空手小僧
何年か前のことですが、『ベスト・キッド』のリメイク版が上映されました。そして宣伝のため、主演のジェイデン・スミスが来日したのですが……まあ生意気な態度のクソガキいや少年でした。こんな育て方して、親の顔が見たいわ……と思ったら、父親はあの名優ウィル・スミスだったのです。「社長の息子はバカ息子と相場が決まっている」と、ある芸人さんが言っていたのを思いだしました……もっとも、テレビで見た映像のみでバカ息子と決めつけてしまうのも早計ですが。
さて、このリメイク版『ベスト・キッド』ですが、私は観ていません。どこまでヒットしたのかもわかりません。一応、ジャッキー・チェンが師匠役で出ているという見所はありますが……しかし、若い方はオリジナル版の『ベスト・キッド』を見たことはないのではないか、と私は考えました。やはり格闘技映画と言えば、ロッキーシリーズやジャッキー・チェンの映画が有名ですが、あえてここはオリジナル版の『ベスト・キッド』の見所なんかを紹介してみようかと。ついでに超マイナーな、そして突っ込み所満載な格闘技映画なんかも次回に紹介してみようかと思います。
『ベスト・キッド』シリーズは……実は4まで創られています。1〜3まではラルフ・マッチオという俳優が主演しております。ラルフ・マッチオさんは今何をしているのでしょうか。4はアカデミー賞女優のヒラリー・スワンクが主演です……4は人気なかったそうですが。それはともかく、この映画の見所はと言えば……やはり「いじめられっ子の少年が空手と出会い、修行し、様々な仲間と出会い、そして最後に勝利する」という、努力・友情・勝利の黄金パターンを踏襲している部分でしょうか(某マンガ雑誌のような)。ただ、私は現代において格闘技を学ぶ意義は、そこにあるのではないかと考えております。
オリジナル版『ベスト・キッド』において、主人公のダニエルくんはいじめられます。で、偶然に出会ったミヤギさんに空手を習い、稽古に励むことによって強くなり、新しい自我に目覚め、そして試合に出場し勝利しますが……正直、トンデモな部分もありますし、ダニエルくんの動きも、今見るとちょっと……と感じるところもあります。しかし、闘争心をくすぐるパワーと、そして最後を気持ちよく終わらせるあたりはさすがですね。
ここで私が注目するのは……空手、そして空手の師匠であるミヤギさんと出会い、修行することにより、新しい自我に目覚めるという部分です。
格闘技の練習をすることにより、新しい自我に目覚める=自分を変えることができます。格闘技は決してケンカの道具や殺し合いの道具ではありません。少なくとも、法治国家である日本において、格闘技で学んだ技を路上などで用いればそれは犯罪となります。私は友人と狂人とのケンカに巻き込まれ、留置場で一晩過ごしたことがありましたが、本当に嫌な場所ですよ、アレは……こればっかりは、経験した者でないとわからないでしょうね。結局誤解が解け、一晩で解放されたのですが……ちなみに、かつて少年刑務所に入っていた友人曰く「刑務所は良い人間を悪く、悪い人間をさらなる極悪人に変える場所」とのことです。
話がズレてすみません。ただ、格闘技を用いて人を傷つけるとそういう目に遭う、ということだけは忘れないでください。では、格闘技は何のために存在するのか? 闘う技なのにケンカでは使えない……何のために存在しているのかと言えば、弱い自分を変えるためです。ダニエルくんのように修行に励み、弱い自分と闘って打ち負かし、新しい自分になる……格闘技を始めれば、自分が変わる瞬間が必ずあります。老若男女関係なく、続けていけば変わる時が訪れます。そう、現代における格闘技の存在意義……それは、ただ相手を倒すという次元の強さを求めるのではなく、自分という人間のレベルアップ……それにより、人生をより良い方向に持っていく、ということではないでしょうか。もちろん、某格闘技マンガのように世界最強を目指す方を否定するつもりは毛頭ありませんが。また、自分もしくは自分の愛する者や仲間たちに危険が迫り、そのために闘う……いくら私でも、その姿勢は否定しません。
私の文章構成力が未熟なせいで、話があちこち飛んでしまいましたが、オリジナル版の『ベスト・キッド』は、格闘技映画としても青春映画としても、ツボを押さえた名作だと私は思います。暇があったら一度、観てみるのもいいのではないでしょうか。映画が格闘技を始めるきっかけとなってくれれば、私にとってもそれは喜びですね。ちなみにこの『ベスト・キッド』によく似たトンデモ映画がありますが……そちらについては次回に書かせていただきます。今回、このトンデモ映画について書いてしまうと、話がまた違う方向に行ってしまいますので……すみません。




