ひっとぽいんと回復するなら……
VRMMO作品などを見ていると、主人公の能力が全て数値で表されているケースが多いようです。正直、人間の能力をひとまとめにして数字で表すのはどうなのだろう、と思いますが……例えば筋力という要素一つとってみても、非常に複雑なものです。ベンチプレスで百キロを挙げる力と腕立て伏せを百回やる力は、まるきり異なる種類のものです。単純な筋力という言葉でひとくくりにするのは難しいと思いますね。
さて、RPGには必ず「ヒットポイント」という数値があります。訳すると……耐久力とか、そういった言葉になるのでしょうか。この耐久力という要素も実に複雑なものでして……今回は、格闘技における耐久力について語ります。
いきなりですが、私にはRPGにおけるヒットポイントというパラメーターがよくわからないんですよね……例えば身長二メートル超、体重二百キロオーバーのミノタウロスに棍棒でぶん殴られたとしましょう。まあ、運が良くても数ヶ所の骨折により戦闘続行不能、ほとんどの場合は一撃で撲殺されるのではないでしょうか。少なくとも、私は一撃で頭蓋骨が陥没する自信はあります。ところがドラクエなどのRPGのプレイヤーキャラクターは「○○のダメージを受けた!」というメッセージのみで平然と戦いを続けます。これは……まさしく勇者の所業です。もっとも、そんな真似ができる超人だからこそ、世界を救えるのかもしれませんが。
ただ、人間は生きるか死ぬかの状況になるとダメージに強くなるのも、また確かな話です。アドレナリンが分泌され、痛みに対し異常なまでの強さを見せるわけですが……そう言えば、RPGの中にはバーサーカーなるモンスターが登場する作品もあります。確かどんな傷を負っても怯まず、敵味方おかまいなしに戦い続ける戦士であったように記憶しておりますが……多量のアドレナリンを出しながら戦っている状態の戦士から生まれたのかもしれませんね。
格闘技において、耐久力という要素は二種類に分けられます。まず一つ目は持久力。これは動き続けるための能力です。もう一つは打たれ強さです。この打たれ強さこそ、RPGのヒットポイントにもっとも近いかもしれませんね。しかし……この打たれ強さというのは、基本的には練習で強くできる種類のものではないかもしれません。驚くほど打たれ強い人もいますが、一方で妙に打たれ弱い人もいます。かつてKー1などで活躍したマーク・ハントは人間離れした打たれ強さを持っていたようですが、あれは生まれ持った一種の才能でしょうね。一つ言えるのは、何度も書いていることですが……自分の体重を重くすれば、軽い相手の打撃には耐えられるようにはなります。筋肉の鎧をまとうことで、打たれ強さは確実に増すこととなるでしょう。ただ、それでも打たれ弱いままの人もいますからね……。
一方の持久力ですが、これは練習により強化できます。というより、この持久力という部分は、専門の練習なくしては強化できません。持久力はとても大事な要素です。軍隊に入隊した若者は、まずは走らされます。国や所属する部隊によって距離や内容は微妙に違うかもしれませんが、毎日のランニングが通過儀礼になっているのは、どこでも同じではないかと。歩兵は動けなくなった時が最後だ、という格言(?)もあるらしいですし。
格闘技においても、持久力は大切です。どんなに素晴らしい技を持っていたとしても、体が疲れ息が上がってしまった状態では、その技を使うことは出来ません。持久力があってこそ、身につけた技を使いこなすことができるのです。
さらに言うと(以前も書きましたが)、走る能力を強化することは……危険な状況において生半可な格闘技術や護身術を身につけることよりもずっと役に立ちます。先ほども書きました通り、アドレナリンが出ている状態では……人間は驚くほど、痛みに強くなります。酔っぱらいやヤク中などもそうですが、そんな人間を相手にした場合は、少々たしなむ程度の格闘技術や護身術では何の役にも立ちません。
また、そのような状態にある者に対して殺傷力の高い技を使った場合……下手をすると、こちらが過剰防衛で逮捕される可能性もあります。
結局のところ、中途半端に護身術のようなものを学ぶよりも……走るための能力を高める方が、本当に危険な状況でははるかに役立ちます。基本的に、集団で因縁をつけてくるチンピラや不良少年は不健康な生活をしています。酒やタバコ、さらにはドラッグなどで持久力はありません。襲いかかられた場合は長い距離を走って逃げれば、大抵の場合は追ってこられなくなるでしょう。
もっとも一番重要なことは、そういった危険な状況に身を置かないことですが……それこそが最高の護身術でしょうね。




