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15 反攻作戦4 ノール城塞

ロマンを求めすぎました……リアリティ皆無ですが、雰囲気程度にお楽しみください。

これを読んで思わずニヤッとしてしまった方、貴方は同志……それも相当ハイレベルです(粛清)

果てしなく澄み渡る蒼穹を、鋼鉄の鳥たちが駆ける。

ジェットエンジンの爆音をかき鳴らし、翼に巨大な破壊をもたらす筒を下げて。







『AWACSより全機、爆撃ポイントへの到達を確認。各自、作戦行動に入れ』


AWACS(早期警戒管制機)である空自E-767から電子の囁きが放たれ、それを受けたF/A-18Eの群れとF-35BJの群れは一斉に行動を開始した。


無誘導爆弾およびクラスター爆弾による面制圧を担当する部隊が先行し、HUDのピパーに捉えた城塞や敵陣に対して遠慮容赦のない爆撃を加えていく。


泡を食って迎撃に上がってきた飛竜部隊は、制空兼近接航空支援を担当する部隊の放ったAAM-5やAIM-9Xによってその四肢を空に散らせた。


地上から火属性の魔術がまるで高射砲のように打ち上がるが、高度も精度も足りない。


それはさながら、神による無慈悲な断罪のごとき様子だった。


『詩を読んでいる暇があったら攻撃しろ、スファル2!』


「ラジャー。αグループの爆撃はまだ終わっておりませんが……」


『爆撃が終わったところからジャパンアーミーの制圧作戦が始まってる!……案外しぶとく残ってやがるぞ』


そこはジャパン・グラウンド・セルフディフェンス・フォースでしょうに、と思ったスファル2のパイロットは、F/A-18Eの操縦桿を倒した。機体が左にバンクし、スロットルおよびラダーの操作と合わさり左旋回降下が始まった。

武器の選択が無誘導ロケットではなくAIM-9Xになっていることを確認し、機銃の引き金に指をかける。


彼の視界には、盛んに銃撃を浴びせる装甲車や歩兵の群れと、魔術で応戦する敵の姿が見えた。


『AWACSよりスファル・スコードロン。ポイント12から35へ移動中の味方を支援せよ。ポイント3を制圧中の小隊の支援にはロジャー9が急行している』


「了解」


AWACSの指示と、ご丁寧にHUDに表示された攻撃対象に従い、低空を高速で飛行する。隊長機と完璧なエレメントを組み、地をにらみながら。


程なくして、炎が槍のように打ち上がってきた。

ギリギリ操縦桿を倒すことで回避に成功するが、対空攻撃を行えると言うことに、微かに驚いた。


空母ロナルド・レーガンに搭載されているRAM近接対空ミサイルほどではないが、十分脅威となり得る一撃である。


「攻撃対象を視認、攻撃開始!」


砦を機銃のレティクルに捉えた。自衛隊は砦の連中と盛んに撃ち合っており、誤射の心配もない。


機銃のトリガーを引ききった。


ヴォォォォ、という重苦しい作動音とともに、20㎜機銃弾が鼻先から吐き出された。砦に吸い込まれ、屋上で弾幕を張っていた魔術師たちを引き裂く弾丸たち。


『上空のアメリカ機、支援感謝する!……これより突入を開始する、誤射に注意されたし!』


「ラジャー」


バックミラーを見ると、自衛隊の高機動車や軽装甲機動車が砦へ殺到、隊員たちが内部へと突入していた。







ところで、ノール城塞は山をくり抜くようにして建造された城塞であるが、その山には巨大な渓谷が存在する。偵察中隊も発見したそれは深く、とてもではないが落ちたら命の保証はできない代物だ。

そこに、数機の戦闘機が突入しようとしていた。


『馬鹿げている!渓谷へ突入し、そこから洞窟へ侵入、その奥底にある敵司令部を破壊するなど!』


『谷底ゆえに陸自の突入には無理があります。しかし、頭を潰せば蛇は死ぬのは確実。……ここは、F-35BJの実力に賭けてみませんか?』


『……退路はどうするのだ?』


『なに、奥に反転できるスペースがありますから、そこでUターンします。最悪、ホバリングモードで方向転換できますしね』


飛び交う無線。

そもそも、事の発端は敵を尋問した陸自隊員からの情報により、巨大な洞窟の最奥に敵の総司令部、それも侵略部隊の司令部と、この地方の司令部二つがあることが判明したことだ。また、そこへと至る道は細かく分岐しており、待ち伏せも多い。


