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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第1章 長男

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1-11.魔女

 それから、ふと気になったことを尋ねた。


「森に住んでても、時々は村にも帰ってるんでしょ? 歩き方に迷いがないし、それに村の情報も知っていた」


 この村を訪問したのも、昨日から来ているという学者先生に僕の力について意見をもらうため。キアが村を訪れてるから、学者のことを知っている。


「ああ。昨日、久々に村に顔を出した。で、また一ヶ月ほど森に潜るって言ったんだ。なのにもう帰ってきたんだから、そりゃ変な目で見られるよな」


 当のキアは気にしてない様子。けれど眼に前をひとりの女が立ち塞がった途端、険しい顔になった。


「よう、婆さん」


 キアがそう呼ぶのは自然なこと。女の見た目は老齢に差し掛かっているようだった。深い皺の入った顔。白髪が多い髪。

 それでも老いを感じさせない動きをしていた。


「キアあんた! しばらく森にいるって言ってたじゃない! しかも余所者なんか連れてきて! 誰だい!?」

「あー。こいつらは……」


 本当のことを言うわけにはいかないとキアは口ごもる。そして女は構わず先を続けて。


「面倒ごとを持ち込まないでくれるかい!? ただでさえ大変なのに!」

「大変? 何が?」

「あの学者先生だよ! 村の外れにある祠の中を見せろってうるさくてさ!」

「へえー。学者先生は、今どこに?」

「村長の家だよ。いや、あんたはさっさと、この余所者たちを連れて森へ行きな」

「ヨナ、ティナ、様子を見に行こうぜ」

「あ! 待ちなよ!」


 女の言うことなんか全然聞く気がない様子。


 僕としても、学者に会いにきたわけで。余所者扱いされても引き下がるわけにはいかない。居場所がわかったなら行くべきだ。

 とはいえ、学者というのは少し変わった人らしい。



 キアが先導して村長の家へ向かう。村の中心近くに、他の建物よりは少しだけ立派な家が立っていた。

 それを十人ほどの村人が遠巻きに取り囲んでいた。近づけないという様子だけど、不安そうに家を見つめながらヒソヒソと会話している。


 彼らはなぜか、それぞれ道具を持っている。包丁や箒。鍬や鋤といった農具。


 武器にも使えるものばかりだな。


「村長」

「おお。キアか」


 頭の禿上がった老人に、キアが話しかける。彼が村長か。さっきの女よりは人当たりはよさそうだ。

 今は、なぜか顔を真っ青にしているけれど。


「どうかしたのか? なんか物々しいけど」

「どうしたもこうしたも。……あの学者先生が、儂の孫を人質にして、家に立てこもったんじゃ」


 そりゃ顔も青くなるな。


 見れば、半狂乱になって家に入ろうとする女と、それを必死に留めている男がいた。どっちが村長の子かは知らないけど、お孫さんの両親なんだろう。


「マジか。それは、祠を見せてくれってのと関係あるのか? 孫を返してほしければ中を見せろとか」

「わからんが、そうかもしれん」

「許せません!」

「うおっ!?」


 さっきまで泣いていたティナが急に声を上げる。


「なんて身勝手な! ヨナ様! 見過ごせません! わたしたちで! お孫さんを助けましょう!」

「できるの?」

「ヨナ様の力があれば! あと、わたしも戦えます! これでも兵たむぐー!?」


 口を塞いで黙らせる。あんまりこっちの情報を言いふらさないで。王族が放った追手がいるかもしれないから。


 見過ごせないのは僕も同意見だし、力になれるなら協力はしたい。けど、僕は村からすれば余所者。問題解決に僕の意思が反映されることは薄い。

 どっちかというと、ティナの向こう見ずで力強い宣言の方が周りに影響を与えた。


「そうだ! 早く助けに行こう!」

「黙って見てるだけなんて性に合わねえよな!」

「学者だかなんだか知らねえが! 俺の村で好き勝手はさせない!」


 村の男たちが口々に言い、それぞれの武器を構える。村長の家に突入するつもりか。

 ところが、その前に家の扉が開いた。


「うるさいわねぇ。大騒ぎすることないじゃない」


 気怠げな声と共に姿を表したのは、女だった。


 二十代半ばくらいの女は、肩や胸元を大きく露出させたローブを身に纏っていた。スカートは長いけど、二本のスリットが大きく入って白い足を見せつけていた。

 かなりの美女だ。長いストレートな黒髪に、切れ長の目が妖艶な印象を与える。そして、胸元の大きな膨らみが目立つ。胸の谷間を見せつけるような服だから、なおさらだ。


 思わず目を逸らしたのは内緒だ。


 それから彼女は、一本の杖を持っていた。


「魔女?」


 ティナが小さく呟く。その通り。典型的な魔法使いの装束だ。


「キア、あれが学者?」

「ああ。魔術の研究をしてるってさ」

「なるほど」


 魔法使いの中には、自分に目覚めた力をより有効に使うために、研究に身を捧げる者も多い。たしかに学者だ。

 そんな彼女が、子供と一緒に立てこもっている?


「お願い! 息子を返して!」


 母親が悲痛な叫びを上げた。周りの男たちも呼応して、村から出ていけとか子供を解放しろとか口々に言う。

 一方の魔女は眉間に皺を寄せた。


「まったく。こんなのがいるから、あの子に関わらせたくなかったのよ」


 独り言ながら、こっちにもそれは聞こえてきた。


 こんなの呼ばわりされた男たちは怒り、そして得物を掲げて魔女へと襲いかかる。

 魔女はそれを見ても平然としていて、無言で杖を振る。直後に。


「なっ!?」

「なんだ!? 足が!」

「動かない!」


 男たちが動きを止めた。止めさせられた。

 地面から黒い紐か蔓のような物が生えてきて、男たちの足に絡みついたからだ。


 実際に、あれがなんなのかはわからない。蛇のようにウネウネと動いているそれが、魔法によるものなのはわかる。

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