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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-3.王都の様子

 すると、コンコンコンと扉が三回ノックされた。


 あらかじめ決めていた合図。仲間だから警戒しないで良いというもの。

 すぐに、ゾーラとキアとアンリが家に入った。


「ただいまー。帰り一緒になっだんだ。夕飯買ってきたぜ。にしても、都会の市場って思ってたよりつまらないな。牛とか鳥の肉しか売ってねえ」

「それが普通なのよ」

「もっと珍しい肉が食いてぇな。トカゲとか」

「そんなの売ってないから」

「ふたりとも楽しそうね。ヨナくん、あたしは学術院に顔を出して来たわ」

「兵士に見つからなかった?」

「大丈夫。向こうはあたしの顔、覚えてないだろうし」


 キアやアンリはともかく、ゾーラはドラゴンとの戦いの際に兵士と何度も顔を合わせていた。

 けど、夜のことだったし兵士たちも自分の戦いに必死だった。だからゾーラの顔はちゃんと覚えてないし、咎められても人違いと言い逃れできると踏んでいるのか。


 で、この三人は外に出て情報収集や買い出しをしてくれている。


 アンリはギルドに顔を出して、先輩冒険者の指導を受けながら弓の訓練をしているらしい。誰とでも友達になれる才能は素晴らしいな。

 ゾーラからは、役所からの情報が得られるからありがたい。


「なにか新しい情報はあった?」

「普段行かない市場も、ちゃんと見ればいいものね。活気があって、そこで働く男の子は元気があっていいわ。店番とかしてる働き者の男の子を見るのが、最近の楽しみ」

「そういうこと知りたいんじゃなくて」

「こいつ、いつか兵士にヤバい奴って思われて連れて行かれるぞ」

「学術院なら学校の運営にも関わってますよね? ゾーラさんはそっちの道には行かないんですか?」

「学校に入る直前くらいの子が一番いいのよ。学校にいるのの大半は、思春期の汚れた成長をした男どもだけ」

「変態な上に面倒なこだわり持ってますね……」

「そうじゃなくて、ここから脱出できる見込みがあるかは、わかった?」


 訊けば、ゾーラも真面目な顔をして。


「城門の警備はかなり厳重よ。通行する人間ひとりひとりの顔を確認する以外にも、馬車の積み荷も徹底的に調べてるそうよ」

「そっか。じゃあ隠れて脱出は難しいか」

「ええ。おかげで王都から出るのに時間がかかって、不満を感じてる人も多いそうよ」


 入るのには身分証の確認が必要だけど、出るのは基本的に素通りだ。危険人物を街の中にいれないための措置だから、出る人間に門番は興味がない。

 重大事件が起こった時に、参考人を外から出さないための緊急配備なんかが無ければ行われないこと。そして今はまさに緊急配備中で、それが三日続いているというわけだ。


「この確認がいつまで続くかが問題だね」

「ええ。出入りしてる商人なんかは特に迷惑してるそう。貴族たちの御用商人もね。それに確認のために兵士の人手が割かれて、入門の方にも支障が出ている。出入りそれぞれで列ができてしまって、大変らしいわ」


 みんな辟易してるなら、いずれは改められるかも。


 いつかは知らない。父が諦めるとは思わないから、ずっと先かも。あの父が、現場の兵士や庶民の不満に関心を持つとは考えにくいし。


 強行突破して脱出は、少しは考えた。

 僕の異能は相変わらず健在で、木の棒を握れば何でも切れる聖剣になってしまう。ただし、光の線がドラゴンを貫いた、あの技は出ないようだった。


 あの時なぜ出せたのかは、わからない。敵と英雄的行為を前に、精神が高揚していたからだろうか。僕の精神状態によって、技が出せたり出せなかったりするらしい。

 一応。魔物を怯ませるくらいは出来るけれど、大きな技は無理そうだ。

 あの破壊力があれば、城壁は容易く突破できるだろう。


 でも、やってはいけないと、すぐに冷静になった。さすがに被害が大きすぎる。私的な目的で、誰かを傷つけたり迷惑かけるわけにはいかない。

 だから今は、機会を伺い続けてるわけだ。


「ああ。かわいそうなヨナくん。暗い部屋の中で閉じこもって出られないなんて」


 僕に抱きついて頬擦りするゾーラ。

 確かに、明かりを灯すと空き家に人が住んでいると怪しまれるから、暗い中の生活を強いられているけど。


 すぐにティナが来て咎めた。ティナもまた、対抗するように抱きつきながら。


「ちょっとゾーラさん! なにやってるんですか!? ヨナ様に胸を当てないで! なんかこう、良くないと思います! 巨乳は駄目です!」

「貧乳には当てる胸もないものね」

「言ってくれますね! わたしだってこれから大きくなるんです!」

「今小さいなら、これからも小さいでしょうよ」

「むきー!」


 僕に抱きつきながら、そういう話はしないでほしいなあ。


「まあでも、実際不便だよな。人目を避けながら隠れて暮らすなんて。家の中に馬もいるし」

「なによ。もふもふが家の中にいてもいいでしょ?」

「いいけど、でかいし」

「仕方ないじゃない! わたしがちゃんとお世話してるから、別に臭いとかは気にならないでしょ!」


 キアとアンリも言い合っている。元気だなあ。


 もふもふは目立つから、それもこの家に隠している。屋内でもおとなしくしてくれるあたり、賢い子だ。けど、やっぱり大きな馬がいれば過ごしにくいって意見はわかる。だから、こういう言い合いが起こる。

 仲間たちは今日も賑やかだった。潜伏生活中なのに。


 仲がいいのは素晴らしいけれど、騒がしすぎると外に声が聞こえてしまう。僕たちは潜伏生活中であり、誰か不審に思われるとまずい。

 そう考えて、静かにするように言おうとしたところ。


「誰かいるのですかな?」


 外から声をかけられた。


 この空き家の中にいるべき人間は全員いる状態。つまり部外者が、こちらに気づいたということ。

 緊張が走り、それぞれの武器に手をかけた。必要とあらば、扉の向こうにいる誰かを殺して口を封じる。その覚悟すらあったけど。


 向こうの彼は穏やかな声で続けた。


「そうピリピリしなさるな、ヨナウス殿下。私は味方です。昔から何かあると、ここに来ていましたね」


 僕の名前や、この空き家のことを最初から知っている口ぶり。声をよく聞けば、知った人物だった。


「師匠、なのですか?」

「はい。ヨナウス殿下、開けてくださりませんか? 私ひとりだけです」


 恐る恐る扉を開ける。確かに僕の剣術の師匠、ブロン・ガリエル公爵がいた。言葉通り、随員がいる様子はない。

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