情報過多の時代
このエッセイにて私は、リアルの格闘における筋力の重要性について、しつこいくらいに語り続けてきました。
私が筋力の重要性に早くから気づけた理由、それは初めにフルコンタクト空手をやっていたから、ですね。フルコンタクト空手の大会は体重無差別であり、百キロを超す選手などとも当然のごとく闘うわけです。
そうなると、こちらも最低限の筋力は備えていないといけません。相手にダメージを与え、かつ相手の攻撃を受けても耐えられる肉体造り……そう考えていくと、ウエイトトレーニングが欠かせません。事実、当時は道場によってはウエイトトレーニングを指導する時間が設けられていたとも聞きます。
一方で、未だに「力は必要ない」「筋力に頼ってはいけない」という意見を、錦の御旗のごとく振りかざしている人もいます。こういう人は厄介なんですよね。昔よりも、今の時代の方が「拗らせ」度は高い気がします。
私の通うジムには来たことがないですが、よそのジムや道場では「無駄な筋肉つけたくないんで」という理由で筋トレしない人が入会してきたそうです。
その人がどんな体をしているかというと……聞いた話をそのまま言うと「アフリカの難民少年みたいだった」。そんな体でありながら、無駄な筋肉はつけたくないと言っていたとのことです。
なぜ、そんなことを言うのか聞いたところ「パンチに筋肉は不要だから」と言っていたそうです。さらに「パンチには肩甲骨が必要」と主張していたそうです。
この主張の正誤は、後に譲ります。それよりも、まともな神経の持ち主なら、格闘技ジムのインストラクター相手に、こんな「無駄な筋肉つけたくない」「パンチに筋肉は不要」なんて言えないと思うのですが……言える人は実在するそうです。
ちなみに、この人は半年もしないうちに退会したとか。やはりな、と思いましたね。こういう人は、他者の言うことを聞かないのですよね。
多くの人が勘違いしているな、と私が思うのは、武術系でよく言われる「力に頼るな」というセリフです。
これ、間違いではありません。いや、考え方そのものは正しいです。力んだパンチはスピードがない「押し込むパンチ」になりやすいです。蹴りもまた、力んでいると威力が出ません。
組み技に関しても同じです。脱力からの瞬発力を活かして投げたり、ポジションを入れ替えるため脱力状態から瞬時に力を入れる……これは、とても大事です。
しかし、間違えてもらっては困るのですが……これは、あくまでも最低限の力があってこそ、なんですよ。そもそも基本的な力がなければ、当たっても効きません。試合で興奮しアドレナリンが出ている状態なら、なおさらです。
さらに、格闘技には最低限の筋肉が必要です。打撃にしろ寝技にしろ、筋肉のない体だと「自分の攻撃で」関節を痛めてしまうことがあるのですよ。コントみたいな話ですが、これは本当です。
にもかかわらず「無駄な筋肉はつけたくない」「格闘技に力は不要」とか信じてる人は後を絶ちません。それどころか、今の方がより拗らせている気がするのですよね。
これは、今のネットの弊害が関係している気がしますね。こういう人は「結論ありき」でネットを見ています。「格闘技に筋肉は不要」という信念を持った状態でネットの情報を漁るわけですよ。
そうなると、自動的に同じようなものばかりがオススメに出てきます。結果、彼の信念はさらに強固なものになっていくわけですよ。
それがひどくなると、入会した格闘技ジムのインストラクターに「無駄な筋肉つけたくないんで」「パンチは肩甲骨が大事」などと御説を述べる大物ができあがってしまうわけです。
まあ、拗らせてしまった人には何を言っても無駄です。ほっとくしかありません。何せ、ネットで集めた知識が、信仰となってしまっているので……。
最後に、パンチと肩甲骨の関係について語ります。
正直に言います。わかりません。私は、パンチを打つ際に肩甲骨を意識したことはありません。まあ、私は打撃は得意な方ではないので、何とも言えないですね。肩甲骨を意識すれば、もっと強いパンチが打てるのかもしれないですが、私にはわかりません。
ただ、初心者はもっと基本的な部分を意識した方がいいと思うんですよね。腰の回転、体のキレ、下半身の連動、体重を拳に載せる、などなど……こうした要素を、もっと意識すべきではないかと。
それ以前に、ウエイトトレーニングやって食事を多く取り、体を大きくし筋力をつけていった方が、初心者のうちは勝ててしまえるのですよね。身も蓋もない結論ですが、これは真実です。
ただ、そういう筋力と体格に頼る闘い方は、レベルが上がってくると勝てなくなるのですが……それについての説明は、また別の機会に譲ります。




