表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第1章 長男

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/128

1-24.町への入り方

 疲れと眠気を解消した僕たちは、ヴェッカルの町に行くための準備をした。

 まずは村の現状の確認。町の兵士の遺体は今も村の一角に安置されている。この情報は、まだ村の外には漏れ出ていない。


 狼の赤い毛皮は、結局記念品として残されることになったらしい。村長の家に飾られている。骨は砕いて畑に撒かれるらしい。肉は森に戻された。森の木々が豊かになる養分として活用される。


 まず、王都に人を向かわせた。どこかの兵士の死体が十人分出てきた報告するために。こちらはヴェッカルの町の兵士だと知っているけど、知らないふりして王都へ向かわせた。


 ヴェッカルの権力者が、兵士たちが失敗したことを知れば隠蔽を図る可能性があるから。その前に第三者に話を広げて騒ぎを大きくする。十人の死体は、王都の軍が動くには十分だろう。これでヴェッカルの黒幕を牽制する。


 同時に、周りの村にも噂を流すことにした。魔物としか思えない狼が狩られたことや、その魔物がどこかの兵士を大勢殺したこと。そして、狼を殺したのは十二歳の少年だということ。

 噂は広がり、やがて町や王都にも到達するだろう。村長の家に行けば毛皮という証拠があるから、信憑性も高い。

 いずれ、兄や父や追手の耳にも入る。


 狼を殺したのが僕だと、わかる人にはわかるようにする。


 噂の中で、少年は村の狩人たちをまとめ上げて適切に指示を出し、兵士を返り討ちにした狼を見事に討ち取ったということにした。人の上に立つに相応しい堂々とした態度で、その姿はまるで初代国王ジェイザック・ライディオンの伝説と重なって見えたと。


 自分で噂の中の自分の姿を格好良く盛ることにについて、恥ずかしさが無いわけではない。僕自身で考えたやり方だけど、どうかと思う。と、みんなに話したら返事が返ってきて。


「いえ! 狼に立ち向かうヨナ様は格好良かったので、それくらい盛っても問題ないと思います」

「ふふっ。凛々しい男の子っていうのも、いいわね。可愛い子が頑張ってる姿からじゃないと得られない良さってあるのよ」

「いいんじゃねえか。村の狩人だって成果を大げさに言うことはよくあるし、ヨナのも普通だろ」


 みんなありがとう。恥ずかしさが増した気がした。


 とにかく、これで追っ手を誘導することができる。

 その少年は村の南の方向へ旅立っていったと、噂の中に付け足した。こうすることで捜索を撹乱する。


 噂を流すなんて面倒な仕事を、村人たちは快く引き受けてくれた。美味しいパンの作り方を伝えて村の幸福度を上げた上に、狼のせいで十五年間も行けなかった祠の向こう側へ行けるようにしたわけで。それくらいは協力してくれるとのことだ。


 それから、生き残った冒険者の男は、王都で一時的に身を隠してもらうことにした。地元に戻れば危険があるからだ。

 そう提案をしたところ。


「なあ。町に病気の妹がいるんだ。世話してくれないか?」


 との返事が来た。これが、彼がヴェッカルに留まっている理由。

 そういうことなら仕方ない。様子を見に行くか。


 こうして準備をして、もう一日村に泊まり、翌朝村人たちに見送られながら出発。ちょうど町に作物を納品する農家がいたから、それが動かす荷馬車に乗せてもらえた。

 四人、何かの穀物が入った袋の隙間で、小さくなって座る。


「柵で囲まれている町の門には、城塞都市と同じように兵士がいるわ。入るには身分を証明する物が必要。冒険者の登録証とか、わたしの学術院の身分証とかね」


 ゾーラが一枚のカードを見せる。


「わたしは兵隊としての身分証があります!」

「それは捨てなさい」

「なんでですかー!?」

「僕と一緒に探されてるからね。王都から来た追手が、町の門番に話してるかもしれない。僕のことは公にできなくても、ティナって名前の新兵が脱走したとかの名目で捜索するのは堂々とできる」

「えー! わたし脱走とかしてないのに!」

「だから、とりあえず町に入る時は別人を装うの。入ってからは冒険者に登録すればいいわ。それは本名でも問題ない。ありふれた名前だしね」

「うぅっ。憧れの兵隊さんの証明が……」

「大丈夫だよ。証明書なんかなくても、ティナは僕の近衛兵だから」

「!! そうですよね! ヨナ様がそう言っていただけるなら! こんな紙切れポイですよ!」

「お前の切り替わりの早さ、怖いんだよ」


 ティナが身分証をビリビリに破いて森の中に捨てるのを見てから、ゾーラは一枚の紙を取り出した。


「昨日、村長に頼んで書いてもらったの。村人三人、町に入れてもらうための許可証ね。本当ならここに領主の代理人のサインが必要。でも、これを見せて通行料を払えば通れるわ。サインはあとから役所に行って貰えればいい」


 代理人というのは、時折都市から視察にくる役人のことらしい。あの村の場合は王都だ。

 視察のついでに門の通行許可を下す業務もしているという。


 しかし村人だって町に用事があるし、緊急事態だって起こる。そういう時に、視察を待っている暇はないから、こういう方法も用意されている。

 村長が用意しなきゃいけないものだから、文書としての格式もちゃんとある。


「これ、公文書なんですね」

「あの村長、あんななのに偉かったんだな。知らなかった」

「キアさん、育ててもらったんですよね?」

「村長がどんな仕事してるかなんか、全然見てなかったからなー」


 キアらしいな。


「通行料もそんなに高くないわ。あなたたちなら余裕で払える」

「あの金持ちどもから盗んだ金でなー」

「そのやり方はどうかと思いますけど、今は良かったです」

「わたしは本物の役人。その口添えがあれば通行に問題はないわ。あなたたちは偽名だけど気にしないで」


 確かに許可証にはキアの名前と、知らない男女の名前が書かれている。


「村の男の子と娘の名前だけ借りたの。この名前にあまり意味はないけどね」


 門番が守る門に入ること自体、全く気にして無さそうなゾーラ。

 それは事実だったようだ。


 やがてヴェッカルの町が見えてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
証明書を破るティナの思いきりの良さに笑いました( *´艸)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