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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第1章 長男

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1-45.ティナの家

 夜空をドラゴンが飛んでいるのが見えた。


「まずいな。これだと広場に誘い込む意味がない」


 そこで取り囲んで一斉攻撃したとしても、簡単に逃げられてしまう。


「ゾーラ、飛んでる相手を落とすにはどうすればいい?」

「普通に考えれば、矢で翼の根本を射抜いて落とすしかないわね」

「だよね。ということは、僕が矢を射ることになるのかな。広場に着く直前で、ちょうどそこに落ちるように……」

「ヨナくんは矢を扱えるの?」

「王族だから。練習したことはある。正直、下手だったけど。でも僕がやらないと。僕の作戦に、みんな協力してくれてるんだから。僕が」

「ふふっ。ヨナくん」


 ゾーラが僕に体重を預け、耳元で語りかけた。柔らかい感触が背中に当たる。


「なんでも自分で背負い込むことはないわ。あたしも弓は使えないけどね。ドラゴンを落とすのはあたしに任せて」

「出来るの?」

「ええ。途中でおろしてね。あと、ドラゴンを広場におびき寄せるのは、広場の西の方向からにしてちょうだい」

「うん。わかった。そこは任せるよ。ありがとう、ゾーラ」

「どういたしまして。あたしとしても、男の子の活躍の手伝いが出来るの、嬉しいわ」


 馬から振り落とされないよう、ゾーラは元から僕の腰をしっかり掴んでいた。その両手を僕の体に回して抱きつくようにして、脇腹をそっと撫でながら言う。

 欲望を露骨に出しすぎている。けど、だから信頼できるんだよね。


 すると前方で、ドラゴンが急に姿を表したかと思えば前の建物に激突。大きな音と風が起こる。


 馬が驚いて、急に止まってしまったから、僕たちは揃って振り落とされて、近くの民家の扉に背中からぶつかってしまった。



――――



 もふもふに乗ったアンリは街の中を逃げ回っていた。

 なんとか男爵が気に入っていた馬というのはさすがで、一日中走っているのに疲れる様子はない。なんかすごいあだ名がつけられるだけはあるな。この子の名前はもふもふだけど。


 空を飛ぶドラゴンがこっちを狙ってくるのを、もふもふは回避し続けた。建物の間をすり抜けたり、時に屋根を走ったりして。

 奴が闇を吐き出すには、立ち止まって息を吸わなきゃいけない。その間に逃げればいいだけだから、闇を吐くことは心配しないでいい。


 ただ、いつまで続ければいいのかっていう心配はあった。もふもふだって永遠には走り続けられない。いつかは疲れて倒れてしまうし、倒れてほしくはなかった。


 それに、逃げてばかりなのも嫌だ。こっちはアンリーシャみたいな活躍をしたい。なのに矢の一本も当てられないなんて。

 確かに、弓の腕はまだまだだけど。せめてドラゴンに痛い目に遭ってほしい。


 というわけで。


「もふもふ! そこを真っ直ぐ! 全速力!」


 少し狭い路地が真っ直ぐ続いている。そこを全力で走らせる。ドラゴンも全力で追いかけてきた。

 その道は大通りに直角に交わっていた。広い通りに出た瞬間に、ドラゴンはこちらに喰らいつこうと高度を下げながら速度を上げて。


 アンリはもふもふを、ドラゴンには狭すぎる道に誘導した。


 馬なら通り抜けることができたけど、ドラゴンには無理。頭だけなら突っ込めたけれど、胴体や翼は両隣の建物に激突。


「どうだ参ったかー! 痛いでしょ!」


 と、勝ち誇ってみる。実際、ドラゴンは抜け出そうと翼をバタつかせて必死にもがいている。

 今のうちに、もふもふを休ませようと止まらせて、ドラゴンに向かい合う。


 それはいいんだけど、気になることがひとつ。


 ヨナたちの悲鳴が聞こえた気がするんだよね。というか、大通りで馬に乗ったヨナの姿を見た気がする。


 さっきのに巻き込んじゃったかも。



――――



「いたた……。ゾーラ、大丈夫?」

「ええ。怪我はないわ。アンリちゃん、やってくれたわね」

「うん」


 ドラゴンの前をもふもふとアンリが駆け抜けて行ったのはチラリと見えた。

 多少なりともダメージを与えられたのはいいけれど、ドラゴンはすぐに抜け出して再度暴れるだろう。


「おーい。ふたりとも無事か?」


 キアの声がした。しかも上から。

 僕がぶつかった建物の屋根に座って、こちらを見下ろしていた。


 その際、建物の看板が見えた。

 パン屋さんだった。


「ほらー! お婆ちゃんがグズグズしてるから! なんか外が大変なことになって……ヨナ様!?」


 そしてパン屋の中からティナが顔を出した。


「なんで倒れてるんですか!? お怪我は!? どこか痛いところはありませんか!?」

「大丈夫。ここがティナの実家?」

「はい! ようこそ! どうぞ上がってください! 狭い場所ですけど! あとおもてなしも出来ませんが!」


 それどころじゃないしね。

 起き上がれば、ティナの向こうに顔の似た女の子と、夫婦と老婆がいた。


「この人たちは?」

「家族です! なんか避難するのをお婆ちゃんが断って……と、とにかく中に!」


 ドラゴンが家の近くで路地に顔を突っ込んでいる。それを見て、ティナは僕たちを家の中に招き入れた。


 間一髪、扉を締める直前に、ドラゴンは路地から抜け出してアンリたちを探し始めた。もし僕たちが見つかってたら、こっちに襲いかかってきただろう。


「ごめんなさいヨナ様! 避難してって言ったんですけど。ヨナウス殿下の命令でもあるって言ったんですけど! お婆ちゃんが聞き入れてくれなくて!」


 手を合わせて謝るティナ。

 彼女の家族は、急な王族の訪問に驚いたり恐縮したりで忙しそうだった。


 特にお婆さんはすごかった。こちらに跪いて祈りのポーズをしている。ありがたやありがたやと、小声で何度も唱えていた。

 王族は尊敬されるものではあるけど、ここまではちょっと戸惑うというか。


「王子が自ら王都の危機に立ち向かっているのに、自分だけ逃げるわけにはいかないとか。亡くなったはずの王子が復活して戦うのは奇跡だとか。あと……わたしがヨナ様って呼んだら、王子に対して呼び方が軽すぎると。そんなので何が近衛兵だと」

「あー。うん」


 みんな、僕が家族から疎まれて追放されたとか知らないもんね。

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