世界最強の格闘技・殺人空手
最近はどうなのか知りませんが、かつては一大ブームの火付け役となった、格闘技関係のドキュメンタリー映画がありました。『地上最強のカラテ』という映画は、極真空手がブームになるきっかけを作ったと言われています。当時の状況をリアルタイムで知る方は「あの時代は凄かったよ。当時、格闘技といえば極真空手だったね」と仰ってました。凄い時代だったようですね。最近はどうなのでしょうか。格闘技ドキュメンタリー映画などは作られているのでしょうか。あるなら観てみたいものですが……。
さて、今回はそんな激動の昭和の時代に公開されていた、もう一つの空手ドキュメンタリー映画を紹介します。ある意味では、『地上最強のカラテ』を完全に超えている映画です……そのタイトルはズバリ『世界最強の格闘技・殺人空手』です。恐ろしいタイトルだと思いませんか。実は私が中学生の時、夜中に放送されているものを偶然観てしまったのですが……あまりにも恐ろしく凄まじい内容のため、未だに記憶に残っている映画でしたが、最近また観る機会がありまして……こちらでも紹介したいな、と思った次第です。
この映画ですが、一応はプロ空手という格闘技のドキュメンタリー映画らしいです。しかし、そもそもプロ空手なる格闘技がどのようなスタイルの格闘技なのか、また今現在どのような活動をしているのか……そのあたりの事情は私は知りません。ただ、ドキュメンタリー映画が作られるということは、当時かなり有名だったのではないでしょうか。映画内でも、空手着を着た選手たちがリングに上がり試合をしていましたし。プロ空手という名前からして、興行として試合を行なっていたのではないでしょうか……あくまで推測ですが。しかし映画の内容はというと、ひたすら圧倒されてしまうものです……。
まず、序盤でいきなりプロ空手創設者である大塚剛さんという方が登場するのですが、サイと呼ばれる武具で大根をスパスパ切ります……目隠ししたまま。さらに、引く力を強くするためにジープと力比べをします。最後には、野生の猪(私の目には豚にしか見えないのですが……)を稽古と称し、バチンバチンと手刀でシバきます……完全な動物虐待ですね。今だったら、確実にクレームが来てます。
その次には、バッファロー弁慶という方が登場します。プロ空手でもナンバーワンの怪力の持ち主とのことですが、スキンヘッドにヒゲのいかつい風貌でして……怪力キャラにも頷けます。年齢は三十代でしょうか……空手着を着て、草原を徘徊しています。むちゃくちゃ怪しいです。そして弁慶さん、不意に中腰になります。
「弁慶が何かを発見した……マムシだ!」
ナレーションと同時に蛇を発見した弁慶さん(本当にマムシかどうかはわかりませんが)、蛇の尻尾を掴み気合いの声とともに地面に叩きつけます。バチンバチン叩きつけます。そして動かなくなった蛇を丸かじり……ナレーションによると、弁慶さんはマムシの生き血が好物とのことです。
そして動かなくなった蛇を放り出し、すたすたと去って行く弁慶さん……むちゃくちゃ怖いです。
次に登場したのは、紅幸司さんという方ですが……得意技はドラゴンキックと電光乱れ突き、とのことです……何とも恐ろしい技名ですね。この方の行動もまた常軌を逸していまして、職業は肉屋の店員さんとのことなのですが……。
「彼のトレーニングは、店の中で行われる」
ナレーションとともに映し出されたのは、巨大な肉の吊るされた冷凍庫……映画『ロッキー』シリーズのお約束とも言える、肉をサンドバッグ代わりに叩くシーンの再現かと思いきや……なんと紅さん、肉を掴み引きちぎります! 「ホゥアチャー!」というブルース・リーのごとき気合いの声とともに、吊るしてある肉を掴んではちぎり掴んではちぎり……あのう、その肉は売り物ですよね?
序盤の二十分だけでも、既にこれだけの名シーンがあるのですが……しかし、映画はまだまだ続きます。夜の繁華街で「アチャー!」という奇声を発しながら愚連隊と乱闘する選手(確実にリアルファイトではないです)や、リングの上で闘う(これもリアルファイトではないと思います)選手たちの映像などが映し出されます。
そしてプロ空手の創設者である大塚剛さんは海外にまだいるであろう未知の強者と闘うべく、飛行機で旅立ちます。着いた先で、大塚さんを待ち受けるものは……。
この映画、実はDVDになっていません。VHSテープにもなっていないようです。しかし、動画はありますので……この先の展開に興味を持たれた方は是非とも観てください。ただし、格闘技ドキュメンタリー映画というよりは……ドキュメンタリー風トンデモ映画として観るのが正しいスタンスではないかと。昭和という時代の激しさや破天荒さを感じていただけることと思います。




