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エンドレスフロンティア  作者: 紫音
二章 過去と悪意あるイベント
39/63

第34話 ミートパイ

随分とお久し振りです。

去年の暮れから忙しくなって書けてなかったのですが、一端書かなくなると、書き出すまでに時間が掛かるもので、ちょこちょこと書いて、なんか違うと消してたら三ヶ月過ぎてました。

またリハビリがてら書いていきます。

「もう大丈夫」


 幾分か落ち着いたからブレイブから顔を離す。


「メルちゃーん」


 するといつもの如く、リズが私に抱き着いてくるけど、もう気にしないようにしよう。

 私をマスコット状態にしたリズに遅れてテッタとシェスカがやって来る。


「M【ヒール】」


 テッタが私の頬に手を伸ばして、掠り傷を治療してくれた。


「ありがとう」


 終わってみると、随分と大人気ない事をした気がする。どうしよう。


 周りの目も気にせず全力で酷い事をした、しつこかったから嫌気がさして先に煽るような事を言ったのもいただけない。

 なんか凹む。完全に私が悪者だ。


 改めてそんな自己嫌悪をしていると、タッタッタと誰かが走ってくる音が聞こえてくる。

 そして、ガバッと言う衝撃と共に今度は前から誰かが抱き着いてきた。


「あア、姉御、スリーピンハ完全二自惚れテタ!!」


 えっと、誰、この人?


 うん。独特のイントネーションの日本語、勝ち気そうな吊目に襟足だけ長い結わえた髪型、中国の道士をイメージしたような装備、先程完膚なく叩きのめした相手、スリーピンとしか思えない。

 でも、私はスリーピンに好かれるような事をした覚えがない、新手の精神攻撃だろうか。お、恐ろしい。


「あ、あのスリーピンさん?」


「あア、姉御、スリーピンにさんヅケなんテいらないゼ」


 これ完全に別人だよね?


「えっと、スリーピン、取り敢えず、離れてくれる?」


「はい。姉御」


 シュタっと効果音がなりそうなほどの速さで私から離れて、直立不動の姿勢をとる。


「それで? 私、貴女にそう呼ばれる覚えがないんだけど?」


「その件に関してハ、スリーピンが悪かっタ、デス。姉御二ぶちのめされるうち二、スリーピンが何れダケ未熟分かっタ、それ二強い人ヲ敬ウのは当然ダロ? スリーピンハ姉御ノ強さに惚れたンダ」


 強い人を敬うって、この子、どこの戦闘民族の出なんだろうか。


「大人気なかっタのはスリーピンの方ダッタ。頼ム姉御、スリーピンを姉御ノ舎弟にしてクレ」


 ガバッと土下座までする始末だ。これ、どう見てもさ、私が悪者だよね? 年下の子を完膚なきまでボコボコにして、その後に土下座までさせてるとかさ、周りからヒソヒソと何あれとか、あんだけタコ殴りにして土下座とか聞こえてくる。

 と、取り敢えず、土下座をやめさせないと。


「取り敢えず、顔をあげて」


「いヤ、姉御ノ舎弟にしてクレるまデ、玄徳のようにこうスルゾ」


 玄徳って、三顧之礼のようにって事だろうか? それは困る。凄く困る。だけど、舎弟にするのも、ね。それに何故舎弟なんだろうか?


「ところでスリーピン、何で舎弟なの?」


 私が思っていた事を私を抱えたリズが聞くと、顔だけをあげて自信満々に言う。


「日本ノ文化じゃ、負けたら舎弟二なるんだロウ? スリーピンノ学校じゃ、そうダゾ? スリーピンガ転校した初日二知った事ダ」


 それ間違ってるから。


「えっとスリーピン、それは限られたごく一部の間のルールみたいなもので、日本の文化じゃないからね」


「そうなノカ?」


 スリーピンが驚いた顔で周囲を窺う。私達を含め周囲のギャラリーが頷き、スリーピンと一緒にいた男性二人が肩を竦める。


「ふーン、でも、スリーピンは姉御ノ舎弟になるゾ」


 だから、なんでさ!?


