結局、木人とは何だったのでしょう?
前回で私は、環境を上手く利用する戦法について書きました。某有名格闘技漫画には、環境利用闘法なる言葉が登場しています。とは言うものの、その使い手は闘いの最中に砂を巻き上げているだけなんですが……やはり、環境利用闘法の大家と言えばジャッキー・チェンでしょうね。
ジャッキーの映画と言えば……室内で椅子やテーブルを利用したりといった、周囲の状況を活かした闘い方が多いですよね。他にも不利な状況では走ったり飛び降りたり飛び付いたり……そして追い付かれたら闘い、また逃げる……まあ、せわしないですよね。ただ、周囲の物や状況をフル活用するあのスタイルは……体格差のある相手や多人数を相手にした場合には非常に有効な戦法だと思います。もっとも、ジャッキーのやり方は凄すぎて……一般人の我々には全く参考にはなりませんが。
さて、今回は……そんなジャッキーのあまり知られていない名作映画を紹介したいと思います。タイトルは『少林寺木人拳』。昭和に生まれた人でも……知らない、と答える方の方が多いかもしれません。ただ、ア○トークのジャッキー・チェン大好き芸人の回で名前は登場していましたが。それでも、ちゃんと最後まで観たことのある人は……あまりいないのではないでしょうか。
いきなりですが……この作品、ツッコミ所が満載です。まず、主役のジャッキーの顔が今とは別人のよう……そう、整形前の映画なのです。また、この作品では少林寺の卒業試験として木人という訳わからんカラクリ人形みたいなのと闘うのですが、この木人を動かす仕組みが何度見てもわかりません……さらに後半になると、少林寺の名誉会長(?)みたいな老人から少林寺拳法の奥義を教わるのですが、やっていることは腕立て伏せばかり……この場面はアメト○クでも紹介されていましたので、ご存知の方も多いと思います。
とどめで付け加えると……この作品、主人公が「喋ることができない」という設定なのです。今の地上波テレビ放映には……確実にアウトでしょうね。少なくとも、時代が平成になってからはテレビ放映されていないようです。これからも、地上波での放映はないのではないかと思われます……。
ここまでの部分だけを読むと、『少林寺木人拳』はトンデモ映画に分類されるような作品かと思われたかもしれませんが……この作品はそれだけでは終わりません。まず、若いジャッキーのアクションが本当に見事です。しかし、それよりも……ストーリーが実によくできていますね。『酔拳』に代表されるようなコミカル路線に行く前の作品なのですが、幼い時に両親を目の前で殺され、仇を探して倒すために少林寺に入門したジャッキー……しかし、来る日も来る日も薪割りや水汲みといった下働きの仕事しかさせてもらえません。そんな時、彼は入ってはいけないと言われている場所で……拳法の達人と出会うのです。
両手を鎖で繋がれ、見た目も態度も極悪な雰囲気を醸し出している達人……しかし、ジャッキーは持ち前の人の良さを活かし、彼とすぐに仲良くなります。やがて、ジャッキーは達人から拳法の個人レッスンを受けるまでになりました。ジャッキーは見る見るうちに腕を上げ、そして木人との闘いに挑み……。
この後の展開は、是非とも自身の目と耳で……昨今のアニメやラノベではよくある展開かもしれませんが、それを遥か昔にやっていたというのは凄いですね。あと、一つ注意があります。もし観るのでしたら、日本語吹き替えで『ミラクル・ガイ』という曲が入っているバージョンのDVDがオススメです。一番新しいバージョンのはずですが……古いバージョンだと、オープニングで「ファーファファファファ」という、京劇のような音楽が流れますので。さらに、無名時代のユン・ピョウが町のチンピラ役で出ています。
最後に、この映画でもっとも好きなシーンを……若干のネタバレになりますが、ラスト近くにて、喋れないはずのジャッキーが絶叫するのです。
「たとえ一日でも、あなたは私の師匠です!」
この場面から続くシーンも、アメトー○で紹介されてました……まあ、確かに笑えると言えば笑えるのですが……ジャッキー・チェン大好き芸人を名乗る方々に、あの場面を茶化して欲しくなかったな、という気はしますね……。




