本番に強い人、弱い人
格闘技を実際にやっていると、テレビや雑誌などでは得られない様々な情報が入ってきます。
例えば、某ジムのA選手と某道場のB選手はシャレにならないくらい仲悪いとか、あの選手は最悪の性格だとか……どちらかというと、悪口の類いの方が入って来やすいです。その逆パターン、「あの人はリングでは怖いが、実は凄い人格者だ」というような話は……ないこともないですが、悪口の方が多い気はしますね。それが真実なのかどうかはさておき。
まあ、人の評判において悪口の類いの方が広まりやすいのはどこも同じでしょう。しかし、格闘技の世界ではもう一つ話題になりやすいことがあります。それは……強いか弱いかです。「あそこのジムには凄い強い奴がいるらしい」「どこそこの道場には半端じゃない奴がいる」などなど……それもプロの選手ではない、アマチュアでやっている人のことが話題になったりしますね。なぜかは知りませんが、知られざる強者の情報の方がみんなの興味をそそるようです。「どこそこのジムには、めちゃくちゃパンチの強いコックさんがいる」(スティーブン・セガールの映画でもいましたね、めちゃくちゃ強いコックさん)、「あそこの道場には足への関節技が凄い上手くて、ベンチプレスで百五十キロ挙げるコンビニの店長がいるんだよ」(この店長のいるコンビニに強盗に入った奴は、病院送りにされるでしょうね)などなど……そんな噂を耳にしたりします。
そういった知られざる強者の中には、プロの選手もいたりします。プロの選手が強いのは当たり前だろ、と皆さんは思うかもしれませんが、この場合は微妙に違いまして……必ず、こんな風に言われます。
「○○さんは練習だと強いんだけどな……試合だと、練習の半分くらいの強さしか発揮できないんだよ」
初めは大げさに言っているのかと思っていたのですが、実際にそういう方は少なくないらしいんですよね……実は有名な選手の中にも、そういうタイプはいたらしいです。
さて、練習では強いけど試合に弱い……なぜ、そんなことが起きるのでしょうか。まず、プレッシャーに弱いということが挙げられます。プレッシャーに押し潰されて精神的に萎縮し、普段の力の半分も出せないまま敗れる……これはよくある話のようです。
プレッシャーには強いが……いや、強すぎて逆に負けてしまうパターンもあるようです。プレッシャーに強いタイプにも色々ありまして……基本的に出たとこ勝負で、負けてもクヨクヨしないタイプもいます。負けてもクヨクヨしない……一見するといいことのように思います。いや、実際に友人にするとしたら、そんなタイプの人の方がいいに決まってますが……こと勝負の場において、負けてもクヨクヨしないタイプの人は、どうも勝利への執念に欠けてしまうようです。人間としては、凄く付き合いやすいんですけどね……。
私の知る限り、格闘技の試合で勝ち抜くようなタイプには……爽やかなスポーツマンタイプは少ないですね。どちらかと言うと暗い部分や歪な人格、そして癖のある人間が多いように思います。
さて、練習では強いが試合では弱い……こういう方がいるジムや道場は、全体的に強くなります。実際、「あいつとの試合より、Aさんとのスパーリングの方がずっと辛かった」などという言葉を聞くこともあります。やはり、そういう方がいてくれると肉体的にも精神的にも強くなりますね。さらに、そういう方は得てして教え方が上手かったりします(下手な方もいるかもしれませんが)。なので、ジムや道場全体のレベルアップには、こういう方は欠かせませんね。
逆に、練習では弱いけど本番では強い……そんなマンガやラノベのキャラのような方は見たことがないですね。当たり前の話ですが、練習で弱い人間は試合でも弱いです。それは間違いありません。昭和の時代には、練習しなくても強い天才肌のボクサーがいたと聞きますが……果たして本当に練習していなかったのかどうなのかは不明ですね。ただ、今の格闘技はそんな甘いものではありません。厳しい練習は、して当たり前の世界です。
そういえば……アマチュア作家の中にもいるのでしょうか。「あの人は普段、凄くレベルの高い作品書くけど、公募に出すと毎回ダメなんだよな」と言われるような……まあ、公募の審査は私などにはわからない世界ですからね。それに比べると、格闘技は白黒つけやすい世界……と言いたいところですが、いろいろありまして……これ以上続けると話がずれるので、ここで終わります。