 私が何故と問いただそうとした時、不意に聞き覚えのある声が聞こえてくる。


「お、おなか、すいた」


 ズリ、ズリっと這いずるような音と共に聞こえるのはえ女性の声だ。

 這いずるような音は複数聞こえるから、数人いる事が窺える。

 切羽の詰まった声に気圧されたのか、周りの野次馬達が後退り、その姿を確認する事ができるのと同時に六人が地面へと倒れた。 


 その六人の内、四人は知り合いというか知ってる顔だ。


「シャンファ!!」


 リズの腕から抜け出して倒れたシャンファへと駆け寄り抱き起こす。


「……ご飯……」


 彼女は焦点のあってない目でそう言い気絶してしまった。

 他の五人も同じような状態で気を失っている。


「リズ……」


「がってんでぃ!!」


 意図を的確に読み取ったリズがシャンファを抱えて拠点へと向かう。それに遅れてブレイブやゴードン、シェスカが他の五人を担いでいった。




 拠点にシャンファ達を担ぎ込んだ後、私はすぐに厨房に立って、mobの肉を使ったミートパイモドキと、リンゴに似た味のする(そのままで食べると石化のバッドステータスをくらう)果実を使ったアップルパイモドキを数枚作り、彼女達に振る舞った。


「美味しい、美味しいよぉ!!」


「む、六日振りの、マトモな飯とか美味すぎる!!」


 その結果がこのようなセリフだ。

 先程から六人は涙を流しながら、同じような事を言い、パイを頬張っている。

 と言っても、六人だけじゃないんだけどね。

 何故かスリーピン達も含めて全員が遅めのおやつと洒落こんでいた。


「ン、姉御ノパイ、絶品だナ!!」


 私は貴女の姉御になった覚えはないんだけど……

 リズと言い、スリーピンと言い、何で私の周りには人の話を聞かない人が多いのだろうか?


