表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/388

資格への疑問

 いきなりで恐縮ですが……実は、私は喘息持ちなのです。薬は常時、二種類を保管しています。片方は発作が起こりにくくなるための吸入薬です。そしてもう片方は、発作が起きた時のための吸入薬です。いずれも健康な生活を送る上では欠かせません。

 その二種類の薬のおかげで、格闘技も問題なく続けられています。季節の変わり目などは発作が起こりやすいですが、特に支障は感じません。とはいえ、これはあくまでも個人差がありますので……喘息持ちの方は、やはり気を付けるべきでしょうね。


 さて、格闘技をやっていると体のあちこちにケガをします。太ももに強烈なローキックをもらい、翌日に青黒い痣になっていたというような軽いものから、骨折のような重傷、さらには完治するまで年単位の歳月が必要なものまで実に様々です。

 そのため、格闘技の道場やジムに入門する際には、必ずスポーツ保険に加入することとなります。私の通うジムでは年間二千円ですが、他の所も同じではないかと思います。恐らく、このスポーツ保険には加入が義務付けられているのではないでしょうか。


 組み技のスパーリングをしていると、関節技を掛け合ったりする性質上、翌日に関節が痛くなることがあります。そんな時、私はまず整形外科に行きます。ちなみに私は格闘技を始めるまで、整形外科とは美容整形を専門にしている科だと思いこんでいました……バカですね。

 それはともかく、まずは外科で原因と自覚症状を詳しく説明し、レントゲンを撮ります。で、骨に異常がないことを確認した後に湿布や痛み止めなどの処方箋を書いてもらいます。この時、骨に異常があるとどうなるか……は、経験がないのでわかりません。はっきり言って、あとは安静にしているくらいしか出来ないですね。


 ここからが本題なのですが……ちゃんとした病院の看板を出し、資格を持っているからといって油断してはいけません。もちろん、ほとんどの医者の方はプロ意識を持ち、患者に真摯に向き合う方であろうとは思います。しかし、物事には例外もあるのです。

 以前、私はウエイトトレーニングをやっていて腰を痛めました。そこで外科に行ったところ、「骨には異常がないので、しばらく安静に」とのことでした。しかし、当時の私は安静にしているわけにもいきませんでした。少しでも早く治したい……その思いから、私は近所の整骨院に行きました。整骨院ならば保険も利くし、資格を持った方がやっている……ならば、治せなくても何らかのプラスにはなるだろう、と思ったのです。

 しかし、ここで私は唖然としてしまいました。

 色々な言葉のやり取りがあった後、整骨の先生は言いました。


「では赤井さん、前屈してみてください」


 はい? と、私は思わず杉○右京さんのように聞き返していました。腰を痛めた経験のある方ならわかるでしょうが、前屈は腰に負担がかかります。腰痛の時は、痛くてほとんど曲げられません。

 しかし、私は仕方なく前屈しました。向こうはプロの先生です。何らかの意味があるのだろう……そう思い、私は腰の痛みを堪えて前屈しました。当然、ほとんど曲げられません。

 すると先生は、こう言いました。

「うーん、ちょっと体硬いですね」

 私の頭の中は「……」となりました。私はそんなに硬い方ではないはずなのですが……いや、それ以前に腰痛で前屈をやらせた挙げ句に「硬い」という判定はいかがなものかと思いますが……。

 しかし、私の戸惑いをよそに先生は治療を始めました。先生は横になっている私の腰の周辺の筋肉や骨を押したり揉んだり……それを小一時間ほどやっていたのでしょうか。よくは覚えていませんが。

 そして、先生は言いました。

「赤井さん、もう一度前屈をしてみましょうか」

「……はい」

 再度、私は前屈をしました。当然ながら曲がりません。指先も膝の辺りまで……腰が痛いのですから、それ以上は無理です。

 すると――

「うーん、やっぱり赤井さんは体硬いですね。毎日ストレッチしてください」

 私はもう、その一言でこの整骨院を見限りました。「次はいつになさいますか?」と丁寧に聞かれましたが、二度と来るかぁ! とは……さすがに面と向かっては言えないので、愛想笑いを浮かべ「え、ええ……じゃあ、また電話します……」と言い残し、さっさと退散しました。


 それから二年ほど経った時のことです。私は躰道という格闘技の師範をされている方と話す機会がありました。その師範は整体院もやっている方でしたので、この時のことを尋ねてみました。

 すると、師範は苦笑しながら、こんなことを言われました。

「治療の経過を見るために前屈をしてもらうケースはあります。もっとも、その前に触診したりといった手順がありますが……しかし、そういった手順も何も無く、いきなり前屈をさせて体が硬いと判定し、さらに腰を痛めて間もない方に毎日のストレッチを勧める……治療法としてはどうかと思いますね」

 ちなみに、整体院に資格は必要ありませんが、整骨院には資格が必要です。資格を取得したはずの先生が、腰痛の私に前屈をさせた挙げ句、体が硬いですね、と言ったのです。もちろん、他の整骨院はこんな治療法はしないのでしょう。私がたまたま行った場所が特殊だったのだろう、とは思います。思いますが……資格とは何ぞや? という疑問が浮かぶのも確かです。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