衰えゆく時……
ラノベという分野は、基本的に高校生が主人公という作品が多いようですね。やはり、若い方たちが感情移入しやすいからでしょうか。高校生にして古武術を極めた最強主人公、なんてのもあったりします。高校生に極められてしまうような古武術……うーん、と首をひねってしまいますが、それはひとまず置きましょう。
まあ古武術うんぬんはともかく、若いうちは身体能力が高いのは間違いありません。学習能力も高く、また環境に適応する力にも優れています。そして、年齢を重ねていくにつれ様々な能力が衰えていくのも、また確かです。そんなわけで今回は、年齢による衰えについて語ります。やはり、これは最近つくづく感じますね。
年齢を重ねていくにつれ、まず早い動きに対応しにくくなりますね。特に、打撃……ボクシングやキックボクシングのような競技ですと、本当に厳しいようです。ボクシングの軽量級の選手のパンチは早いですからね。年を重ねるにつれ、その早いパンチに対応出来なくなります。プロボクサーに年齢による制限があるのも、そういった理由があるからなのかもしれませんね。
さらに、年を取ると練習による疲れやダメージが抜けにくくなります。格闘技の試合をするには対人の練習が必要です。特に試合前には、ハードなスパーリングが欠かせません。マス・スパーリングとは違う、ガチに近い殴り合いや極め合いも時には必要です。しかし、若い頃は少々のダメージを負ったとしても、すぐに治りますが……年を取るとなかなか治りにくくなりますね。
特に、空手やキックボクシングでは蹴りのダメージが大きいですからね……ローキックで太ももに何発も蹴りをもらうと、痛みのために翌日の動きが悪くなります。若いうちは痛みもすぐに引くのですが……年を取ると、こういったダメージが後々まで残ってしまうんですよ。本当に、ケガの治りが非常に悪くなりますね……。
そしてケガの治りが悪いとなると、結果として練習のレベルを落とさざるを得ません。そうなると、自身のモチベーションも下がっていくんですよね……上手く説明できるかわかりませんが、中途半端な練習しか出来ないと、だんだんとやる気がなくなっていきます……しかも試合前に中途半端な練習しか出来ない状態だと、本当に不安なんですよね。で、不安を打ち消すためにケガを無視して練習し、ケガを悪化させてしまう……ありがちな話です。
あと、これは年齢だけではないのですが……格闘技を長くやっていると、意識が飛びやすくなります。落ちグセ、と呼ばれるものですが……絞め技で何度も落とされる(一応説明しますと、絞め技により意識を失うことです)経験をすると……どういう理屈かは知りませんが、絞め技に対する耐久性がなくなり、結果として落ちやすくなってしまうのです。
ボクシングやキックボクシングでも、パンチをもらい続けているうちに打たれ弱くなってしまうケースがあるようです。まあ、このあたりは年齢だけが原因ではありませんが、若い時より年を取ってからの方が影響が出やすいようです。
以上の点を踏まえ、下り坂の年齢の方が格闘技を始める場合……若い時のペースで練習するのは絶対に避けるべきです。特に、若い時に体育会系の部活動をしていた方などは……その時と同じノリで練習しようとするケースがままあるのですが、それだけは本当にダメ絶対です。四十歳を過ぎると、運動中の突然死の可能性は格段に高まる、という話を聞いたことがあります。また、若い時にみっちり体を動かしていた人は、自分の体力を過信してしまいがちです。初めのうちは、ちょっと物足りないかな……くらいの練習量で止めておきましょう。年を取ると、慎重さが必要になってくるのです。
最後に、一本の映画を紹介します。格闘技とは全く無関係の内容なので申し訳ないのですが……その映画のタイトルは『オールド・ルーキー』です。三十五歳にしてプロテストを受け、メジャーリーガーになったジム・モリスという方のエピソード(もちろん実話です)を基にした映画です。
三十五歳という遅すぎる年齢に加えて、彼には愛すべき妻と息子、そして安定した仕事がありました。なのになぜ、プロテストを受けたのか? そこには自らが監督を務める少年野球チームのメンバーとの、ある約束があったからです……「次はコーチの番だぜ」と言うシーン、私は好きですね。
まあ、ストーリーはひとまず置くとしましょう。人間の秘められた可能性は、時として奇跡を起こします。これを読んでいる方の中にも、意外な才能が眠っているかもしれません。年齢を超越した才能が……こればかりは、やってみないとわからないものです。そう、ジム・モリスがもしも、テスト会場で他の者たちにバカにされることを恐れたり、「俺は年だから……」などと言い訳をしてプロテストを受けなかったら、この奇跡は起きなかったのです。
年齢など、ただの数字に過ぎない……と言った方もいます。格闘技に限らず、様々なことにトライしてみようではありませんか! ひょっとしたら、あなたにも世界チャンピオンになれる才能が眠っているのかもしれないのです! 二十代の若い方なら、なおさらです。たとえ世界チャンピオンになれなかったとしても、その経験は絶対に無駄にはなりません! などと無責任に煽りたてて、今回は終わります……。




