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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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力と数値

 以前よりこのエッセイでは、しつこいくらい体格や力の重要性について語っています。まあ、現実の闘いにおいては残酷なほどの差として現れるわけですが……実は、この力という要素もなかなか難しいものなのです。単純に語れるものではありません。そこで今回は、単純に見えて複雑な力という要素について語ります。とかく日本人の中では、力というと単純なもの、技術と比べるとレベルの低いもの、というイメージがあります。筋肉バカ、という言葉もあるくらいですからね。しかし、力という要素も……詳しく調べてみると、意外と奥の深いものなのです。なお、このテーマは今回と次回の二回に分けて語らせていただきます。


 学校などで行う体力測定において、日本では握力と背筋力の数値を計ります。何故、握力と背筋力なのか……私にはわかりません。何か科学的な根拠があるのでしょうか。また、これは日本だけの決まりごとなのでしょうか。ちょっと不思議です。

 それはともかく、この握力と背筋力ですが……私は普段から力の重要性について偉そうに書いています。しかし、私の握力と背筋力の数値は……低いですね。特に握力は四十キロほどしかありません。最後に計ったのが数年前なので、ひょっとしたら更に落ちているかもしれません。いずれにしても、これは日本の成人男子の平均を下回る数値ですね。八十五キロという私の体重も考慮に入れると……握力は致命的な低さということになります。

 しかし、格闘技をやっていて握力の低さゆえに不利になったことは、今のところ無いですね。打撃の攻防にしろ、寝技の攻防にしろ、握力はさして重要だとは感じません。無いよりは有った方がいいのかもしれませんが……。

 ただ、これはあくまで私の個人的主観です。それに格闘技には、のど輪という技があります。相手ののどを片手で掴む……という実に単純なものですが、同時に強力です。握力さえあれば、相手を一瞬にして戦闘不能に追い込めます。こういった技を使えれば、握力の強さもまた意味を持ってくるでしょうね。

 ちなみに某有名格闘技マンガでは、凄まじい握力を誇る日本最強の喧嘩ヤクザが登場します。握っただけで相手の体を破壊する……ロマンですよね。キャラとしては面白いです。何か一つのことに特化したキャラというのは、それだけで魅力的だと私は思います。


 次に背筋力ですが……私は最高で百九十キロ出しました。これは、日本の成人男子の平均を上回っています。どうだ凄いだろう……などと言って自慢するつもりは全くありません。むしろ、私の八十五キロという体重、そして格闘技やウエイトトレーニングなどの運動経験を考慮すれば、これまた明らかに低い数値です。成人男子の平均ということは、運動経験の無い人や体格的に小さな人も含まれているわけですから。その中で、私のような人間が平均より高い数値を出せるのは当たり前です。そう、体格と運動経験を考慮した場合……数値の見方も変わってくるのです。

 さて、この背筋力ですが……これは格闘技において、とても重要です。そもそも背筋力とは、固有背筋と呼ばれる腰の筋肉や、それに連なる背中の大きな筋肉の作用により発揮できる力を数値で表したものです。背中の筋肉は、あらゆる競技において重要な役割を果たす……らしいです。すみません、他の競技に関する知識が無いので軽々しいことは言えません。なので曖昧な書き方になりますが。 ともかく、僧帽筋から広背筋そして固有背筋といった、背中に連なる筋肉群は非常に面積が広く、大きな力を発揮できます。パンチやキックといった打撃技、あるいは組んで投げたり、絞め技や関節技などといった格闘技の全ての局面において、背筋力は重要です。 また最近では、体幹を鍛えることの重要性について書かれた本を目にする機会も多いですが……体幹とは、結局のところ腹筋と背筋ですね。握力があくまで末端の筋力の数値であるのに対し、背筋力は体の幹となる部分の筋力の数値なわけです。どちらかが重要かと問われれば、背筋力の方が重要であると言わざるを得ません。

 ですので、背筋力こそが大事です。どんどん背筋を鍛えましょう、と言いたいところですが……ここからが力という要素の厄介なところでして、背筋力の測定で高い数値を出したからといって、格闘技における力が強いかというと、それはまた別の問題になってしまうんですよね……詳しい説明は次回に譲りますが、背筋力もまた一つの目安でしかないのです。握力と同じく、無いよりは有った方がいいのは間違いないですが……次回では、他の種目と数値について語ります。

 ちなみに、以前にもこのエッセイに登場したレスリング選手のアレクサンドル・カレリンですが、背筋力は四百キロを超えていたと言われています。これはもはや、ゴリラ並みなのではないでしょうか。このカレリンだけは、我々の……いや、人間の常識を超越した存在ですね。






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