派手な打撃技
以前……某超有名なギャンブル漫画(アニメ化もされました)を読んだ時のことです。主人公が複数の男とケンカをするシーンがありましたが……そこで、主人公が相手の顔面にハイキックを見舞っている一コマがありました。正直、違和感を覚えました。
このハイキックという技ですが……そもそも格闘技の経験のない一般人には、出すことすらできないでしょうね。体の柔らかさも必要ですし、倒せる技として用いるためには相当の練習が必要です。足の筋力、柔軟性、タイミング、瞬発力、体の回転……などなど、様々な要素を高いレベルまで引き上げてこそ、一撃必殺の技となるのです。
さらに言うなら……このハイキックという技、個人的にはあまりオススメは出来ませんね。まず、ハイキックを武器として使うには……先ほども書いたとおり、相当の鍛練が必要です。そして、使える場所も限られてきます。例えば、狭い路地や樹木の立ち並ぶ林では物理的に放つだけの広さがなかったりします。また、ぬかるんでいて滑りやすい場所だったり河原のように石がごろごろしているような場所だと……ハイキックを放った瞬間にバランスを崩す恐れもあります。瞬間的にせよ、一本足で体を支えている……これは危ない状態です。
しかも……以前にも書きましたが、蹴りを放つには足首やスネの鍛練が必要です。砂袋などに打ち付け、当たる部分を強くしておかなくてはなりません。しかし、それでも当たった時の衝撃で……蹴った側のスネが折れるケースもあるのです。一方、頭蓋骨は非常に硬い部分ですから……相手の頭に蹴りが当たったのはいいが、スネや足首がイカれてしまう可能性もあるわけです。
このように、現実での使い勝手はあまり良くないハイキックという技ですが……マンガやアニメ、ドラマや映画などの格闘シーンにて登場する機会が多いようです。やはりこれは、見た目が派手だから……という点でしょうね。ただ殴って倒すよりは、華麗なハイキックで倒す方が好まれるのでしょう。それに関しては、私は何も言う気はありません。
ただ一つだけ言わせていただけるのならば……ハイキックというのは鍛練が必要な技であり、かつ使い勝手が良くないということです。格闘技の経験のない人間が使いこなせる技ではありません。冒頭のギャンブル漫画のひとコマに違和感を覚えたのも、それが理由です。主人公は格闘技をやっているような設定ではないのにハイキックを放つ……正直、え? と思いましたね。
ところで漫画やアニメ、ドラマや映画などの格闘シーンでは……圧倒的に打撃技の登場する場面が多いです。漫画やアニメはともかく、実際の俳優さんが演じるドラマや映画となると……柔道やレスリングなどの組み技系よりも、空手などの打撃系の使い手が多いですよね。二十代前半の主人公が空手五段、という設定のドラマもありました。
二十代前半の若さで五段を取れるのだろうか? という疑問はひとまず置くとして、何故に打撃系が多いのでしょうか。結局のところ、柔道やレスリングだと……ある程度の経験がないと、技を見せるのは難しいでしょうね。ところが打撃の場合は、極端なことを言ってしまえば……空手の達人という設定で手足をブンブン振っていれば、一応はそれらしく見えます(上手い下手は別にして、ですが)。
ですから……映画やドラマなどでは空手の有段者というキャラが派手なハイキックなどでKOしたりするシーンが多くなるのでしょうね。
さらに、かつてはプロレスにて異種格闘技戦という試合があったそうです。プロレスのリングにて、プロレスラーがボクサーや空手家などと闘うわけです。かつては、アントニオ猪木が当時のボクシング世界ヘビー級チャンピオンであるモハメド・アリ(正式な読み方がこれでいいのかわかりませんが)と試合をしたこともあったとか。
この異種格闘技戦でも、登場するのは圧倒的に打撃系の格闘技が多かったようです。ひどい時には、体の大きいだけの男を空手チャンピオンに仕立てあげ、試合をさせたケースもあったとか。故・ジャイアント馬場さんはラジャ・ライオンというパキスタン人の空手家と異種格闘技の試合をしたそうですが……私はその試合を観ていません。しかし、試合を観戦した人によれば……ラジャ・ライオンがキックを放っては転ぶ、という情けない展開の挙げ句に馬場さんの超スローな関節技で敗れたそうです……。
さすがに、高度情報化社会の現在では……怪しげな空手チャンピオンが格闘技のリングに上がることはないでしょう。ただ、映画やドラマなどの世界では今後も派手なハイキックなどで相手を倒す場面があるのでしょうね。個人的には、もう少し他の技にもスポットライトが当たって欲しいものです。