「メロディアちゃん」


 そんな益もない事を考えていた時、不意にシャンファが決意を固めたような表情で私の手を握ってきた。


「え、えっと、何?」


「私のお嫁さんになって、私頑張って養うから!!」


 オヨメサン? はて、シャンファは何を言っているんだろうか? 私にはよく分からない。

 後、リズはそんな顔しないの。


「シャンファの世迷言は放っておいて、何でこんな事になったの?」


「世迷言って……」


「取り敢えず、改めて助けてくれてありがとう」


 あ、シャンファの事は無視していくスタイルなんだ。

 私も私だけど、他のメンバーも大概だ。


「ブレイブ達は知ってるだろうけど、俺はアルフレッド」


「私はモーラ」


「それでこうなった理由なんだが━━」


 アルフレッドとモーラが語った内容は凄い波乱万丈な物だった。

 要約すると、レイヴンが持っていた食糧が無くなった後、状態異常付きの果実を食べて、ハイテンションになった彼等は、ひたすら探索と隠しクエストをクリアし続けたらしい。


「そりゃあ、武器や防具の耐久値も逝くわ」


「僕としてはハイテンションになる果実と、空腹感が増す代わりに戦闘力が上がる果実が気になるかね」


「なんという強行軍であるか」


「俺ちゃんとしては、報酬のユニーク武器が気になるねぇ」


「取り敢えず、替えの服を三人分………用意しなきゃ」


 うん。誰もシャンファ達の心配しないのね。同じ悩みを持ってる仲間だし、しょうがないか……


「シャンファ診てあげるから、武器を出して」


「え、メロディアちゃん?」


「直せるか分からないけど、あ、それとも専属がいるかな?」


 それだったらその人に診てもらった方がいいよね。


「……専属はいないけど、えっと、そういう事?」


 どうしたんだろう。さっきからシャンファの、ううん。シャンファ達の反応が鈍い。そういう事って? ……ああ、そういう事か。


「他の皆も金属製の武器だったら私が診るから」


「……それて、つまり」


「あれ、だよね?」


「もう分かってると思うけど、改めて自己紹介を、私は鍛冶師メロディア、以後よしなに」


 スカートの両端を摘まんでカーテシーをする。


「あ、うん。よろしく。……じゃなくて!!」


「やっぱリ、姉御が鍛冶師だったんダナ」


「カーテシーするメルちゃんチョーラブリー」


「掲示板で予想はたっていたけど、本当だとは……」


「でも、ある意味納得って言うか」


「おおう。木製の武器なら俺ちゃんがみるんだぜい」


 うん。人数が増えると、騒ぎが治まるまでの時間が長い。



 メロディア達がシャンファ達の介抱をしていた頃、とある洞窟内でそれは起きていた。

 一つの鼻唄と複数の悲鳴が洞窟内に反響して、顔をしかめる醜悪な音楽とかしている。


「な、何故だ。何故俺達を殺すんだ?」


 その醜悪な音楽の終わり近く、革鎧を着た戦士風の男が音楽を奏でていた相手に向かって問うた。

 問われた相手、灰色のローブを着こんだ男は首をこてんっと傾げて答える。


「理由? そんな物は愉しいからに決まってる」


「ふ、ふざけんじゃねぇ、それだけの理由で同じギルドの仲間を全滅させたのかよ。トイメイカー」


 トイメイカーと呼ばれたローブの男の答えに、革鎧の男が激昂した。

 それもそうだろう。後四日程でイベントが終了間際だ。ここの運営の性格の悪さから考えて、最終日近くには大きな襲撃イベントでも起こすんじゃないかと男は予想していた。

 ギルド【神風】はその時にプレイヤー達の後ろを強襲しようと、今日までPKを控えてイベントをこなしていたのである。

 それを愉しいからの一言で破綻されては激昂するのも無理はない。

 加えて言うなら、トイメイカーのイヤらしいところはプレイヤーだけではなく、装備を完全に破壊しているところである。これでは復活しても満足に戦う事は出来ないだろう。


「はは、失敬失敬、私が君達を襲う理由か、簡単な話さ。私はね昔から崩すのが好きなんだよ」


「何を言って……」


「例えば積み木とか、例えばジェン〇とか、例えば完成間近のドミノとか、そう例えば、誰かの立てた計画とか、ね。それが時間を掛けて作られた物だったら最高だ。それを崩された時の相手の顔を見る。いや、想像するだけで、私は、私は、絶っっ頂すら覚える」


「さ、最悪だ」


 自分達がしようとしていた事を棚に上げて、目の前の男を非難する男に、恍惚とひた表情を浮かべてトイメイカーは答える。


「そうとも!! 私は最悪だ!! 最低だ!! 底辺だ!! 私の敬愛するケ〇カ・パラッツ〇の言葉を借りるなら、破壊こそ僕ちんの生きる輝きだとも。だからさぁ、youも壊れちゃいなヨー」


 その言葉を最後に革鎧の男の意識は闇に飲まれた。


 トイメイカー以外誰も居なくなった洞窟に足音が響く。だけども彼は振り返る事はない。


「お疲れ様メイ」


「覗き見とは相変わらずだなティーダ」


「別に覗き見をしていた訳じゃないけどね」


「どうだか、昔修学旅行で女湯を覗いただろうに……」


「あれは悲しい事故だよ。確かに俺は立派な物を見せてもらったけど、ね!! まったく危ないな」


 トイメイカーが投げたナイフを首を逸らして躱す。


「ち、で? そっちの首尾はどうなんだ?」


 このまま同じやり取りをするのは不毛と感じたのか、トイメイカーから話を変えると、ティーダは笑みを深めて言った。


「ああ、上々さ、メイが【神風】を潰してくれたお陰で、【ラグナロク】【ゴッドレクイエム】を含めた迷惑三ギルドに痛手を負わす事はできたよ」


「そう」


 短い返事を残して、トイメイカーは出口へと歩き出す。


「何処へ?」


 その後ろに続いてティーダが問う。


「今回の仕事はここまでだろう?」


「ああ」


 彼等のギルドが請け負っていた【迷惑ギルドへの報復】というクエストは先程のトイメイカーがおこなったPKで達成されている。

 ギルドがこのクエストを請け負ったのは第二陣がくる少し前の話しだが、その達成条件の難しさから、迷惑ギルドのメンバーが一同に会しやすいこのイベントまで待っていたのだ。


「だったら、私はしばらくフリーで動かしてもらうよ」


「そうかい。ならギルマスにもそう伝えとくよ」


「よろしくなティーダ」


「ああメイ、他のプレイヤーに迷惑は掛けないようにね」


 そう言い見送ったティーダに対して、トイメイカーは内心思う。


(それは無理な相談だ)


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