そこでAWACSに乗る作戦司令部要員が頭を悩ませているときに、ならば航空機で洞窟へ飛び込んでしまえ、と考えた者がいたのだ。


そして、今に至る。


『それだったら、俺も参加させてくれ。なに、特大のブツを抱えているからな』


『た、隊長!?』


『退路は心配いらないさ、洞窟の壁は多分ハープーンでぶち抜けるし、最悪破壊した後に着陸すればいい。こいつの降着装置は頑丈だからな』


『そういう問題ではないでしょう!?』


「参加させてくれ」という声がパイロットたちから高まってきたことを認識してしまった作戦司令部の参謀長は、ついに決断した。


『これより、プランB2、突入破壊作戦に移行する。突入機は、志願したフェンリル1、フェンリル4、ロジャー9、ロジャー15だ。4機は、洞窟の入り口からAGMをありったけうちこめ!……突入支援として、リュウセイ隊全機およびスファル隊全機は谷にある敵拠点を破壊しろ!未だ、航空隊の死傷者はゼロだ!全員、生きて帰るぞ!』


彼にとっては、ここが妥協点だった。さすがに、洞窟への突入は許可できない。



『ラジャー!』


しかし、張り上げられた声の数は百は下らなかった。




F/A-18Eが、第二次世界大戦以降廃れたはずの急降下爆撃を敢行する。

降下角は70度。フラップを限界まで立て、翼下に抱えた500ポンド爆弾を狙いすまし、投下。


「投下、投下!……谷へ突入する!」


命中を確認する前に、機体を翻して谷へ突入した。谷底に集結していた敵兵たちに機銃掃射をお見舞いし、それから操縦桿を引いて機首を引き上げ離脱する。


一方では、補給から戦線復帰してきたばかりのF/A-18Eがレーザー誘導爆弾を撃ち込み、イージス艦の放った対艦ミサイルが谷壁に設営された敵施設へ吸い込まれる。広い谷だからこそ遠慮なく行える、火力投射である。これが狭い谷ならば、ちまちま機銃掃射をしなければならなかっただろう。


