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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第1章 長男

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1-46.みんなの協力

「お婆さん。この呼び方は僕がティナに指示したんです。ティナは、近衛兵として立派にやっています」

「ああっ! ヨナウス殿下はなんと寛大な……」

「ほら母さん、殿下もこう仰っていることですし、行きましょう」


 ティナの父もお婆さんの説得に当たっている。


 とはいえ、ドラゴンはこの近辺を飛び回っているわけで。不用意に外に出るわけにはいかない。

 どうしたものかな。


「なあ。パン屋ってこんなに薪とか油とか使うものなのか?」

「使うんじゃない? 繁盛してる店のようだし」


 キアたちが話していた。店の中にはそこかしこに、薪のストックと油の壷が置いてあった。


 そういえば前に聞いた。増産体制に入って薪と油を買い込んだって。


 これ、使えるかも。


「みんな。聞いてほしい。今からドラゴンを倒す」


 呼びかけて。簡単に説明をして準備に入る。


 まずはキアを外に出し、アンリを探させる。一旦パン屋の前に来てほしいと。

 それから、他の人員で広場まで薪と油を運ぶ。大量の人員が必要になる。ゾーラたちやティナの家族だけでは人手が足りない。となれば。


「ヨナ様。ちょうど兵隊さんたちが来たみたいですよ」


 広場を囲む人員だけではなく、一応はドラゴンを追いかけるべく騎兵を中心とした兵士が編成されているらしい。あまり意味はないけど、ちょうどこっちに来た。

 これはいい。手伝ってもらおう。


 呼び止めて兵士たちに話をしていると、何事かと周囲の家々から顔を出す者がいた。避難が遅れて、屋内に身を潜めていた人たちかな。


「いいですね! あの人たちにも手伝ってもらいましょう! 話してきます! 皆さーん! ちょっとご相談が!」


 ティナにとってはご近所さんだ。他の家族も周りに声をかけて、危険ではないと説明した上で協力を取り付けていった。

 こうして、だんだん人が集まっていくと、何事かと少し離れた所から様子を見に来る人もいて。

 その中に、見覚えのある顔を見つけた。


 村で狼に襲われて生き残った冒険者だ。


「また会ったわね。あなたの妹は無事よ。あなたを雇ったお金持ちは、もう死んでるわ。だから安心して帰りなさい。あ、あたしたち妹さんにお別れできなかったから、それだけ代わりに謝っておいて。それから、ドラゴン退治に協力してくれないかしら?」


 ゾーラが一気に言い切って、無理やり協力を取り付けた。


 彼が王都で知り合ったらしい冒険者仲間にも次々に声をかけて、協力者の数はどんどん増えていく。

 やがてアンリともふもふが来た。


「僕を乗せて、街を大回りしてドラゴンを引きつけるんだ。準備ができたら、広場の西側から侵入する」

「ええ。わかったわ。広場がどこかわからないけど」

「僕が教えるよ。ゾーラ、西側でいいんだよね?」

「ええ。そこが一番都合がいいの」

「わかった。あとはよろしくね。ティナもキアも」

「はい。ご武運を」

「こっちは任せろ」


 僕とアンリを乗せて、もふもふが駆け出した。多くの人々が歓声を上げて見送ってくれた。彼らを巻き込まないよう、すぐに道を逸してドラゴンを誘導。

 アンリは弓を持っている。借りて、追いかけてくるドラゴンを狙ってみたけど、当たりそうもない。


「やっぱり駄目だな」

「ジェイザックも、弓を使った伝説は無いらしいわ! だからその仕事は優秀な仲間に任せなさい! ヨナにも仲間がいるんだから。わたしたちみたいなね!」

「うん、そうだね」


 ドラゴンは真っ直ぐこちらを睨んで追いかけている。お互い様だが、しつこいほどの執念だ。


 よほど人間を狩りたいと思っているのか。それとも。


「ジェイザックはダークドラゴンを封印したのよ! まさにあれなのかも! だから子孫のヨナに恨みを持ってるのかもね!」

「子孫だってわかるの?」

「わかるんじゃない? さっき追いかけられてた時より、顔が怖いもの!」

「そう……かな?」

「ええ! 間違いないわ! さっきまでは、魔物寄せのガラス玉に釣られてたのよ! だから顔が違うのね!」


 アンリの声は確信に満ちていた。ずっと追いかけられただけあって、説得力もある。


 確かに、パン屋前にいた多くの人々ではなく、僕を執拗に追っているようだった。


 追われ慣れた結果、アンリは街の構造をある程度把握していた。僕も知らないような細い路地を抜け、川に掛かる橋を渡ると見せかけて飛び降りて川沿いを走ったりして、ドラゴンを撹乱し続けた。

 そろそろ広場も準備できたかな。


「アンリ。あっちへ向かって」

「ええ! もふもふ、もう少し頑張ってね!」



――――



 ああ……。ああっ!


 "それ"は心底悔しかった。憎むべき血脈の人間を見つけたのに、他のことに気を取られるなんて。

 きっと魔法に違いない。それか魔法を使った道具かだ。


 だがもう迷わない。殺さなければならない血は、ちゃんとわかっている。今、眼の前で馬に乗って走っている子供だ。あいつを絶対に殺す。


 "それ"は理解をしていた。ここには、殺すべき血脈がふたりいる。眼の前にいる子供と、自分の封印を解いた者。


 その両方を殺す。絶対に殺す。



――――



 兵士や市民たち、多くの人の手伝いで、薪や油を広場まで運んだ。足りない分は周りの家々にお願いした。

 指揮を取るのはゾーラだった。王子から託されたと言えば、軍のお偉いさんも従ってくれた。


 ちなみに、正真正銘の王族が出てくる様子はない。みんな軍部に頼りきりで、城に閉じこもっているのだろう。追放した息子が活躍しているなど、夢にも思ってない。


 広場の西側で指揮を取りながら、ゾーラは木の一本を見上げる。


 旅に出ることが多いゾーラといえど、生まれついての王都民だ。この広場には何度も行ったことがある。住まいの立地上、この方向から入ることが多かった。

 だから、広場を囲むように植えてある街路樹の、この方向にあるやつは記憶に残っている。


 一本、他より細長い木があった。上に上に伸びていくそれは、ドラゴンを落とすのにぴったりだ。


「ゾーラ。準備、あらかたできたぜ」

「ええ。ありがとう」


 キアの言う通り、市民の憩いの場は大きく姿を変えていた。


 街路樹には油がかけられて、既に木の中に染み込み始めている。街路樹の間隔を埋めるように大量の薪が積まれて、そこにも油がかけられている。

 広場の中も同様。西から東に至る細い道を残して、一面に油が撒かれて薪が乗っている。


「じゃあ、ヨナくんたちが来たらお願いね。あたしは今から集中しなきゃいけないから」


 木に狙いを定めて杖を向ける。普段、足止めに使う蔓が木の根本から生えてきた。

 魔力を集中させたため、普段よりも太くて長い、力強い蔓が幹を這う。上の方まで伸びていったそれは、枝に絡みつくと締め上げてボキボキと折り始めた。

 太い枝がいくつも落ちて、幹だけの姿にしてしまう。根本も蔓が締め上げて、折る。折りやすいように、兵士の何人かが剣を振るって幹に傷をつけてくれた。


 一本の木が、巨大な槍へと姿を変えた。


「はあ……はあ……さすがに疲れるわね。ヨナくん、早く……」


 来た。蹄の音が聞こえる。

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