は悲しみましたが、よもやこんな事になっていたとは……」


 ブロン・ガリエル公爵の長男にして、次期公爵となる男に挨拶を受ける。その妻も深々とお辞儀をした。

 彼らとは顔見知りだ。公爵家が王都に招かれることが何度かあり、その度に顔を合わせている。といっても数回程度だけれど。


 それでも彼らの顔は印象に残っている。師匠の家族というのもあるけど、それ以上に。


「ヨナウス様!」


 女の子がひとり、駆け寄ってきて僕の手をとった。


 次期公爵の娘であり、今の公爵の孫にあたる。僕と同い年の女の子、シャルロット・ガリエル。

 銀色の長い髪が特徴的な、可愛らしい子だ。


 同い年の貴族は、僕には珍しかったから。もちろん王都にも貴族の子息はいたものの、僕の立場の微妙さもあり、あまり仲良くはなれやかった。

 けれどシャルロットだけは、僕と仲良くしてくれた。


 そんな彼女は、ぱっちりとした目に涙をたたえていて。


「良かった。お亡くなりになったと聞いて、本当に悲しくて。でもっ。こうやって、また会えて。よかっ。よかった……!」

「うん。心配かけたね。ごめん」

「ヨナウス様! もう安心です。城にいるのはみんなヨナウス様の味方です!」

「ありがとう」

「そ、それで、ヨナウス様。あの、えっと」

「うん」


 感情が揺れて、うまく話せないらしい。気持ちはよくわかる。だから、黙って先を促した。するとシャルロットは意を決した顔になって。


「ヨナウス様! わたしと結婚してください!」


 大きな声で言い切った。

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