『レーザー誘導ハープーンの命中確認、残り敵施設は6!』


『陸自第369重迫撃砲中隊よりAWACSソウリュウ!制圧射撃を行う、座標指示を!』


『データを転送する。デカイのを頼む!』


『旧軍の駆逐艦レベルの働きは保証してやるよ!』


『つまり便利屋か。……データ転送!』


『そういうこった!……初弾、うちーかたーはじーめー!』


陸自の牽引式重迫撃砲、120㎜RTが一斉に火を噴いた。それらは転送された座標にある施設、その屋根へと直撃。

普通科最大の火力である迫撃砲は、その火力を惜しみなく発揮した。


『初弾、ふたはつ命中!』


『命中率3割は芳しくないな……とりあえず、目標は破壊したか。てめぇら!帰ったら訓練だぞ!』


『あ、アイアイサー!』




そのような会話を機内で聞いていたフェンリル1は苦笑した。彼らは、洞窟内部の敵拠点を破壊するという前代未聞の作戦を実行するのだ。緊張していても、なにも始まらない。


『……防御施設の沈黙を確認。突入部隊、谷へ突入せよ!』


「ラジャー」


高度を落としたF-35とF/A-18が、谷へと入っていった。飛竜の二倍以上の速さで飛ぶ飛翔体は、帝国兵たちにとっては未知の敵である。


故に、盛んに魔術を打ち上げたところで当たるはずがないのだ。


「……くそったれ、まだ残っていやがる」


『あまり速度を上げるな、壁に突っ込むぞ。……そろそろ谷が狭くなる』


谷は直線ではないのだ。

卓越したマニューバで曲芸じみた飛行を行いつつ、目的地へと驀進する四機の戦闘機。


飛竜部隊が決死の覚悟で進路を塞ごうとするが、直後に上から撃ち込まれたミサイルによって殲滅された。


『雑魚は片付けます!隊長たちは早く!』


『やれ、ジェイムズ!谷を潜り抜けろ!』


『了解!』


「……見えてきたぞ!」


敵を蹴散らしつつ谷底を這い飛んだ先。そこには、巨大な洞窟があった。

直径50メートル越えのそこは、さして複雑に曲がりくねっているわけでもない。


「……()()()()()!」


彼は、操縦桿を倒さなかった。


一瞬で、世界が暗闇になる。

FLIRと篝火を頼りに、迷わず飛ばし続けた。

ふと横を見ると、太いサーチライトが照射されていた。

照射しているのは、二機のF/A-18E。


「……物好きだな、あんたらも」


『へっ、フロンティア精神ってやつさ。……それより、右カーブだ。角度が少しきついぞ』


「機を緩くバンクさせろ。ラダーに頼るな」


そんな指示を出しつつ、エルロンと補助翼をフル活用し中心から逸れることなく飛翔する。


飛ぶことすこし、一気に目の前が開けた。

地中に存在する、広大な空間。


「……こいつが……!」


『なんて大きさだ……』


『ペンタゴンもいいところだな……さしずめ、ヘキサゴンだ』


『異世界の国防総省だって?冗談がすぎるぜ』


そこに鎮座していたのは、正六角形の形をした石造りの建物ーーーー城塞である。一辺はおよそ200メートル、無意味とすら思える円形の外壁などと相まって、魔法陣のようにも見える。


『あれだな、これで全ての世界とこの世界を繋げるんだ』


「どこのゲートだよ……嫌な予感がするが、司令部は全てだろうな。直径350メートル程度なら」


『……高さがある。それに、出口らしきトンネルも見える』


『……急ごう、そろそろ旋回も限界だ。いくら5キロ近い空間だとしてもな』


「了解……攻撃開始!」


緩い旋回をさせていた機体を、水平飛行に戻す。虎の子のAAM-5を選択し、発射ボタンに指をかけた。

非ロックオンをしめすアラートが灯っているが、当てられれば問題などない。


「Fox2!」


押し込んだ瞬間、ウェポンベイから4発のそれらが投下された。一直線に驀進するミサイルは、瞬時にマッハ3まで加速、そして石造りの壁へとめり込んだ。

運動エネルギーと、爆発による指向性の爆風、そして破片を余すことなく叩きつける。


後続の味方機もそれぞれミサイルを放ち、確実に敵の司令部を瓦礫へと変える。


『撃破確認。……脱出しましょう。燃料きついでしょうし』


「……ああ、脱出する、か……?」


その時、フェンリル1のFLIRに何かが映った。

ズームインして、彼はその正体を知った。知ってしまった。


「……くそったれ!」


彼は入ってきたトンネルに向けていた機首を、もう一つのトンネルの方へ強引に変更させる。F-35の高い機動力にまかせた超機動でほぼUターン、そしてもう一つのトンネルへと突入して行った。


『なに……を……ザザ』


無線にノイズが混じり聞こえなくなる。


トンネルの中で、数人の魔術師が色とりどりの魔術を放ってきた。

後ろで、トンネルが崩れる音がする。


「……落盤か……よくもやってくれたなこの野郎!」


お返しに、エンジンを全力でふかし後方気流に巻き込む。相手が死んだかどうかは、わからなかった。


「……ちくしょう、あんなの見ちまったら後に引けねえじゃねえか……」


彼は、ホバリングモードに切り替えた自機を操作しつつ、トンネルの先を見据えた。


数人の敵兵がおり、慌てふためいて弓を射かけてきたーーーー当たるはずがないがーーーーため、20ミリ機関砲でミンチにする。


そうして敵を蹴散らしつつ機体をゆるゆると飛ばした彼が、最奥で見たものは。


ーーーー檻に入れられた獣人の奴隷たちと、こちらを警戒する番人らしき兵士だった。


「……上等だ」


彼は機体に地を踏ませつつ、物入れに入れておいた89式小銃に弾倉を装着、初弾を装填した。







彼の行方は、杳として知れない。







ーーーー大陸暦1034年6月30日、司令部消滅によりノール城塞群陥落。


いかがだったでしょうか。

ちなみに、谷潜りとトンネル潜りは「エースコンバット」というフライトシューティングが元ネタです。

おそらく、昨日の夜にやってた影響です。



それと、宣伝的何かなのですが、新しく「傭兵、王になる ー部下がチート揃いだったのでのんびり最強国家目指しますー」という作品を投稿しました。ガラリと毛色は変わりますが、よかったらどうぞ。

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