護身を過信は危険だって!
すみません。今回はマニアックというか……一般の方向けではないかも……です。
今回は、護身術について語りたいと思います。
「護身術? 何のこっちゃ?」と思われた方もいるかもしれません。分かりやすく言うと、テレビ番組で「女性が痴漢に襲われた時の撃退法!」などといったコーナーに必ず登場するアレです。まあ、二ヶ月に一度くらいは必ず目にしますよね。
テレビ画面を見ると、女性が実に簡単に相手役の男や、時にはお笑い芸人などに技をかけ、痛がらせて撃退します。そういったシーンを見ると、番組で紹介されている護身術に興味が湧くかもしれません。習ってみたくなるかもしれませんね。
護身術を習う、その事について否定するつもりは毛頭ありません。知らないよりは知っておいた方がいいに決まっています。正直言うと、私自身もああいった技には興味があります。リングや畳の上では使ってはいけない技……魅力を感じますね。
しかし、こういった護身術というものは、実は様々な問題があるのです。結果的に護身術を批判することになってしまいますが、これはあくまで、私個人の意見です。間違っているかもしれません。全てが正しいとは私も思っていません。そのあたりの判断は、読んでくださっている皆さんに委ねます。
いきなりですが、護身術の最大の問題点は、相手との間に「技をかける側」と「技をかけられる側」という関係ができてしまっていることです。
練習では、技をかけられる側の人間は、決められた通りの動きをして、技をかけられます。そして痛がります。そう、全てはあらかじめ台本通りの行動なのです。もっとわかりやすく言うと、格闘技ゲームには大抵、技を練習するモードがありますね。無抵抗のキャラ相手にコンボの練習をするモードが。
護身術の練習というのは、結局、あれをやっているのと同じことなのです。
もちろん、格闘技にも同じような練習はあります。無抵抗の人を相手に、技をかける練習方法はありますが、最終的に格闘技はスパーリングをすることにより、技の正確さを高めます。このスパーリングという練習はとても大事です。
一応説明すると、スパーリングとは実戦形式の練習です。ボクシングでヘッドギアを着けて打ち合っている姿を見たことはあると思います。あれがスパーリングです。スパーリングでは、相手も動き、そして反撃してきます。相手との関係は、状況に応じて変化します。技をかけたかと思うと、次の瞬間にはかけられたりします。そこで要求されるのは、臨機応変な動きです。この臨機応変な動きは、決まった動きばかり練習する護身術では、まず身に付けられないものと思います。
そうなんです。実戦では相手は自由に動き、反撃してくる……ここが重要なポイントです。相手は決まった動きはしてくれません。どんな動きをするかなんてわからないのです。相手の動きを読むには、様々な形での、肌身で得た経験が必要です。
護身術に関しては、まだまだ問題点はありますが、ここまでにしておきましょう。私が言いたいのは、護身術を過信すると、大変危険な目に遭うかもしれないということです。
殴り合いのケンカをしたり、格闘技の練習で本気の殴り殴られ、あるいは取っ組み合い……。
そういった経験のない人は、護身術の練習を続けていくうちに、自分が恐ろしく強くなったと思い込むケースがあるのです。それこそ、ボクシングの世界チャンピオン相手でも勝てると本気で思ってしまうケースが……。
もちろん、護身術を習う前よりは確実に強くなっています。それは間違いありません。
ただ、それが路上での闘いに通用するかというと……正直、疑問です。
まして、止せばいいのにコンビニの前でたむろしている若者たちを注意……どうなるか、想像はつきますよね。
んなアホな、と思われるかもしれませんが……実際にいるのです、こういう人が。
女性でも、自分が強くなったと思い込み、逃げることが可能な状況で技を試した人がいる、という噂を聞きました。その女性がどうなったか、ここでは書きません。あくまで噂ですので……ただ、逃げた方が正解だったらしい、ということは言っておきます。
まして、護身術にはこのような煽り文句を載せる流派や団体があります。「格闘技では教えない、本物の技を学べます!」「軍人が使う技をあなたに伝授します!」「我々は人を殺す技を使います!」など……いや、殺すのはどうかと思いますが……。
その煽り文句は間違いではないのでしょう。だが完全に正解かというと、違うと言わざるを得ません。しかし、それを見た何も知らない少年少女たちは……ここまでにしておきましょうか。後は皆さんの判断に委ねます。
ちなみに昔、何かの雑誌の特集で元SPに護身術を聞いたところ、
「小手先の技を覚えても仕方ないです。それよりも、危険な場所に足を踏み入れないこと、自分がどういう状況にいるのか正確に判断すること、その方が重要ですね。あと強いて言うなら、走って逃げる。それこそが一番大事です」
と答えたそうです。
最後にもう一つ。前にアマレスラーの暴れっぷりを書いた私がこんなことを言うのは、ちょっと自分の中で矛盾を感じてしまうのですが、人間は集団になると平気で無茶をやります。その場のノリ、というヤツで本当にとんでもないことをやらかします。コンビニの前でたむろしているような若者たちは、格闘技マンガや小説あるいはアクション映画などでザコとして登場したり、格闘家の武勇伝のネタとして登場するケースが多いですが、彼らを甘く見ない方がいいです。少々の格闘技経験では、本物の殺意(に近い感情)を持つこともある集団には勝てません。まあ、好き好んで彼らにケンカを売るような方はいないと思いますが……頭の片隅にでも留め置いていただけると幸いです。
「たむろしている若者」つながりですが、路上で闘う若者たちを描いたマンガ『ホー〇ーランド』の作者さんをとあるジムで見たことがあります。あの方はかなり大きな体をしていましたね。あの方のマンガは好きですが、格闘技論に関しては、やはりあの体がベースになっていると思われるので……うーん、という感じです。いや、格闘技論そのものは間違いではありません。読んでいてうなずかされる部分は多々ありました。しかし、ああいう細身の体格の少年がボクシングのワンツーだけで路上の闘いに対応できるかと言うと、それはさすがに無理があるような……まあ、フィクションですからね。
今回はちょっとマニアック過ぎましたかね? 少なくとも一般向けではなかったかも……すみません。
次回はもう少し、面白みのあるネタにします。




