殺人術……学びたいですか?
すみません。今日は投稿するつもりはなかったのですが、どうしても書きたかったことがあったので書いちゃいました。
前に私は、護身術に関する話を書きました。そこでも触れたのですが、流派によっては、人殺しにも使えるような危険な技を「本物の技」と言って指導するのが売りのところもあるようですね。その流派が、果たして本当に殺し合いでも使えるような技を教えているのか……はこの際置いておきます。ここで私が言いたいのは……何の目的でそれを習うのか、また、社会における殺人術(?)のあり方についてです。今回は少々、毒を吐くかもしれませんので、あらかじめご了承ください。また、格闘技とは若干ズレる部分もありますが、その点については本当に申し訳ありません。
皆さんにとって、格闘技とは何でしょうか? 私にとって、格闘技とは自分の一部です。格闘技をやっていたせいで、肘や腰にはガタがきていますね。しかし、私はまだまだ続けるつもりではいます。また、いざとなったら闘うつもりではいます。しかし、闘うということは……一歩間違えば、ただの暴力になります。また、その気がなくても結果的に相手を傷つけることにもなりかねません。
さて、皆さんは井岡弘樹さんをご存知でしょうか? 現役時代は二階級の世界王者にまで昇りつめた元ボクサーであり、ジムの会長であり、現在はタレントでもあります。この井岡さんは現役時代、一般人に絡まれてさんざん殴られました。しかし、井岡さんは一発のパンチも出さず、ひたすら殴られ続けたのです。また、総合格闘家の桜井"マッハ"速人さんも、一般人に絡まれてさんざん殴られました。しかし、手は出さなかったのです。これはある種、格闘家としてのプライドだったのかもしれませんね。私には真似ができるかどうか……ドストエフスキーの『悪霊』という作品で、公衆の面前で自分よりも明らかに弱い男に殴られたにも関わらず、笑ってその男を抱き締めるスタヴローギンなる悪魔的な人物が登場しますが(並外れた腕力と優れた知性を持ち、平気で人を殺せる男なのです)、人前で弱い人間に殴られて我慢するのは……闘うよりも遥かに大きな自制心が必要でしょうね。
ここで冒頭の話に戻ります。私は、格闘技は人殺しのための道具ではないと思っています。ケンカの道具に使うな、とは言いません。若い頃はやむを得ない場合もあるでしょう。しかし、断じて人殺しの道具であってはならないのです。これだけは断言します。
しかし冒頭で述べたように、世の中には殺し合いに特化した技術を学べる格闘技、なるものがあるようですね。しかも、そちらの方がなろうにおいては他の格闘技よりも高く評価されるようです。フィクションだけでなく、リアルにおいても上であると……果たしてそういった技がリアルの殺し合いで本当に使えるのか(実際に使っていたら人殺しです)、という疑問はさておき、もし本当に人殺しのための技を学べる流派があるなら、それは格闘技ではなく殺人術でしょうね。
そこで私には疑問が浮かびます。殺人術を習ってどうしたいのか? と。
殺人術の行き着くところは……人殺しです。皆さんは人殺しがしたいですか? 人殺しに伴う罰を受ける覚悟がありますか? 仮にあなたがそこで学んだ技を行使した場合……まず、最低でも一人の人間の命が奪われます。殺した側である、あなたのその後の人生も閉ざされます……少なくとも、暗い影を落とすことになるのは間違いないでしょう。さらに、殺してしまった相手の関係者に与える苦しみや悲しみ(たとえ相手が百%悪くても)、あなたの周囲の人間が受ける苦しみや悲しみ……このような立場に立たされたら、私には耐えきれず自殺するかもしれません。
あと、もう一つ。そういった殺人術の類いを「他の格闘技よりも優れている」などと評価する方もいるようですが、空手、柔道、ボクシング、キックボクシング……それらの世界では、日々汗を流し、痛い思いをしながら鍛練に励んでいる方たちが大勢います。一般の方々には想像もつかないような厳しい鍛練をしている方々が……格闘技の経験のない方から見れば、殺人術の方が優れて見えるのかもしれません。自分で痛い思いをしたことのない方は特に、あれの方が凄いとか、これの方が優れているなどと無責任なことが言えるのでしょう。しかし、安易にそういった「見た目」だけでの優劣はつけてほしくはありません。その道に打ち込んでいる方々に失礼です。
もちろん、人には思ったことを口にしたり書いたりする権利はありますが、同時にその道に打ち込んでいる人もいる、不快に思う人もいる、ということだけは忘れないでください。
さらに、あえて言わせていただきますが、そういった殺人術と格闘技とを、同列に語ってほしくはありません。
最後に……一般人に人殺しのための技を指導し「我々は格闘家とは違う。いざとなったら相手を殺せる」などと豪語している方と、自分よりも圧倒的に弱い一般人に殴られ、ケガを負いながらも最後まで殴り返さなかった井岡さんや桜井さん……皆さんから見て、本当に『強い』のはどちらですか?
でも、よくよく考えてみれば、今までこの連載を読んでくれてた方はそんな考えには至らないんじゃないか、ということに気づきました。




