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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第1章 長男

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1-20.人食い狼

 耳元で釈明するティナに頷き、無抵抗で連れて行かれる。大きめの木の陰に身を潜めることになった。

 キアを黙らせたのは、案の定ゾーラだった。


「ぷはっ! おいどういうことだよ! びっくりしたじゃねえか!」

「静かに。武装した兵士がこの森に入っていったわ」

「え」


 ゾーラが手短に経緯を話してくれた。


 僕たちが起きたことはバレてたみたいだ。夜中に森へ出歩くなんて、用事は狼しかない。止めようとついて行ったところ、別の一段が村を歩いているのを見つけた。

 全員がランプを持っているから、遠巻きにでもよく目立った。彼らは密かに村に入ったらしく、すでに眠りについていた村人たちに気づいた様子はない。


 金属製の鎧を装備した集団。鎧の意匠は同じもので、どこかの町の兵士だと思われる。お金持ちの雇った私兵かも。

 森では動きにくいとの判断からか、武装は槍ではなく剣。


 彼らを案内するのは、冒険者風の男。たしかこっちの方だったはず、みたいなことを言いながら夜の村を先導していた。祠の方に向かっているようだった。


 ただ事ではないと、闇に身を隠しながら僕たちを追いかけたというわけ。


「闇に身を隠しながら?」

「闇魔法使いだから。光を遮るカーテンを作れるのよ」


 目の前に真っ布が垂れ下がった。試しに壁の向こうにランプを回り込ませたけど、何も見えない。

 光を一切通さない遮蔽物を出せば、夜なら闇に紛れて移動することができる。


「アタシのすぐ後ろに来るまで、気配を全く感じなかったぞ。足音すら」

「ゾーラさんの闇を靴に纏ったら、足音が消えるようになったんです」

「こんな風にね」


 ゾーラが杖を振ると、僕の足に黒いものがまとわりつく。


 足を蔓で縛る魔法の応用かな。なんかフワフワとした感触だけど、気持ち悪くはない。

 その場で足踏みすると、確かに足音が一切聞こえなかった。


「みんな隠れて。あれ」


 ゾーラが注意を促したけど、僕もほぼ同時に気づいていた。


 静かな夜の森の中で、鉄の鎧をガチャガチャ言わせながら歩いていれば嫌でも目立つ。ランプも多いしね。


 こちらのランプは闇のカーテンの裏に隠して、向こうの様子を見る。


 確かに兵士の集団と、それを先導する冒険者風の格好の男がいた。兵士の数は十人。

 風というのは、確信が持てないから。けど僕も王都で冒険者は見たことがある。似たような格好なら、そうなのだろう。


「こ、こっちのはず、です。間違いありません!」

「本当だろうな? お前の言うことは信用できん」

「本当です! 嘘なんかついていません!」

「だが、魔物寄せの魔道具を紛失した。祠に隠したなどと下手な言い訳をして」

「それはっ!」


 ガラス玉は回収されちゃったからね。さっき祠を開けたとしても、遅かった。


 彼がお婆さんの見た、狼に襲われて逃げた冒険者か。仲間を見捨てて逃げたはいいけど、依頼主からは逃げられなかった。もしかしたら町のお偉いさんからの依頼だったのかな。兵士をあの数動員できる立場の、貴族とかだろう。

