いろんな人がいます
世に出ている格闘技のマンガなどを読むと、やたらとケンカっ早いキャラクターが登場したりします。リングの外で対戦相手を殴ったり、路上でケンカをおっ始めたり……まあ、物語として見た場合には、こういうキャラがいると話は面白くなりますよね。物語をかき乱してくれる貴重な存在ではないでしょうか。主人公であるにせよ脇役であるにせよ、お人好しだけとケンカ早いキャラ……あるいは、敵役としてチンピラのごとき暴力的な選手……のようなキャラが登場するかもしれません。
ケンカ早い主人公が、卑劣な敵方の放ったチンピラにケンカを売られ……でもケンカに応じてしまうと試合が出来なくなる。だから無抵抗で殴られ続ける。そして試合では、その殴られて受けたダメージに苦しみながらも土壇場で逆転……昭和から平成初期のマンガでは、有りがちなパターンかもしれませんね。
さて、実際の格闘家はといいますと……ケンカっ早い人などいません! 健全な精神は健全な肉体に宿るの言葉通り、格闘家はみな健全な精神の持ち主です! 人格的にも立派な人たちばかりです! と言いたいのですが……残念なことに、それは嘘になりますので言えません。
正直言いますと、格闘家の中にもケンカっ早い人はいます。いきさつはどうあれ……人を殴って書類送検された方もいますし、店で酔客相手に暴れて数人を叩きのめした空手の元世界チャンピオンもいました。ケンカっ早い人がいることは否定しません。
ただ、そういった方々はむしろ少数派でして……ほとんどの人は、争わず平和に過ごすことを好む一般市民です。格闘技をやっているからといって、他の人より血の気が多いわけではありません。いや、ひょっとしたら多いのかもしれませんが……それをコントロールできる人たちです。
私個人の考えですが……むしろ、格闘技をやっている人の方が穏やかな気がします。日頃より、サンドバッグを叩いたりキックミットを蹴ったり……そうした練習を重ねることにより、ストレスを発散させられている気がするんですよね。ストレスが溜まると、人は時として攻撃的になりますが……格闘技はガス抜きの役割を果たせます。
また、人間には誰しも闘争本能のようなものがあると思うのですが……これもまた、上手く発散できているのではないか、と。ジムや道場で、殴ったり殴られたりという経験をすることで、闘争本能もまた満たせる気がします。まあ、私には専門的な知識はないので断言はできませんが……。
正直言いますと、格闘技のジムや道場には強そうな見た目の人間が少なからず居ます。目付きが鋭く、肌にはタトゥー、頭はモヒカン、体はムキムキ……でも、話してみると案外普通の人だったりします。いや、むしろ一般の人より礼儀正しいケースもあります。プロレスラーのキラー・カーン(一応説明しますと、スキンヘッドにヒゲの大男です)のような外見でありながら、小学生相手に敬語で話すような人もいるそうでして……一度、その場面を見てみたいものです。
しかし……実際問題、乱暴な口調のケンカっ早い人がいるのも、また確かなんですよ。こういう人は面倒くさいですね……ただ、路上でケンカっ早い人に絡まれたりすると……周りの人は見て見ぬふりをして通り過ぎて行きます。助けてくれる人など、誰もいません……。
ですが、格闘技のジムや道場でケンカっ早い人に絡まれた場合……すぐに周りから、そのケンカっ早い人と同じくらい強い人が何人も飛んで来て、止めに入ってくれます。ある意味、酔っ払いが大勢うろつく繁華街よりはずっと安全ではないでしょうか。
はっきり言ってしまえば……格闘技をやっている人間の中にも、頭のおかしい者や人格的に問題のある者、さらには犯罪者スレスレの者がいるのも確かです。格闘技をやっているからといって、人格者であるとは言えません。しかし、良い人ばかりではありませんが……悪い人ばかりでもないのも確かです。基本的にはほとんどの人が、良い所もあれば悪い所もある、普通の人たちです。一般の学校や職場と同じではないでしょうか。どこにでも悪い人はいます。一般企業でも、部下を平気でぶん殴ったりする人はいますし……学生でも、人に迷惑をかけたり警察沙汰になるようなことをする者もいますね。
ですので、格闘技を始めようという方に言いたいのは……ジムや道場にいる人間を特に怖がる必要はありません。かといって……健全な精神は健全な肉体に宿る式の、過剰な期待もしない方がいいです。どこも同じなのでしょうが、良い人もいれば悪い人もいます。その事だけは、しっかり覚えておいた方がよろしいかと。




