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格闘技、始めませんか?  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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環境が人を作ります。

 以前、私の活動報告に「赤井さんの周りでは不思議なことがよく起こりますね」というコメントが寄せられました。確かに、私の地元では妙なことがよく起きます。というわけで今回は私の地元について語らせていただきます。「格闘技、関係ねーじゃん!」と思われるかもしれませんが、それは後半になって意外な形で関わってきますので。


 私の地元は東京の下町です。あえて地名はふせますが。夏には日雇い労働者が上半身裸でうろつき、たまにワンカップ片手にちんちん出したまま歩いている人を見たりしました。

 小学生の時は商店街に行くと、よその小学校の子が半ズボンでタバコを吸いながら自転車に乗ってる場面に出くわしたりしました。怖かったですね。さらに公園に行くと、中学生がタバコ吸いながら原付に乗っていたり……まあ、治安は良くなかったです。ちなみに、私が遊んでいた商店街には某三大広域指定……の下部組織の事務所があったそうです。私はよくは知りませんが。もしかしたら、どこにでもあるのかもしれませんが。

 さらに中学生になると……二日酔いで学校に現れ、「昨日飲み過ぎちったよ……」とぼやいている奴がいたり、かと思うと学校に来るなりナイフで机削ってる奴とか……教師も教師で、当たり前のようにグーで顔面を殴ってきました。授業中に鼻血出してる奴もいましたね。

 そして私は……前にも書いたように、この当時はいじめられっ子でした。こんな環境でいじめられるのは、まあ大変でした。さらに、いじめから逃れることに成功したら、今度はややこしい人間関係ができちゃいましたね。ちなみに、この当時の同級生の一人が薬物のオーバードーズで亡くなっています。さらに、薬物依存で精神を病んでしまった者が一人、現在は刑務所で服役中の者が一人……切ない話です。

 それはともかくとして、当時の地元の有名人といえば……何かの格闘技をやってる者が多かったですね。ボクシング、空手、キックボクシングなど、打撃系の格闘技をやってる人間がほとんどでした。実際、地域における格闘技人口は、他の地域より多かったのではないかと思います(老若男女問わず)。父親と一緒に空手をやってる同級生もいましたし。私もまた、そんな環境にいたからこそ格闘技を始めたように思いますね。

 作家であり、かつ空手家としても有名だったある方は、こんなことをおっしゃってました。

「ブラジルでは平均月収が七千円くらいなんだよ(※十年以上前のコメントです)。けど、空手道場の月謝は月千円以上かかるんだ。本来なら、金持ちがやるものなんだよ、空手は。でも、普通の家庭でも子供に空手を習わせてる。なんで高い金払って子供に空手習わせるか? それはやっぱり危機感なんだよ。彼らには身を守らなければっていうね、危機感が常にあるんだ。そこからグレーシーは出てきてるんだから」

 前にも書きましたが、私にも危機感が常にありました。強くならなければ、強いところを見せなくては、またいじめられっ子に戻ってしまうという……空手はすぐに止めましたが、その後もウエイトトレーニングは続けてましたし。二十歳くらいの頃にしばらく引きこもり、中断していた時はありましたが、社会復帰すると同時に再開しました。もし私がこんな環境にいなかったら……格闘技はやっていなかったかもしれません。見るだけで満足していたことでしょう。


 さて、そんな私の地元では、未だに変な人や変な事件が多いです。ゴミ屋敷を徘徊しているお婆ちゃんに睨まれたり、道端に注射器が落ちてるのを発見したり……東京の下町を人情味溢れる、美しい場所のように描いている小説や映画などがあったりしますが、私の地元はそんな場所ではないのは確かです。





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