 どんな依頼だったのかは知らない。けれどガラス玉は依頼主から支給されたもののはず。依頼に失敗してガラス玉も紛失となれば大問題だ。

 魔道具なんて、あの冒険者に弁償できるものじゃないだろうし。


「行きましょう」


 ゾーラの小声に応じて、こちらも移動する。足音を消しているから、向こうに気づかれることもない。

 というか、向こうも背後を警戒したりはしていない。頭数がいるのに、みんな前しか向いていない。


「町の正規軍にしては練度が甘い。せいぜい貴族の私兵くらいかな」

「はい。わたしも同じ意見です。行軍の時には周囲の警戒を怠らない。訓練兵として始めの方に習いました」


 彼らも習ったのかもしれないけれど、身についてはいない。実戦想定の訓練などしてなかったか、どうせ夜の森に目標の狼以外に危険などないと油断しているのだろう。


「方向は合ってる。血の跡は見てないようだから、あの男の記憶頼りだけどな」

「一歩間違えれば森の中で遭難しそうね」

「森を歩き慣れてなさそうだもんな。あ、転んだ」


 兵のひとりが、ガチャンと鎧の音を響かせながら転ぶ。何やってんだよと、仲間がゲラゲラと笑った。全員の注目が転んだ兵に向いて、背後にいるこちらに気づくかもと慌てて木の陰に隠れた。

 その様子はなかったけれど、とにかく彼らは大きな音を立てながらも前方の注意を疎かにしていて。


 ランプの炎よりも赤い、巨大な狼の接近に気づかなかった。


 昼間の傷は癒えておらず、目からは相変わらず血が流れていた。

 音もなく忍び寄った狼は、立っている兵のひとりの頭を食らって一瞬で命を奪った。


「なんだ?」

「うわぁっ!?」

「狼だ! 目標はっけ――」


 何か言おうとしていた兵の顔に、狼の爪が刺さる。顔面に数個の穴を作って彼の体は崩れ落ちた。

 残る兵士たちは一斉に剣を抜いたが、混乱したままだ。


「ちくしょう! 殺せ殺せ!」

「違う! 生け捕りにしろって命令だ!」

「無理だそんなもの!」

「殺すな! 絶対に殺すな!」

「うわー!」


 狼が集団に突進していき、何人もの兵士をなぎ倒した。倒れた兵士のひとりの顔に前足の爪が深々と刺さっていた。後ろ足で蹴られた兵士が木の幹にぶつかり、首の骨が折れて死んだ。

 剣を抜いた兵士が狼に、全力で突進した。狼は立ち上がって回避。自分の前でつんのめるように止まった兵士に前足がのしかかり、倒れる衝撃と狼の体重で全身の骨を折って動かなくなった。


「や、やめろ。やめてくれ……」


 兵士のひとりが剣を構えて狼と対峙している。けれど彼はブルブルと震えていた。自分よりも大きな敵への恐怖を乗り越えられず。


「うわああああ!」


 剣を放り投げて逃げ出してしまった。狼はそんな彼までひとっ跳びで距離を詰め、頭部に噛みつく。ごきっと嫌な音と共に、死体になった彼は走るのをやめて崩れ落ちた。


「ヨナ様。どうしましょう!? まずいのでは!?」

「そうだね。助ける義理はないけど」

「よし、行こうぜ」


 キアがナイフを握りながら先行。がむしゃらに突進するのではなく、木々の間を縫うように進んでゆっくり接近。僕も落ちていた枝を拾ってついていく。

 狼はなおも暴れていて、不幸な兵士を一体噛み殺した直後、別の兵士と対峙していた。


 そして僕には腹の側面を見せている。


 狼が兵士に飛びかかった。恐慌状態の兵士はそのまま押し倒されてしまい、悲鳴を上げる。反撃する気概すら感じなかった。

 その隙に僕は接近。狼の脇腹をバッサリと切り裂いた。


「グオオオオオ!」


 痛みに悲鳴が上がる。腹から血を流しながら、狼は一歩引いてこちらを睨みつけた。


「来い! 僕が相手だ!」

「グルル……ギャンッ!?」


 今にも飛びかかろうとする狼の鼻っ面に、闇の球体がぶつかる。それも何度も。


 怯んだ狼に僕の方から接近。追い払おうとする前足を枝で切りつけ、肉球にざっくりと切り傷を作った。また悲鳴が上がり、狼が跳び退く。


「いける! ヨナくん! このまま殺すわよ! あたしは足を狙って頭の位置を下げるから! 決めちゃって!」

「うん! わかった!」


 ゾーラの援護を受けながら前に出る。けど直後に背後から音がした。


「やめろ! 殺すな!」

「!?」


 さっき狼に倒された兵士だ。今度は僕に向けて剣を振り下ろしてきた。

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